外は晴れ、しかし静かで、その肌寒さは元日の朝のようであった。

垂水駅までバスで、そこからJR新長田駅まで行った。

1時に到着した或る場所に着くと、そこには3人が待っていた。オカリナの出張練習である。Kさん、Aさん、Koさんである。

夫々が自分が吹きたい曲の楽譜を持参していた。2曲ずつ用意してあった。3人でも、私は基本的には個人練習をしたいと思っている。それが基になるからだ。

私に出来る範囲でワンポイントを述べる。Koさんはかなり習っている人で、驚くような曲を持って来ていた。今お互いに吹いたら、私は完全に負かされていただろう。

順番に聴いていったが、お互いに聴き合っている風だった。私のワンポイントなどは、きちんとメモしている。こんな態度には、本当に敬服する。皆熱心で、オカリナが大好きなのだ。

私が準備した10曲余りの内、各自が気に入った曲を選び、それを吹いて貰う。伴奏を流し、それに合わせて演奏して貰うのだが、無伴奏で吹いてばかりいると、テンポが狂い、自己中心になる恐れがある。カラオケに合わせれば、弥が上にも正確に演奏しなければならなくなる。また、吹く者も、気持ちがいいと思う。

そんな練習をしている内に、3時間が経っていた。Koさんはお母さんの面倒も看なければならず、鈴蘭台まで帰って行った。喜んで貰えたかどうかは分からない。

後2人と話したり、私が吹いたりした。私のすぐ傍まで来て聴いている。その熱心さは驚愕に価する。

私が最後に吹いたのは、「ダニーボーイ」だった。Aさんは「ダニーボーイ」が好きで、もう一度吹いて欲しいと言った。「最後にこの曲が聴けてラッキーだわ」とも言った。

Kさんが言った言葉も、どう解釈していいか分からないが、嬉しい言葉ではあった。

「或る教室で教えている先生がいるけれど、その人の演奏は何も残らないが、先生(私の事をこう呼んでいる)の演奏は心に残って行きます」

全くそんな演奏が出来ているとは思えないが、こんな言葉を聞くとは思わなかった。私もその人を知っているが、それはそれは私が凄いと思っている人だったのである。

3人で新長田駅まで歩いた。コートの襟を立ててみたが、それは何の効果も齎さなかった。意外な程の寒風が吹き荒んだのである。瞬間息も出来ずに震えた。

Aさんは地下鉄に乗った。Kさんは上り、私は下りだが、2人はJRに乗った。

垂水駅に着くと、孫の夕食にと吉野家の肉皿を持ち帰った。バスを降りるとコープに寄り、蕎麦4つ、掻き揚げ2つ、出汁1本、それに久し振りに本格的な缶ビールを1本買った。「一番搾り」だ。

帰るとすぐにプシューッと缶を開けた。肌理細やかな泡が、ジョッキを覆った。こんなにビールを美味いと感じた事はそんなにないが、ギンギンに冷えたそれよりも、冷蔵庫に入れないで飲んだ所に、また別の美味さを発見したのだった。