「私の初恋は中学生の時でした。けれど、悲惨なものでしたね。とっても好きな人で、バレンタインのチョコを渡そうと思って持って行きましたが、渡す事が出来ず、自分で食べてしまいました。惨めですよね」

「この歳になって、もうバレンタインでもないのですが、チョコレートを渡して一番喜んでくれたのが父でした。兄はどちらも喜んではくれませんけど」

千住真理子は今日(5日)の「スィート・バレンタイン~チェンバロと織り成すハーモニー~」で、そう言った。

「去年の3月11日の事で、大変な思いをしている沢山の方がいらっしゃいます。まだまだ解決していません。それで今年はバレンタイン・コンサートで、それに相応しい曲を選んでみました」

そうして奏でられた最初の曲は「G線上のアリア」だった。

「ピアノは打楽器なんですが、チェンバロは弦楽器なんです。掻き出すようにして音が出ます。今日は、チェンバロとのコラボで演奏してみたいと思います」

ヴァイオリンは千住真理子、チェンバロは梅村祐子。

J.S.バッハ:G線上のアリア
       :主よ、人の望みの喜びよ
       :アリオーソ
J.S.バッハ/グノー:アヴェ・マリア
シューベルト:アヴェ・マリア
サン=サーンス:アヴェ・マリア
アルビノーニ:アダージョ

ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ第4番
    :ラルゴ(オンブラ・マイ・フ)
    :涙の流れるままに
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
ヴィターリ:シャコンヌ

ストラディヴァリウス「デュランティ」は歌う。サン=サーンスのアヴェ・マリアは聴き慣れていないのでよく分からなかったが、同名の3曲が聴けて、それなりに意義があった。

ヘンデルの「ヴァイオリン・ソナタ第4番」は、ヴァイオリンを習う者が小中学校時代に練習する曲だと言う。が、練習曲に留まらず、コンサートでも演奏される曲だそうだ。

第1楽章「アフェトゥオーソ」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「ラルゲット」、第4楽章「アレグロ」で構成されている。短く、長く、短く、長く。黒いドレスはシックで、上半身は中から濃いダークな朱色が覗く。チェンバロは黒い衣装だ。東日本大震災に向けた色合いである。

第2楽章を弾く千住真理子は、その楽譜を見つめる目付きや姿が、中学生の頃に戻っていた。私は、第3楽章が憂いがあって好みだ。

「涙の流れるままに」は別名「私を泣かせてください」だが、彼女はここに挙げたこの曲名の方が実感があると言った。

「アヴェ・ヴェルム・コルプス」と「シャコンヌ」は、この名の響きとは打って変わって、とてもよい曲だと思った。「アヴェ・ヴェルム・コルプス」はよく聴く曲だし、「シャコンヌ」も、ヴァイオリンの曲を聴き始めてから覚えた曲だ。こんな曲がオカリナで吹けるといいと思ったが、思っただけである。

ザ・シンフォニーホールの大ホールは、3階席やステージ背後の席まで満員だった。これだけ集客出来る実力も大したものだ。

アンコールは2曲。ヴィヴァルディの「春」より第1楽章。そして、「冬」より第2楽章だった。ストラディヴァリウスも少し草臥れたかと思ったが、最後になるとその音も適度な音量に高下して蘇った。

久し振りに1階の席となり、1階 I 列の11番だった。何? 何だか1111。気分は爽快だ。昔、と言ってももう50年近く前に読んだ似たような本がある。東大受験にパスした男の、それまでの生々しい体験が綴られていた。

書名。「受験番号5111」。