寒くもなく、比較的良い天気だった。

兎に角2時に間に合うように、ザ・シンフォニーホールに出かけた。サンクトペテルブルグ室内合奏団による「クリスマス/アヴェ・マリア」を聴きに、である。サンクトペテルブルグとは、旧レニングラード音楽院の事である。

2000年から来日していて、今度で12年連続の来日となっていた。

先ず、ずらっとプログラムを紹介しよう。


ヘンデル     合奏協奏曲集作品6より第5番ニ長調HWV323より第1楽章

ヘンデル     オンブラ・マイ・フ

モーツァルト   「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章
         (セレナーデ第13番ト長調K.525)

バッハ      G線上のアリア
         (管弦楽組曲第3番二長調BWV1068より第2曲「エア」)

パッヘルベル   パッヘルベルのカノン(「3声のカノンとジーク」二長調)

コレルリ     「クリスマス・コンチェルト」
         (合奏協奏曲集作品6より第8番ト短調「クリスマス」)

エルガー     愛の挨拶

カッチーニ    アヴェ・マリア

ヴィヴァルディ  ヴァイオリン協奏曲「四季」よりヘ短調「冬」
         (ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」より)
         第1楽章 アレグロ・ノン・モルト
         第2楽章 ラルゴ
         第3楽章 アレグロ

20分休憩

バッハ      コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
         (教会カンタータ「心と口と行いと生活をもって」BWV147より)

バッハ/グノー  アヴェ・マリア
         (前奏曲第1番に付けられた宗教的歌曲)

チャイコフスキー アンダンテ・カンタービレ
         (弦楽四重奏曲第1番二長調作品11より第2楽章)

マスネ      歌劇「タイス」より瞑想曲

マスカーニ    歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲

シューベルト   アヴェ・マリア(エレンの歌その3-作品52の6,D.839)

モーツァルト   ハレルヤ
         (モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」K.165〔158a〕)


ヴァイオリン9名。ヴィオラ3名。チェロ3名。コントラバス1名の構成で、ときたま、ハープと歌が入るようである。

マリーナ・トレグボヴィッチ(ソプラノ)は、オンブラ・マイ・フを歌った。それからその度に衣装を換えて、3大アヴェ・マリアを歌い、ハレルヤを歌った。サンクトペテルブルグ室内合奏団は素敵なストリングスだった。それにも増して、歌が素晴らしい。

それもその筈だ。レニングラード国立歌劇場のソリストだった。主なレパートリーは、プッチーニ「トスカ」のトスカ、ヴェルディ「リゴレット」、「オテロ」のデズデモーナ、シュトラウス供屬海Δ發蝓廚離蹈競螢鵐討覆匹ある。

声の美しさと迫力には圧倒された。

指揮者がいないので、ヴァイオリンのヴァディスラフ・グルツがそれを担っている。彼の奏でる四季の「冬」は、釘付けになる程の魅力を備えている。「タイスの瞑想曲」のソロは聴かせた。情感を入れ過ぎずに淡々としているが、それがまた嫌味がなく素晴らしいのだ。私は、その曲だけは、息を殺して聴いた。どんな楽器とコラボしようとも、この曲は私の中で完成させたいと思っているからだ。

CDが欲しかったが、一々欲していたら切りがないし、第一そんな余裕もない。けれど、販売されている1種類だけのCDに、もし「主よ、人の望みの喜びよ」と「タイスの瞑想曲」が入っていて、マリーナ・トログボヴィッチの歌が入っていたら、迷わずに買っていただろう。最近、CDの買い上手になって、買わなくなった。

本当に良かった、このサンクトペテルブルグ室内合奏団は。来年13年目になる来日となれば、目が離せない。

アンコールの拍手は鳴り止まないが、そんなにもったいぶる事もなく、すぐに演奏を始めた。マリーナの登場である。W.A.モーツァルトのディヴェルティメント第1番二長調より第3楽章を歌った。素敵に聴かせる。

再びのアンコールに応えて、G.プッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」より「私のいとしいお父さん」を歌った。スカーレットの薄いドレスが華やかだ。

三度のアンコールには、日本語で岡野貞一の「紅葉」を歌い出した。ぐっと胸に迫るものがあり、不覚にも涙ぐんだ。日本人歌手のような繊細さよりも、そのどこかにオペラのような迫力が発揮されていた。

これで終わりだと思ったが、スキップするようにして出て来て、山田耕筰の「赤とんぼ」を歌ったのだ。「紅葉」だけで終わっても良かったと思うが、サービス精神が嬉しかった。贅沢を言わせて貰えれば、私は「きよしこの夜」を歌って欲しかった。この曲は、昔から勝手に好きな曲なのである。

終わったのが4時20分だったから、休憩の20分を差し引いて、実質2時間の公演だった事になる。久々の感動を味わった。

もう馴染み過ぎたザ・シンフォニーホールの前の短い杜を抜けて、空気に混じった今日の音楽を脳内で振り返りながら、またオカリナを頑張ってみようと言う気になっていた。