5時47分出発。6時16分帰着。所要時間29分。

第1倦怠期に入ったか。何の驚きもなくなった。太腿の後ろと脹脛が痛い。せめて小指にして欲しいものだ。

人が目に付く時間だと思う。人恋しくなったら5時45分以降に出発。孤独に浸りたければ5時出発。これが15日間の経験に依るマニュアルだ。

第1コーナーを回った時だった。70ヤード先に女性が一人! 麦藁帽子のような白い帽子。見た事があるような。長く切り揃えられた後ろ髪。帽子の後ろから素麺のようにストレート幅に覗いている。あの、お化けだ。倦怠感が一気に吹き飛んだ。

お化けはお化けのままがいい。なまじ美しいと虜になってしまう。魅入られて、石にでもされたら大変だ。

お化けは、ウオーキングだ。ジョギングの私には接近するチャンスがある。ぐんぐん差が縮まる。擦れ違う瞬間だ。チラッと左を向いた。何と向こうもこちらを向いた。が、それはがっかりの瞬間だった。大きなマスクをしていて、さっぱり判別出来なかったのだ。

私は前になった。お化けは後ろから私を見ながら歩いているだろう。Uターンの第2コーナーに差し掛かった。横断歩道の信号が赤に変わっていた。そこから、走った道を振り返った。何とお化けがこちらに向かって走っているではないか。100ヤードが縮まる。青信号に変わると、私はまた走り出した。

車道のこちらと、4車線を隔てた向こう側とで擦れ違う。微かにこちらに投げかけた、お化けの視線が鋭く怪しい。ループを回ってまた第2コーナーへと向かう。そこを回るとお化けは私より前を歩いている。110ヤード先だ。ファーーー。

消えずに直線を歩いている。あの心臓破りの坂を上って行く。力尽きそうになる自分を励ましながら、私は走る。縺れた足を引き摺り、前方に目を凝らす。遠方に霞んでいる、白い女。

服装は灰色に青色を垂らし、限りなく薄く白に近い色にしたパンツルック。第4コーナーを消えた。力を振り絞り、走る。前にも消えた女だ。今度も期待してはいない。だが、車道で向こうとこちらで擦れ違った時、確かこちらに目を遣っていた。それ以上何も考えない偶然。

私が第4コーナーを回ると、そのお化けが60ヤード先にいた。すぐに、そこだけ2車線になっている道路を素早く横切って、私の右側の斜め先を歩いている。もう消えると思ったが、私が渡る横断歩道の信号まで辿り着くと、すぐ右に曲がった路地に消えた。もう何処にも姿の見えないその信号を渡ると、一路ゴール地点へと急いだ。

お化けは正体が掴めない。ひょっとして、枯れ尾花だったりして。