手探りで、携帯の横のボタンを押した。「3時33分です」。
まだこんな時間かと思った。それから暫く眠ったと思う。同じ動作の繰り返しだ。「4時45分です」。おっと、スロージョギングに、今日はもう少し早く出掛けようと思っていた。5時が目標だったが、5時15分出発。
曇り空で明るくはないが、この時間はもう、景色は不自由なく見る事が出来る。雨が降ってもいいと思った。そのまま濡れて帰っても、すぐに風呂に入ればいい。因みに、朝風呂に入るのはガス代が嵩むのでは? との疑問の声が聞こえそうなので申し添えておくと、実は夜のままの湯に浸かるので、ガス代は掛からない。シャワーもしないので、全くの心配は無用なのだ。
雨に濡れるのは、何も分かっていない私には不安な面もある。ひょっとして、黒い雨に濡れるのではないかと言う恐怖。
シャリンバイが綺麗に見える。1日経つと、もう昨日の辛さを忘れている。況してやお化けと会えるのではないかとの期待が膨らむのである。
外は明るいけれど、まだ街灯が消えあぐねている。5時30分では横断歩道の信号は消えていて、車道の信号は黄色の点滅だと分かった。誰にも出会わない。数台の車や心地よい爆音を残して自動2輪が通り抜け、70ヤード先の陸橋を人が歩くのが見えた。
空気を胸一杯に吸い込むと、信州の山の朝、思い切り深呼吸した事が思い出された。けれど、今日のように、空気を吸える事への喜びや感謝の気持ちは湧いては来なかった。空気が吸える。これは愛の奇跡と思えた。
ループを回った。誰もいない。私の後ろから来ていたと思われる犬を連れた男の人を、反対側の歩道に見る。鳩が2羽、シャリンバイの茂みから出て来て飛んだ。
山鳩が舗装道路の上にじっとしていたが、私が近付くと、5メートルくらいの所で飛び立った。復路に入るとカラスが鳴いた。ガーガーガー。上り坂でも、余り辛いとは思わなかった。ガーガーガー。今度は少し遠くに聞こえた。こんなに自然に見たり聞いたり出来るのは体調がいい所為もあるだろうが、何しろ超スローを心掛けていたからだ。
往路で以前コスモスのような山吹色の花を一輪見付け、ピンクの花と一緒に携帯に収めた事があった。今日は初っ端から圧倒された。その山吹色の花が一斉に花開いていて、50は下らなかったのだった。
もう第4コーナーも終わりの頃の、歩道の信号に差し掛かった。路地から出て来た女の人が軽く会釈をしたように感じた。私も頭を下げた。人から先に挨拶されると、抵抗もなく返せるが、反対だと中々である。もう一度ちらっと顔を見た。70歳位の女性だったが、細身でスタイルが良かった。昔の様子を一瞬想像して、横断歩道を走って渡った。
家の近くに戻ると、そこでシャリンバイの植え込みが途切れる。「綺麗だね。可愛いね」そう話し掛けた。今日は極限状態ではないな、と思った。
これで34分。正真正銘のタイ記録である。
あの2人の女性には、遂に出会わなかった。お化けだなんて失礼な話だが、そう感じられる様子の2人だったから。最近のお化けは、夜や明け方には出ないで日が昇る頃に出没するのだと思った。営業方針が変わったのだろうか。
三木清の「人生論ノート」ではないが、外に出て特にスロージョギングをすると、何かがあり、何かが感じられ、何かを考える。かれのノートの項目のように、テーマ毎の私の「人生紛いノート」が出来そうだ。超スロージョギング。決して無駄ではない。
まだこんな時間かと思った。それから暫く眠ったと思う。同じ動作の繰り返しだ。「4時45分です」。おっと、スロージョギングに、今日はもう少し早く出掛けようと思っていた。5時が目標だったが、5時15分出発。
曇り空で明るくはないが、この時間はもう、景色は不自由なく見る事が出来る。雨が降ってもいいと思った。そのまま濡れて帰っても、すぐに風呂に入ればいい。因みに、朝風呂に入るのはガス代が嵩むのでは? との疑問の声が聞こえそうなので申し添えておくと、実は夜のままの湯に浸かるので、ガス代は掛からない。シャワーもしないので、全くの心配は無用なのだ。
雨に濡れるのは、何も分かっていない私には不安な面もある。ひょっとして、黒い雨に濡れるのではないかと言う恐怖。
シャリンバイが綺麗に見える。1日経つと、もう昨日の辛さを忘れている。況してやお化けと会えるのではないかとの期待が膨らむのである。
外は明るいけれど、まだ街灯が消えあぐねている。5時30分では横断歩道の信号は消えていて、車道の信号は黄色の点滅だと分かった。誰にも出会わない。数台の車や心地よい爆音を残して自動2輪が通り抜け、70ヤード先の陸橋を人が歩くのが見えた。
空気を胸一杯に吸い込むと、信州の山の朝、思い切り深呼吸した事が思い出された。けれど、今日のように、空気を吸える事への喜びや感謝の気持ちは湧いては来なかった。空気が吸える。これは愛の奇跡と思えた。
ループを回った。誰もいない。私の後ろから来ていたと思われる犬を連れた男の人を、反対側の歩道に見る。鳩が2羽、シャリンバイの茂みから出て来て飛んだ。
山鳩が舗装道路の上にじっとしていたが、私が近付くと、5メートルくらいの所で飛び立った。復路に入るとカラスが鳴いた。ガーガーガー。上り坂でも、余り辛いとは思わなかった。ガーガーガー。今度は少し遠くに聞こえた。こんなに自然に見たり聞いたり出来るのは体調がいい所為もあるだろうが、何しろ超スローを心掛けていたからだ。
往路で以前コスモスのような山吹色の花を一輪見付け、ピンクの花と一緒に携帯に収めた事があった。今日は初っ端から圧倒された。その山吹色の花が一斉に花開いていて、50は下らなかったのだった。
もう第4コーナーも終わりの頃の、歩道の信号に差し掛かった。路地から出て来た女の人が軽く会釈をしたように感じた。私も頭を下げた。人から先に挨拶されると、抵抗もなく返せるが、反対だと中々である。もう一度ちらっと顔を見た。70歳位の女性だったが、細身でスタイルが良かった。昔の様子を一瞬想像して、横断歩道を走って渡った。
家の近くに戻ると、そこでシャリンバイの植え込みが途切れる。「綺麗だね。可愛いね」そう話し掛けた。今日は極限状態ではないな、と思った。
これで34分。正真正銘のタイ記録である。
あの2人の女性には、遂に出会わなかった。お化けだなんて失礼な話だが、そう感じられる様子の2人だったから。最近のお化けは、夜や明け方には出ないで日が昇る頃に出没するのだと思った。営業方針が変わったのだろうか。
三木清の「人生論ノート」ではないが、外に出て特にスロージョギングをすると、何かがあり、何かが感じられ、何かを考える。かれのノートの項目のように、テーマ毎の私の「人生紛いノート」が出来そうだ。超スロージョギング。決して無駄ではない。