Ren神戸10周年記念コンサート ー10年分の感謝と愛を音にかえてー
2011年5月7日(土)神戸文化ホール・中ホール 開場16:00 開演17:00


10年近く前に聴いたが、それこそ努力の集積が実を結んだ、和太鼓の演奏だった。ヤンマーこと山本孝一率いるアマチュアの集団である。

メンバーは若干替わっているが、今回は11人。男子4人、女子7人で演じる。松村組の松村公彦がジェネラルアドバイザーとして参画している。

このメンバーの内の一人の女性Mさんは、よく知っている。また、メンバーも大半は話をした事がある。全員仕事を持っていて、その合間に練習する、根っからの太鼓好きである。それも、プロ並みの実力を身に付けている。

「みんな仕事を持った、アマチュアの太鼓集団です」

と、ヤンマーはスポットライトを浴びながら、笑顔で話しかける。汗が吹き出、顔は紅潮している。

早く行かないと座れなくなるかも、と連絡を受けていたので、1時間前に着いた。まあまあの場所を確保したが、始まってみると1階700人、2階200人と、900人で満員になっていた。

幕が開くと、私のよく知っているMさんは、満面笑みを湛えていた。前から思うのだけれど、この集団はとても仲がいい。そして、笑顔が美しい。リーダー山本さんの人柄と人徳以外の何ものでもないと、誰しも思ったに違いない。

全13曲の内、1部7番までの5、6番は、ゲストの「REN」が友情出演。2部13番までの11、12番は「和太鼓ユニット光」が出演した。プログラムの中にゲスト演奏を入れるなど、リーダーの思いと繋がりが感じられる。兎に角初々しくて、笑顔が抜群なのだ。プロなら、ここまで破顔一笑と言う事はないだろうと思う。

最後まで、呼吸の合った演奏だった。太鼓は叩いていればいいと言うものではなく、一打でも違ってはいけない太鼓の楽譜があるのだ。10年の歩みには、大きな成長があった。

第1部

1.銚子囃子~初切・早打ち~ (千葉県銚子市)

2.響陽

3.ひかりたまり

4.武(もののふ)

5.BB 演奏「REN」

6.旋風 演奏「REN」と「REN神戸」

7.水口囃子~大廻・屋台 (滋賀県水口町)


第2部

8.祝い太鼓

9.海上節 沖縄県・八重山古典民謡

10.海のお囃子

11.DAHA 演奏「和太鼓ユニット光」

12.烈 演奏「和太鼓ユニット 光」と「REN神戸」

13.秩父屋台囃子 (埼玉県秩父市)

アンコールは「こまい」と言っていたが、「鼓舞」だろうか。


「『和太鼓ユニット光』の羽田康次君とは友達ですが、私たち『REN神戸』はアマチュアの道を選び、羽田康次君はプロの道を選びました」

とヤンマーは言った。ここで、プロとアマチュアに就いて考えさせられる事になる。

羽田康次は夫婦でのユニットで、はだひかると2人の演奏だ。どの演奏もまた聴きたいと思えるもので素晴らしかったが、このユニットの羽田康次が入って来ると、さっと全体が閉まる。これは、正にプロの資質と言っていい。

ヤンマーが彼を紹介して2人がスポットを浴びている時、話す事にも洗練さが見られた。プロの立ち居振る舞いだった。ヤンマーの吹き出る汗を見て、

「脂汗・・。肉汁が・・」

これで会場が沸くのだから。ヤンマーも返す。

「神戸ブランドです。彼のMCが上手くて、僕は横でハイハイと頷くだけ」

「和太鼓ユニット光」。それは、彼で持っているとも思える程、MCが上手い。演奏には力がある。私は、「REN神戸」は別にして、彼らの11番「DAHA」に引き込まれた。

13番は、最後に置いただけ、自信の、このコンサートに相応しいものだった。

兎も角、初デビューのような初々しさを感じたし、大きな自信も感じた。「REN神戸」は、これからも更に飛躍を続ける事だろう。ヤンマーの包容力に支えられて、また新しい1歩を確実に踏み出す事だろう。他に仕事を持つ者が集まって、これだけの事を成し得るのは賞賛に値する。

仕事が他にあるからアマチュアだ、と言う理屈は通らぬでもない。けれど、アマチュアでも、プロの域に達する者もいる事だけは確かで、その逆もまた真である。囲碁の世界では、アマチュアは7段が最高位とされている。しかし、菊池さんなど、プロ高段者同然の実力者もいるのだ。

ヤンマーの素晴らしい所は、体はでかいが、隅々に気配りが行き届く所である。8番目には、「REN神戸」が開いている教室の全員を参加させた。「RENキッズ」「RENジュニア」「RECO(レコ)」の36名を。

2008年に3尺6寸の大締平太鼓を購入しているが、自分だけ目立つのではなく、何人かに別の演目で叩かせている。女性の音も、迫力があった。これは、配慮とかではないかも知れないが、彼は何度かは前面に出ないで、後ろの方で太鼓を叩いていた。彼の滲み出るような人柄から、例えそうでなくても、この「REN神戸」の素晴らしさを思ってしまう。

いいものを、雰囲気と共に見聞きした、2時間ちょっとの時間だった。全員の顔が輝いていたのが特に印象深かった。きっと、打ち上げでは抱き合っての大盛り上がりの事だろう。

私も、自分の事のように、心から祝福していた。この日は、「REN神戸」のメンバーに取って、生涯忘れられない大事件として心に刻まれた事であろう。次の日も、その次の日も、この歓喜の余韻に浸りっ放しだろうと思う。いや、1ヶ月先も、何年先であっても、この喜びと事実は続くだろう。人には、そんな事を求め、また、そんな喜びに浸れる特権が与えられている。きっと、人として生まれ、それ以上のものはないと思える。至上の喜びである。

「忍耐は苦い。しかし、その実は甘い」。武者小路実篤