凄い。素晴らしい。迫力がある。しかも、繊細さが感じられる。

こんなピアノ、沢山のピアニストの演奏を聴いて比較している訳ではないが、今まで、私は聴いた事がない。

ファンになった、なんてものではない。将来もっと凄いピアノを聴く機会があるかも知れないが、私はもう選ぶ積もりはない。この完璧さ。思わずCDを1枚買ってしまった。後でサイン会があるとの事だったが、私はサインなどいらなかった。

2011年1月30日、2時開演。兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールは、この寒さにも拘わらず、満員だった。

知らなかったピアニスト。及川浩治「ショパンの旅2010」ピアノ・リサイタル。

私は3階の席だったが、それでもその迫力は十分に伝わって来た。それは、感動を超えていた。凄いピアノを聴いた。それも、2011年の1月が終わろうとしている時に。2011年は後11ヶ月あるが、何かで、これ以上の感動があるだろうかと思うと、多岐に渡り、楽しみでもある。

私が書くより、このピアニストの事はパンフにあるのを転記するのがベターだと思う。


及川浩治

4才の時からピアノを始める。84年ヴィオッティ・ヴァルセイジア国際音楽コンクールで第1位受賞。85年、国立音楽大学に入学。翌86年にブルガリア国立ソフィア音楽院に留学。87年にアレクシス・ワイセンベルクの公開セミナーに参加し、ワイセンベルク本人の意向により特に設けられた最優秀特別賞を受賞、練習用のグランドピアノを授与された。90年にマルサラ国際音楽コンクールにおいて第1位受賞。また同年、第12回ショパン国際ピアノ・コンクールにおいて最優秀演奏賞を受賞。92年、日本国際音楽コンクールにおいて第2位を受賞している。95年にサントリーホールにてデビュー・リサイタル。

95年にはラムルー管弦楽団定期演奏会(佐渡裕指揮、サル・プレイエル)でパリ・デビューを飾る。97年よりミュージック・シェアリング(旧みどり教育財団)による「レクチャー・コンサート」でヴァイオリニスト五嶋みどりと全国各地の小学校、養護学校などで演奏。98年、札幌PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)に出演。99年のショパン没後150年には、「ショパンの旅」というタイトルのコンサート・ツアーを行い3万5千人をも動員するショパン・イヤー最大規模のイベントとなった。02年6月ワイマール州立歌劇場管弦楽団の日本ツアーソリスト、03年7月にはPMFオーケストラのソリストとして、04年には佐渡裕ヤング・ピープルズ・コンサートのゲストとして、全国各地で演奏。また05年8月にサントリーホールで行なわれた「デビュー10周年記念コンサート」は満席となり、大成功を収める。08年、室内楽(ピアノトリオ)でのサントリーホール公演を完売させるなど、人気、実力共に日本を代表するピアニストである。08年から取り組む東京・大阪での同時プロジェクト【及川浩治10大協奏曲シリーズ】は、ついに本年5月にグランド・フィナーレを迎える。

ダイナミックな中に繊細さをも併せ持ち、内面にダイレクトに訴えかける及川の演奏は多くの絶賛の声とともに幅広い層の共感を得ている。児玉邦夫・幸子、吉本美南子、コンスタンティン・ガネフ、ジュリア・ガネヴァ、ジャン=マルク・ルイサダの各氏に師事。

CDは、ショパン、ベートーヴェン、リスト、ラフマニノフなどの作品集が発売されており、いずれも高い評価を受けている。2010年にリリースされた最新アルバム『ショパン:バラード』は「レコード芸術」誌にて特選盤に選出されている。



以下、今日演奏された曲目の紹介を音楽評論家の横堀朱美さんによって書かれているが、長いのでこれは除外してプログラムを載せる事にしよう。

第1部

英雄ポロネーズ

ノクターン第19番 ホ短調op.72-1

マズルカ第5番 変ロ長調op.7-1

華麗なる大円舞曲

ポロネーズ第2番 変ホ長調op.26-2

ノクターン第7番 嬰ハ短調 op.27-1

幻想即興曲

バラード第1番 ト短調op.23


第2部

雨だれ

マズルカ第25番 ロ長調op.33-4

華麗なるワルツ op.34-3

グランドワルツ op.42

前奏曲第25番 嬰ハ短調op.45

バラード第3番 変イ長調op.47

子守歌 変ニ長調op.57

バラード第4番 ヘ短調 op.52


アンコールの拍手で出て来るタイミングが絶妙で、もったいぶったように時間を稼いだりしなかった。すぐに走るように現れた。3曲もやってくれて大満足だった。最後の3曲目が圧巻だった。最後の最後に、こんな凄い曲を残しておくなんて。

3曲とも、実に素晴らしかった。


アンコール曲

ショパン ノクターン20番遺作

ラフマニノフ 鐘

リスト メフィスト・ワルツ第8番


ピアニストは同じ曲を弾いても、それぞれに表現は違う。だから甲乙は一概に決め付ける訳には行かない。が、当分及川浩治の演奏を注目するだろう。東で演奏があると言えば行き、西でリサイタルがあると聞けば訪ね・・、てな訳はないが、行ける範囲で行われる事があれば、恐らく出かける事になるだろう。

本当に寒い1日だったが、心の中は燃え盛っていた。ゆっくり、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「悲愴」や「ワルトシュタイン」や「熱情」の入ったCDを、惜しみながらゆっくり聴く楽しみが出来た。

豪快で、繊細で、正確で、拘りや蟠りが雲散霧消する様が、ここにあった。

最後にリストを演奏し、終極で両手で鍵盤をガーンと叩いたと同時に、思い切り立ち上がった。興奮の拍手が続いた。その勢いで、椅子が斜めになったのがはっきり見えた。