時間などが心配で、9時過ぎには車に乗った。三田市は神戸の北に位置している。それでも40キロそこそこの距離だ。JR三田駅まではナビの推奨で行くと、高速を通り500円払い、40キロ丁度で1時間が表示される。

一般優先は500円かからない上に41キロだ。ネックは1時間30分かかる事である。1キロ違って、時間が30分も違うとは。

高速道路のスピード制限が60キロなので、極力60キロを守って左車線を走った。普段はこんなにきちんと守る事はないが、早く着き過ぎても困るからだ。制限速度を守っている車は精々2台位で、後は私の後からどんどん抜いて行き、再び私の前にすいすいと入る。

追い越し車線の車は、80キロから100キロは出して走っている。恐ろしい位だが、普段の私を見ているようだった。これで捕まれば、20キロから40キロオーバーで、25キロ以上オーバーしていたら即免停だ。

制限速度80キロの道路だと100キロ位で走るのは当たり前で、気取って粋がった車が、時々140キロ位は出していると思われる。どうして捕まらないのかが不思議な位だが、良くない意味に於いて、百戦錬磨か? 速度制限を守っていると、人間模様がよく見えた。

三田駅周辺に着くと、10時位だった。時間潰しに、駅前で参議院予算委員会集中審議の国会中継を観た。45分に来て貰ったらいいとの事だったが、30分にはデイサービスには着こうと思っていた。

25分を過ぎた辺りで、デイサービスの施設に向かった。また、施設の前で少し時間を持て余していたが、私の駐車スペースが取ってあった。

お年寄りと言っても元気な方々で、男性は2人、女性が20人位だっただろうか。後は、職員である。

「今日は、オカリナ奏者の方が来て下さっています」

そんな事葉が耳に入った。非常にくすぐったい。演奏するには違いないが、何だか面映いものがある。

テーブルが退けられ、利用者さん達は2列に並んだ。準備をして、早速始まった。

「オカリナ奏者だなんて紹介されましたが、アマチュアのオカリナ吹きです」

と訂正した。

「皆さんの知っている曲を先ず聴いて下さい」

そう言って吹いたのが、「汽車」だった。元気のいい曲なので、最初から、意外だとの思いから拍手。続いて「アニーローリー」。

「スコットランド一の美人だった人です」

「人の名前だったんか」

などと言いながら、聴いてくれた。そして、「浜辺の歌」「星の世界」へと。

「この『星の世界』は『星の界(よ)』とも言われ、讃美歌にもあるんですよ」

と言った。皆しっかりこちらを向いて聴いている。

「皆さんと一緒に歌う事はしませんが、これから知っている歌はどんどん大きな声を出して歌って下さい。知っている人も、ちょっと忘れている人も、歌いたくない人もいると思うので、自由にして下さい」

そうして演奏したのが、「ゆりかごの歌」「竹田の子守唄」「朧月夜」「夕焼けこやけ」「浜千鳥」。どの曲名を言っても、知っている曲なのか軽い驚きの声が上がり、楽しそうに歌っている。

オカリナそのものにも興味があるようだが、どんな曲が演奏されるかにも興味があるようだった。

「白鳥」「青葉の笛」「通りゃんせ」「七つの子」と続けながら壁に掛かった時計を見ると、11時45分。1時間が経った。

「喋り過ぎて時間が過ぎましたが、後1曲、いいですか」

OKが出たので、予定していた残りの3曲の中で1曲選んで貰った。「かあさんの歌」「ふるさと」「崖の上のポニョ」の内で。すぐに声が上がった。「ポニュがいい」と。

1人の次期経営者である若い男性とピンクの制服を着た女性職員が4人、前に出て来てオカリナに合わせて踊った。手拍子が大きくなった。デイサービスの利用者さん達と言うのは、とても元気なんだなと思った。

今日誕生日を迎えた人がいる。「Happy Birthday to You」をオカリナで吹き、皆で祝福した。私は、逆にこのおばあちゃんの手から、今日のおみやげを貰った。

「アンコール、アンコール、アンコール」

の思わぬ声が上がった。えっ、と思ったが、

「じゃあ『かあさんの歌』と『ふるさと』のどちらがいいですか」

と聞くと、どっちもやって欲しいと言った。時間が過ぎて、昼食が遅くなってしまうが、それでもいいと言う。2曲を演奏した。全部吹き終わると、温かな目がそこにあった。

今回考えたのは、決して手を抜かない事。体全身で演奏する事。気持ちを十分に込める事。もう一つ、変化を考える事だった。気持ち良く、平常心で、サービス精神まで込めて演奏出来た事は収穫だった。

自画自賛や手前味噌になっては困るブログではあるが、淡々と面白味もなく書いている。

終わってから聞く話だが、事務室で仕事をしていた職員が、こちらまで出て来て聴いていたと言うのだ。こんな話が一番嬉しい。この施設は1年に1度呼ばれて今回(26日)で3度目だが、もう今年のクリスマス辺りに来て欲しいと言われている。来年の1月も、などと言われたのは初めての事で、こんなことがオカリナ吹きには嬉しいものである。

反応は大事で、私が動揺する事無く自由に吹けた事が、このような熱い願いを聞く事になったのだと信じている。どこで演奏する時もそうだが、不安や硬さを抱えて演奏するとすぐに看破されてしまう。自分の手の内に聴衆を引き入れる事は、とても大事なことだと思う。がちがちの緊張は十分な力が出せないが、程よい緊張と集中は、極めて良い結果に結び付く。

17、20、21、26日と演奏したが、この4日は気持ちの中で動揺する事はなかった。こんな精神状態は、これまた初めての事なのだ。今後、どのような坩堝に陥れられるかは分らないが、どんな場合であっても、最善を尽くす事の大切さを学んだ。その為に、日頃は最善の練習を積まなければならない。

珍しくデイサービスでのおばあちゃんの誕生日と出くわしたが、末娘の女児の誕生日も今日で、満1歳となった。お陰で、誕生ケーキを鱈腹食べた。