2010オカリナフェスティバルin神戸

8月27日 リハーサル
8月28日 第1日目
8月29日 第2日目


リハーサルは午後1時からだった。暑い日である。文化ホールの冷房だけが頼りだ。私は、5時過ぎまで、入り浸りで聴いた。時間が来ると、容赦なくストップがかかる。当たり前の事だけれど。

新潟からいつも参加している「越後の吹狂」ことNさんは、キャリングバッグを引いて来て、仕事の関係で殆ど練習らしいものはしていないと言っていた。彼は2日目の演奏だが、それが終わるとその日の夜行で帰り、家には寄らないで会社に行くと言う。凄い人がいるものだ。「吹狂」なんて、伊達に付けた名前でもなさそうだ。

オカリナも半端ではなく、3連のオカリナのバス管だって自分で作る。アルトC管に至っては、4連目を自分でくっ付けたりしている。バッグには、そんなオカリナ達がぎっしり息を吐いていた。

リハーサルは、順番待ちの人やグループがいる位で、余り人はいない。けれど、そんな時は却って緊張する。和美音(なごみね)さんの二人とも話した。奈良でも互いに演奏しているが、どちらも出番の関係で聴いていない。私のリハーサルを聴くと言う。真ん中後方に2人の姿がもろに目に入った。

和美音さんの音はビブラートも美しくかかり、よく響く。後で私の曲の事も訊ねて下さり、いい曲だと言って貰った。甥のお陰である。

リハーサルを殆ど最後まで見る者も、そんなにいないだろう。新潟のNさんは最後まで聴いていたと思うけれど。第1日目に演奏する者のみが、実際の中ホールでリハーサルを行えるので、1日目に当たった年は必ず来る事にしている。


1日目28日は、愈々本番の日だ。フェスティバルが成功するように祈る気持ちだった。

11時からの開演だが、30分前には着いた。3業者がオカリナや楽譜やCDの販売をしていた。私は真ん中の「オオサワオカリナ」に釘付けになった。真ん中の業者と言うのは、よく知っている東京のアケタの深瀬さんだ。そこにヤマハ楽器の女性がくっ付いていた。

ここに大沢さんがいて、話を聞いて貰った。するとそこで「ソロ」の方で「赤とんぼ」を吹き始めた。うん、こんな具合に聞こえるのだな、と思った。直々に吹いて見せてくれたのだ。序でに「ノーマル」でも吹いて貰った。柔らかなと言うか優しい「赤とんぼ」だった。心が揺れる。私としては「イカロス」と同じ感じの音なので、「ノーマル」は幾ら音が安定していると言っても、それを買うのは勿体無いと感じた。

演奏が始まると、丸印を付けながら聴いていた。けれど、そんな場合ではないだろう。この日は50組の45番目が、私の出番となっているのだ。思う事がある。それは確実にレベルが上がっていると言う事だ。楽しく聴く事が出来るようになった。

この10周年の記念として、先ず違った楽器のサブゲスト(オカリナのゲストに対して)を両日共に入れている。第1日目は1時45分から西本淳さんのサックスだ。優しい、繊細な音を出す。「アヴェ マリア」や「アディオス ノニーノ」などを演奏した。ピアノ伴奏は夏目有香さんだ。私はこんな企画に満足だった。

最初は半分もいなかった客も、私の出番が近づく頃は一杯になっていた。籤運がよかったと思った。

舞台の袖で、またしても緊張する。高い天井を仰いだり、深呼吸をしたりしたが余り効果はない。けれど、ステージに出てしまえば、なんとか開き直れるとそれだけが最後の望みだった。私のすぐ後の「ベビーズブレス」さんが、ブログにいいコメントをくれたりしているが、こんな事を言ってくれたら昇天しそうだ。何の何の、私は聴けなかったが、「ベビーズブレス」さんの演奏は素晴らしかったと、何人かの人から聞いた。

私は終わってからまたすぐ舞台袖に来なければならなかった。実行委員の4人はピンマイクを付けて貰った。私だけは、シャツのボタンを全部外して付けなければならない。舞台裏と言うのはこんなものかと思った。

地震から15年が経つ。「幸せ運べるように」を会場の皆で演奏した。植田さんが指揮をした。

愈々佐藤一美さんのコンサートが始まった。小針寛史さんのパーカッション、前田圭代さんのキーボード。佐藤さんは花の在る美人だ。見て楽しい、聴いて嬉しい演奏だった。金色のステージ衣装が決まっていた。ティアラが女王の風格を表していた。

剣の舞、ふるさと~月の沙漠、この大地に抱かれて、永遠の舞、チゴイネルワイゼン、仮面舞踏会より「ワルツ」、秋桜、荒城の月、ノクターン。字数制限のあるブロブが書けなくなるのでここまでにするが、聴衆は満足そうだった。そう言い切ってもいい位の満足感があった。良かったと、実行委員としては胸を撫で下ろした事だった。

この後懇親会が7時からある。50人ばかりでそんなに多くはないが、ゲストと直に話せるチャンスでもある。大沢さんが入って来た。間もなく佐藤さんも。

飲んで食べて話して騒いで。私は何としてでもツーショットを撮らなければならない。大沢さん、佐藤さん、山城さんと携帯に納まった。色んな人と親しく話した。有意義だった事は言うまでもない。

9時過ぎに、会場の都合でお開きとなる。その前にいつも私は挨拶をさせられる。挨拶なんて、ほんとに苦手なのに。「今ここにいる人は、必ず来年も懇親会に出て下さいね」と言った。

帰る為に外に出た。そこには大沢さんと植田さんと深瀬さん、そして台湾からの何人かがいた。皆ですぐそこの地下鉄大倉山駅に行った。私だけ先に来た西行きに乗った。5人位いただろうか。大沢さん始め、横に並んだ皆から、手を振って貰った。もう私の演奏も終わっているので、こんなに飲めて、気分も良かった。


2日目29日は、とても気分が楽だった。昨日と同じような時間に家を出た。暑い。

開演までに20分ばかりある。また「オオサワオカリナ」の前を離れられなかった。人の目も構わず吹き捲った。どちらのタイプもいい。2つ買えばいいと思われるだろうが、今の生活状態から1つでも無理だから、こんなに悩むのだ。でも、オカリナ命の私に取っては、1日食べて1日抜かす繰り返しをしてでも、お金を貯めて買いたい代物なのだ。

これがなければどうにもならない、と言うのではない。息が強い私に、思う存分吹けると思える妄想があるからだ。大沢さんと同じに吹ける訳はない。けれど、私にこのオカリナで、どんな表現が出来るのだろう。そう思うと、夢が膨らむからである。

3連中心の大沢さんのような人がいてもいい。普通のオカリナしか使わないと言う佐藤さんや宗次郎さんのような人がいてもいい。3連がないと凄い事は出来ないと思う迷走の蟻地獄へ落ちてはならない。1連でも、佐藤さんは素晴らしい演奏をして見せてくれたではないか。

1日目と同じように幕が開き、オカリナ三昧の境地に入ろうとしていた。

サブゲストはマリンバの三宅恵美さんだ。ピアノは佐藤裕美子さん。素晴らしい。私は快哉を叫んだ。「熊蜂の飛行」「ティコティコ」「荒城の月」「リベルタンゴ」「愛のよろこび」「エル・クンバンチェロ」「アメージング・グレース」「剣の舞」。全部オカリナでやりたい曲ではないか。

それが始まる1時間位前に、もっこすのチャーシューメンを食べようとホールの扉を開けた。「オオサワオカリナ」の所に寄った。演奏をしているので、そんなに試奏は出来ない。岐阜のNaさんと会った。そこに京都のTさんが来て、自分が持っているから外で吹いてみたらいいと言った。彼は息が強いので「ソロタイプ」を持っていたが、漆仕上ではなくナチュラル仕上だった。

彼も吹いたが、とても超絶技巧が上手かった。下がって聴いてもみたが、随分遠くまで鮮明に聞こえる。新潟のNさんが、後で言っていた。3連を吹かせたら彼が一番上手いだろう、と。

Naさんとラーメンを食べていて、静岡のOさんの演奏を聞き逃してしまった。これは一大事だった。懇親会であれだけ聴くと言っていたのに。顔を合わせても、何の感想も言えなかった。申し訳なくて仕方がない。

また、4人がステージに上がって、今度は「ふるさと」を皆でやる。またピンマイクだ。すると、私に最後の挨拶をしろと言う。急に言うんだから、こんなの困る。反発したけど、駄目だった。ああ、そんな舞台裏など、観客は知る由もない。

今度は4人の実行委員に加わって植田さんもオカリナを吹いた。指揮者は大沢さんだ。それにピアノ伴奏は大沢さん専属の白神由美子さん。これも私にはサプライズだった。

「・・皆さんに支えられて10周年を終える事が出来ました。チケットは完売です。・・」

凄い拍手。すぐ言葉(完売)に反応してくれるのが素晴らしいなと思った。後、大切なもう一つのイベントが残っている。

その興奮の坩堝に陥れたのは、「大沢聡・弦楽四重奏団」だった。先ず、台湾から来ていた6人が、コザックの服のような衣装で演奏した。後から8人が加わり、14人での演奏も突然で良かった。テレサ・テンは台湾では美空ひばりのような地位にあるらしい。「時の流れに身をまかせ」(我只在乎你)などを演奏した。大沢さんのパフォーマンスも年々向上している。

さて、いよいよ皆が待ちかねていた4人が登場した。大沢聡(ocarina)、関口梨紗(violin)、飯田香(viola)、永瀬惟(cello)。白神由美子(piano)は後からの出場だった。

何度もアンコールがあった事。拍手の音が並みではなかった事。手を上に挙げて拍手をしている人が目立った事。そんな事で、大沢さんのこの演奏が素晴らしく、凄いものだったことを感じて頂けたら嬉しい。もうスペースの関係上これ以上書けないと思うので、曲目を書いて置く。アンコールは忘れたので割愛する。

「ドナウ河のさざなみ」「白鳥の湖より」「オペラ『カルメン』より」「オペラ『魔笛』より『夜の女王のアリア』」「浜辺の歌」「ボレロ」「チャールダーシュ」。

帰り際に耳に入って来た人達の言葉が、この10周年記念のオカリナフェスティバルを素晴らしかったものに位置付けたと思った。

「来てよかったわ。聴けてよかった」

勿論、ゲストの演奏である。日本の大沢は、確実に世界の大沢になろうとしている。普通の事をしているようでは、とてもプロになどなれる訳もない。しかし、プロになれなくても、普通の事から脱却しなければならないと思う。プロとアマチュアの差が、余りなさそうでこれだけ開いているものも、そんなに多くはないと思える。魅せられれば、認めずにはいられない。

プロの凄さ、凄まじさを知った「2010オカリナフェスティバルin神戸」だった。それでも飽くなき挑戦は続く。

今し方(0時27分とある)、佐藤一美事務所から、私の携帯にお礼のメールが入っていた。

権威ある神戸オカリナフェスタ出演と言う事で緊張が高まったと。でも、準備だけは万全を期そうと言う事でやって来た。マイミクさんに直接会えたり、多くの素晴らしい方に会えたりと、とても有意義な楽しい時間となった、と言うような事が書いてあった。

私も、このフェスティバルが、多くの皆さんに喜んで貰えた事が、何よりも嬉しい。そして、大成功だった事を実感している。私が言うのも変かも知れないが、関わりのあった全ての方々に大きな感謝を捧げたい。