温泉卵と聞くと、ホテルの朝食で出される綺麗な卵を思い浮かべる。そんな卵が数分で出来るとは、何と幸せな事だろう。

先日、その方法を教えて貰った。

「ある人に教えたら爆発したと言っていたが、それは水が少なくて卵の上を覆っていなかったからよ」

と、教えてくれたOさんは何度も強調していた。

爆発と言う言葉と、その事故が起きたと言った話から、作るのを少々躊躇していた。だが3日前、ご飯茶碗の水を8分目位入れ、その上から生卵を割って入れた。そしてレンジに入れ、3分待つ事にした。途中で覗いたら、白味が透明でなくなっているのが微かに分かった。そこで止めたら良かったが、何だか時間が足りないような気がして、もう1分程タイマーのダイヤルを回した。

と、程なくポン! と大きな音がして、つまりその爆発とやらを起こしたようだった。すぐにレンジの蓋を開けてみると、凄まじい程に卵が散乱していた。掃除をするのも手間がかかった。もうやるまいと思った。飛び散った卵は茹で卵のように固まっていた。

しかし気になる。時間をもう少し少なくすれば、爆発しない筈だ。つまり3分以内にすれば、経験上大丈夫と言う事になる。

諦めかねていた。末の娘が来ていて、旦那もそのやり方で温泉卵を作って食べる、とさらりと言った。

「Hは、レンジに入れる前に爆発したらいけないので、黄身に穴を開けているよ」

と言った。なる程、と私は頷いた。でも、その日はトライしなかった。

昨日のOさんからの私へのブログに、1分40秒と書いてあった。


そして今日。一人で食べるお昼の食事に、いかなごとキムチでも良かったのだが、ふっと温泉卵が鮮明に頭を過ぎったのだ。

ポイントは、黄身に穴を開ける事。時間は2分位にする事の2つだ。もう完璧だった。ご飯茶碗に水をひたひたと入れ、生卵をその上で割った。箸で4、5箇所に軽く穴を開けた。今度は大丈夫と言う自信に、頬が緩んで来る。

レンジに入れた。2分待った。もうちょっと、と思って30秒時間を追加した。爆発は起こらなかった。徐に出すと、お湯を全部捨てた。見栄えはそんなに良くないが、少し固めの温泉卵? が出来上がっていた。

いかなごとキムチを用意すると、温泉卵? に塩を振った。そして箸でつついた瞬間、爆発が起こった。えっ? 何故? テーブルの上には卵の破片が散らばり、小規模だがその爆発の凄さを物語っていた。

私の頭からは、穴を開ける意味が消滅して行った。残るは矢張り時間。水の量もあろうが、1分40秒を守る事に結論が辿り着いた。

気を取り直して、その器に残った少量の固まりを口にすると、再び挑戦を始めた。

1分40秒は何となく少ないような気がする。タイマーを2分に設定した。2分がこんなに長いとは思わなかった。予期せぬ事故の不安を抱えながら、離れた所からじっと待った。

「チーン」

恐る恐るレンジの蓋を開け、器を取り出してお湯を捨て、卵だけにした。もう爆発は起こらないだろう。塩を振って箸でつついた。あの温泉卵のような美しさはないし、やや固まっている感じはあった。反省点としては、2分が問題だった。1分40秒でいいのだ。今日はもうこれ以上作る気はないので、この課題は明日以降に持ち越される事になった。

それらしいものが出来る事は分かったけれど、何だか小学生が理科の実験をしているようで、そんな自分が無性に可笑しく思えた。