御堂筋は、霧雨に煙っていた。拓也はコートの襟を立てながら、待ち合わせをした、「エリーゼ」と粋な名前の付いたカフェのガラス戸を押した。

なんて格好のいいものではなく、市営地下鉄は大倉山で降りた。約束の時間は1時30分。携帯の時計を見ると、12時54分だった。このまま文化ホールに入っても時間が有り過ぎる。丁度昼食時だったので、ラーメンを食べに、「もっこす」の本店に入った。8人、8人、6人と座れるテーブルは、殆ど満席だった。店員は、左奥の一つだけ空いている席を指差した。

「荷物はこれに入れて下さい」

バッグとコートを入れるには便利な、2段式のキャスター付き網カゴだった。そこにコートを脱いで入れると、さっと冷たい風が流れた。暫くして、私の席の前の父親と母親と女の子が出て行くと一人のおじさんが私の前に座ったが、上を見上げてから、すぐに離れた所に座り直した。クーラーが効き過ぎていて、寒い位だったのだ。

私はそこにじっとしていた。やがて、チャーシューメンが運ばれて来た。例の900円。しっかり捲ると、やっと麺が姿を現した。チャーシューを数えて見たかったが、それは次の機会に送ろう。でも、12、3枚は覆っていただろうか。大きなチャーシューは、食べ応えがある。麺など、あっと言う間になくなっている。ごめん、と言ったかどうかは聞き漏らした。

食べ終わる頃になると、寒い程の冷気が火照った体には、ひんやりとして丁度良かった。先程席を替わったおじさんも、ちょっとだけ、後悔しているだろう。私の前には、既に仕事合間の男女が3人、占めてしまっていた。

雨の中を文化ホールの1階会議室へ入った。部長と担当者は既に着席しており、私が実行委員としては一番目に着いた。1時15分を過ぎていたと思う。すぐさま後の委員達も到着し、はじめの挨拶の後、昨年のオカリナフェスティバルの結果についての報告があった。

それから協議事項が話し合われ、今年の「2010オカリナフェスティバルin神戸」の概要が決まった。今年は10周年である。今まで通りではだらけてしまうだろう。10周年としての案を呈した。全て、蓋を開けてからのお楽しみとしたい。

この部分はまだ決定していないので載せる訳には行かず、書く事も少ないので、前書きを多くしたのだ。


文化ホールから出ると、後はお茶をして家に戻った。浅田真央が気がかりだった。

7時過ぎてからTVで結果を知った。3回転半は見事に遣って退けたが、後のジャンプが上手く行かず、それだけが残念だった。それが上手く行ったら金メダルだったかと言うと分からない。しかし、銀メダルを取った事は素晴らしい事ではなかったか。金妍児の228.56には、完全に滑れても届かなかっただろう。金妍児も完全に滑ったからだ。

金妍児の素晴らしい滑りは、世界を魅了した。表現力、技術力ともに完璧だった。とても19歳の女の子の滑りではないと思った。完璧な金メダルの演技を見る事が出来て、幸せだ。浅田真央選手は、まだ次がある。大変だけれど、スケートが本当に好きだったら、もう一度次に見せて欲しい。完璧な、金メダルの演技を。

重圧にも耐えながら闘い、大健闘した日本の選手たちに、私は惜しみない拍手を送りたい。