妙見山はインターネットで見る限り、北海道から九州まで52もあった。みょうけんさんと呼んだり、みょうけんざんと呼んだり、みょうけんやまと呼んだりする。私達の小規模同窓会では、特に能勢妙見山と呼ばれる山の近くの光寿司と言う所で旧交を温めた。

家を出たのが午後3時。またまた三宮行きのバスに乗り、阪急電車に乗り換えると西宮北口まで行った。そこから宝塚線で、ドアの傍に貼ってある宝塚音楽学校の募集のポスターを見ながら、宝塚まで行った。乗り換えて池田まで行く。三宮から池田まで310円は安いと思った。そこでK君と待ち合わせをしている。

5時15分発のバスに乗るのだが、時間が少しあると言うので雑談をした。バス停に先に行っていたK君が、寒いと言って戻って来たのと出くわした。ブログの事が話題になった。マリーさん、Qちゃん、シマさんの人物評。みんな明るくて楽しいと言うお話だ。

10分前になってバス停に行く事にした。Ku君、Kaさんと出会った。このバスに乗るらしい。Kaさんの旦那も遅れて来るらしい。あっ、来た来た。

ここで5人。後3人とは、向こうで落ち合うのだろう。5時を過ぎたばかりなのに、もうすっかり暗くなっていた。

約40分のバスの旅となった。136番のバス? 都会では考えられない番号だ。まあ開放気分で乗ったものの、最初は少々渋滞して、そんな気分も何処かへ行った。暫くするとスムーズに流れるようになった。余野と言う所まで行くと光寿司はある。

辺りは暗くてよく分からないが、体が左右に揺れる。つづら折と言えば「伊豆の踊り子」を思うようで情緒があるが、かなりくねくねと曲っていて、バスも黄色い線をはみ出して完全に反対車線を走らなければならない程、道は狭かった。そんな事が暫く続くと、ワクワクした気持ちなどどこかに吹っ飛んで、えらい山道なんだろうなと、よく見えない景色を想像しながら身を任せた。六甲山に上っているような錯覚を覚えた程、折れ曲がった道だった。

540円を料金箱に入れて余野で降りたが、もう残っている乗客は数人だった。光寿司は歩いてすぐの所にあった。入ると民宿のような座敷に8人の席が用意されていた。

すぐにS君とYさんが現れ、この日(12月18日)の場所を推薦してくれたHさんが来た。何故、こんな遠くまで来たかを疑問に思う人達もいる事だろう。飛び切り美味い牡丹鍋を食べる事が目的だったのだ。

上のほうに掛けられている時計は2時半を指しながら、それでも動いていた。進んでいるのか遅れているのか分からなかった。そんな事より、その日に帰れたらいいと思った。

話の内容を事細かに書いても他愛のない事だし雑談なので前書きを長くした。色んな話が出て、次は3月頃に何処かいい所に行こうと言う事に決まった事だけは確かだった。

美味い刺身が出て、舌鼓を打った。土手鍋が運ばれ、野菜と共に山なりになった猪肉が運ばれた。鮮やかな色をしていた。蕪のような大根と小芋と蒟蒻の煮つけも出され頬張ったが、味が沁み込んでいて美味しかった。鍋に入れてもいいと言う事で、後で残りは、入れる事にした。

4人に一つの鍋だが、味噌味がよく効いている。確かに勧められた程の値打ちは十分にある。ビールも飲みながら、みんなは熱燗にした。S君が持って来ていたスペインのワインもある。私は一番遠いので、帰る事も考慮して、芋焼酎の水割りにした。

田舎から出て来て、それぞれがよく頑張ったと言う話が印象的だっただろうか。頑張っていたからこそこうして鍋を囲む事も楽しいのだろうと思ったりした。頑張る頑張らないに関わらず、鍋はいつだって美味いものだけれど。

「オカリナ持って来てない?」

と誰かが言い、

「あのカバンの中に入ってるよ」

と誰かが言った。みんな殆どが、かつて私が吹いたオカリナを聴いている。

「今吹くと牛蒡が詰まるからなあ」

と言いながら、「アリラン」を吹くと言った。するとK君が、ヴァイオリンの I さんの家に行った時の経緯を説明し出した。その時私は、プロの大フィルのヴァイオリニストの前で「アリラン」を吹いたのだった。

飲んでしまっているので緊張感も情緒も引っ手繰れもない。1B♭で吹き出した。このオカリナしか持って来ていなかった。後はマスコットみたいな掌に握り込める程の小さな、それでも1Cのオカリナがあるだけだ。これでは「天城越え」を吹いて吃驚されたけれど。これは、いつでもカバンに入っている、言わば常備薬みたいなものなのだ。

Ka妻さんが、甥がG交響楽団のヴァイオリンをやっていて、コンマスをしていると言った。

「それは月とスッポンで、私はそんな人と比べたらスッポンより下ですよ」

と言った。すると誰かが、

「スッポンポンでもいいからやれ」

と言った。

「どこまで脱ぐんや」

と返しながら吹いたのだったが、アンコールまで出て7人にしては拍手が大きかった。提案した「里の秋」はすぐに受け入れられた。オカリナは癒しと浄化作用があるのだろう。酔った上に更に酔ったようだった。Ka妻さんは、旦那に教えてやって欲しいと、冗談なのか本気なのか分からぬ風に2度も言った。Ka君も社長をしていて来年退職なので、そんな事を思ったのかも知れない。

S君が、

「やっぱり『ふるさと』を聴きたい」

と言ったので、後でそれも吹いた。彼は一緒に歌い出した。懐かしい思いを持っているに違いない。

私は飲んだ勢い(そんなに飲んでいないので勢いは兎も角)で、「聖しこの夜」を吹いた。

大将を呼んで来て、記念写真を撮った。それぞれが携帯を出したりデジタルカメラを出したりして、大将にシャッターボタンを押すようにお願いをした。長い撮影時間だった。モデルだったら大変なところだった。

「星が奇麗に見えるよ」

と言っていたが、9時30分に来てくれるようになっていたタクシーに乗るために外に出た。この辺は家が繋がっていて明るいので、奇麗だと言うまでには至らなかった。ちょっと離れるとさぞ煌いている事だろう。

Tさんは、みんなにおみやげを用意していた。「能勢のかあちゃん味噌」。きっとみそ汁が美味いだろうなと思った。それと「原木 生しいたけ」。こんなに気を遣わせて申し訳ない、と思いながら貰った。Ka君とは親しく喋った事はなかったが、少し接近出来たと思う。帰り際、握手を求めて来たからだ。同窓生だから対等に喋ってはいるが、ある人達には大社長なのだ。オカリナの弟子1号になるか。ここでコメント欄なら笑いが入る所だ。

2つに分乗したタクシーは、それぞれの場所に出発した。息子が迎えに来る者や近くの者もいる。こちらには、K君とHさんと私が乗った。Hさんが、

「星が奇麗でしょう」

と言ったのでちらっと見たが、止まったところでじっくり見たいと思った。星と雪と滝は、求めてでも見に行きたい。

Hさんは娘が迎えに来る、近くの病院前で降りた。しかも、そこまでの何倍ものお金を私に渡して・・。すぐ付き返したが、また突き戻された。

「じゃあ、また」

と、曖昧な返事をして受け取った。小さな賄賂? それは違うだろうが、なんだか複雑な心境だった。千里中央駅まではかなりの値だから、本当は2人とも、有り難い思いは同じだと思う。

新大阪駅まで地下鉄に乗った。新大阪でK君と別れた。K君はそのまま梅田まで行く。私は地下道をかなり歩き、JRの新大阪駅に行着いた。そこからは快速に乗り、垂水まで直行だ。それにしても、この時間帯、車内は西に帰る人で膨れ上がる。とんと満員電車とは縁がなくなった私だが、こんな事もあったなあと偲ばれた。

娘に車内から小さい声で電話をした。

「えっ、迎えでしょ? 今家に着いたばかりで寒いのに」

「頼むで。今三宮だから」

「今乗ってるの? 大きい声だね」

「一杯人がいるけど、大丈夫だよ。20分位で着くから。おみやげ買っとくから」

「えっ、何?」

「アイスクリーム」

「あっ、それは冷たいからいらんわ」

と言った。声が大きいのは、送話口にぐっと口を付けて小声で喋ったからなのだ。

まだ垂水駅に来ていなかったので、「ハート・イン」でチョコレートとジャンボモナカのアイスを買った。出ると来ていた。

「大分前から着いていた?」

「いいや、今着いたばかりだよ」

と言ってチョコレートを渡した。

「お父さん開けて」

と言った。

「その位自分でしなさい」

と言った。車は動き出した。アイスモナカを食べていると、いらないと言っていた筈なのに、ちょっとばかし食べられてしまった。帰ると家の鍵を忘れた娘夫婦と赤ちゃんが、車の中で待っていた。