何気なくチャンネルを変えていたら、徹子の部屋に行き当たった。幾つかの人形が置いてあり、お客さんは高橋まゆみさんだった。ひょっとして、私が持っている本の作者ではと思い、慌ててその本を探した。正しくその通りだった。

何年か前、出雲にいる妹が人形展を開催しているのを見に行った時、私に送ってくれたものだ。しかも、私宛に名前を書いて、本人の署名と落款のあるものだった。2006.4.28と墨書してある。

もう180万人が観に来ていて、来年3月で丸7年になるとの事だ。1956年長野県に生まれ飯山市常盤に嫁いではいるが、農家の娘だと言っていた。家族の前では作らなく、与勇輝(あたりゆうき)の作品はとても参考になったが、独学みたいなものだと言った。

農家のおじいちゃん、おばあちゃんを中心に、その暮らし振りや日常の一コマがリアルに作り上げられ、表情や姿から内面までが推し量られるようだ。

単に平和な姿だけではなく、老老介護でアルツハイマーのおばあちゃんを優しく見守り、世話をするおじいちゃんの姿が涙を誘う。

「雪の中」
待ち続け 待ち続けてた 妻を抱く あやまる言葉も みつからなくて

どこかへ出かけていたおじいちゃんを、アルツハイマーのおばあちゃんは外に出て、おじいちゃんの帰りを待っている。雪の中で、それを愛おしむかのように背中から顔を付けて抱くおじいちゃん。紙粘土が中心だが、その上に布で顔を覆ったり、他の部分を覆ったりしている。しっかりと針金もいれられ、どんな体の作りでも倒れない。

「いっしょに帰ろう」
迎え来る 我を見つけて 満面の 笑顔が歩く 夕暮れの経

徘徊しているおばあちゃんを探し、手を引いて帰るおじいちゃんとの二人の姿が、またまた涙ものだ。手の様子が実にリアルである。

「お迎え」
しけしけと 降る雨道を たどる足 下校のチャイム 待つ門の袖

頬被りしたおじいちゃんが、2本の傘をしっかり握って、孫を迎えに行く。その顔の誇らしさに、また涙が滲む。このおじいちゃん、雨が降りそうになると、そわそわし出すそうだ。

どこから見ても、人の情や温かさが、ほのぼのと伝わってくる作品群だ。こうして手にしている本が、徹子の部屋によって再び呼び戻され、以前より深い感動が蘇った。きっと神戸近辺でも開催されるに違いない。その時は、必ず見に行くと思う。

この本に載っている作品の題名だけでも書いて置きたい。

「ひなの頃」
「いやぁ」
「収穫」
「朝の体操(いち・に・さん)」
「ぬくもり」
「お気にいり」
「うたた寝」
「押し車」
「似た者どうし」 残念なことに 気に入っちゃったんさあ! お互いさまじゃ!
「家族のだんらん」
「さんぽ」
「いっしょに帰ろう」
「おじいさんのお陽様」
「ほうき売りのおばあさん」
「まなざし」
「小さな家出」
「母の手」
「祈り」 祈ること 拝むこと それがわしの日課なんだよ 何をって? それは 神様しか知らん!
「かしわ餅」
「すいか」
「お迎え」
「囲碁」
「山から」
「おじぞうさん」
「見送り」
「冬のバス停」
「頑固ばーさんの家出」
「祈り」
「おむすび」
「ほたる」
「一人酒」
「いつくしみ」
「赤い万華鏡」
「枯れた乳房」
「瞽女」
「馬とび」
「泣き虫」
「にらめっこ」
「つり」
「頑固じーさんのお宝」
「ここまでおいで」
「春こたつ」
「わらべ」
「冷たい手」
「買い出し」
「おだちん」
「雪の中」
「春の足音」
「帰り道」 じいちゃんと ススキがゆれる 草の道 唄って帰ろ 夕焼けこやけ
「お天とうさま」
「おそろい」
「酔っぱらい」
「しゃべらない月」
「お迎え」

高橋まゆみ創作人形の世界「故郷からのおくりもの」

あとがきででもあるかのように、本人の言の葉が載せられている。


一番近くにある大切なもの・・・

ある会場でゆっくり回るターンテーブルに置かれた一つの人形にくぎ付けになった。

360度どこから見てもすきが無い。人形なのに何かささやいている。しばらくして、あの人形に近づきたいと思った。しかし、教えてもらうすべも無く途方に暮れた。

そんな時だった。ある作家からの手紙に、「冒険する、発明しちゃう」という気持ちでとヒントを与えてくれる言葉をもらった。

それからというもの、何かに付き動かされるように試行錯誤の毎日であった。大ざっぱで、何をやっても、飽きっぽい性格。しかし、人形創りという、さまざまな作業は、私に、これでもか、という程、課題を与え、克服した時の喜びを教えてくれた。

人形を創り始めて24年が過ぎた。

出来上がった人形を丸いテーブルに置いてみる。

ゆっくり一回りする。悲しいかな、まだまだ半人前だよと、ダメ押しをされているようだ。

奥信濃に嫁ぎ、そこで見せてくれる、いとおしく媚のない、たくさんの村人達の姿に助けられ、これからも、人形創りの旅は続く。

2006年3月 高橋まゆみ


この人形達の中には、泣き笑い、喜怒哀楽の人生模様が、痛い程に表出されている。

TVでは、もう一つあった。このおばあちゃんは音楽の先生だった。田舎道の石に座っておじいちゃんがハーモニカを吹くと、にこにこしておばあちゃんが踊り出した。