ザ・シンホニーホールは1階席798名、2階席754名、3階席152名、計1704名の収容力だ。他、補助席が58名、立見席83名が用意されている。

2009年12月11日(金)19:00開演(18:00開場)「渡辺貞夫クリスマス・ライヴ!2009」に行った。ほぼ9割強の入りだろうか、空席もない訳ではなかった。

私は2階の席で、最後列の一つ前、右の辺りだった。あてつけでもなかろうが、よりによってGG(爺爺)40席とはまた感慨深いものがあった。

2階席は、ステージが高い所から一望出来るので、俯瞰図のようだ。一瞬真っ暗になり、ピアノとドラムとベースがこじんまりと浮かび上がった。5人の姿が見えると、拍手が起こった。

初めて本物を目の当たりにした。特に愛想のいい喋り方をする訳ではないし、淡々とした語り口だったが、話よりも内容を見てくれと言った気魄に満ちていた。

何の曲かは分からない。2階でも適度な音量で響いて来る。ステージの両サイドには大きなスピーカーが置いてあったが、あの前でなくて良かった事は確かだった。

アルトサックスの素敵な、それでいて剥き出しの音が顔の辺りを駆け回る。サックスのキーを押さえる指の動きが、あの独特な速さが、胸を連打する。

「次は、バラードです」

「次は、ブルースをやります」

と言った調子だ。スローな曲も聴き応えがあったが、それらは数曲で、後はジャズ特有のテンポとリズムで進んで行った。76歳でこれだけの音を出せるとは月並みな言葉で、凄いに尽きる。

相手のアルトサックスを吹いているのは、ケニー・ギャレットで、渡辺貞夫はこれからの世界を牛耳る男だと言った。銀色のナベサダのサックスがキラキラしながら明瞭な陽の音だとすると、ケニーのサックスは使い古されたくすんだ金色で、ややくぐもった陰の音がしているような気がした。どちらの音がいいかは好み次第である。掛け合いの2つの音が何とも絶妙で、交代する度に拍手が起こる。ケニーの、体を前後に揺すって吹く姿は、とても印象に残るものだった。

ナベサダが足を鳴らし、14拍目から入ったり、声をかけて入ったり、すぐに入らないで、ビートを刻んでから入る。一つのスタイルなのだろうか。

ピアノはジェラルド・クレイトン24歳。しっかりとした基礎があるのだろうな。はっきりしていて澄んだ音がしている。指がとても滑らかだ。髪は独特のスタイルだが、全員スーツにネクタイをしていた。

ピアノのジェラルドが小柄に見えるのは、ドラムスのジョナサン・ブレイクが巨漢だからだろうか。相撲取りと何ら遜色はない。150キロは十分に超えていると思った。素晴らしい撥捌きをする。ジャズはどこかでソロの部分があるが、拍手の嵐だった。奥さんは日本人で、昨日はお好み焼きを食べていたとナベサダが説明していた。

ベースのデズロン・ダグラスも若かったが、その響きはしっかりと伝わって来る。失礼な言い方になるが、あんな低音の楽器でも何の不安もなく、正確に心地よく腹に響いて来る。

彼も大きかったが、ドラムスには負けている。双眼鏡でみると、可愛い顔をしていた。最初は覗いていたが、すぐに仕舞い、それ以後出して見る事もなかった。

渡辺貞夫さんは1933年宇都宮で生まれ、18歳で上京して数々のバンドに参加している。最初はクラリネットだった。ボストン・バークリー音楽大学に留学して、そこでもバンドに参加している。

1980年には武道館公演を果たし、3万人を集客した。2007年には長年の夢だったと言う海外の舞台での子どもたちとの共演を、ジャカルタ「ジャワ・ジャズ・フェスティバル」で実現している。2008年秋には、アメリカ6都市、9公演を敢行。今年7月、日本・カナダ修好80周年を記念してカナダ・ツアーを行った。そこではモントリオール・ジャズ・フェスティバルにも出演した。

1部と2部に分かれていたが、あっと言う間に時間が過ぎた。5人が肩を抱き合ってお辞儀をすると下手に消え、照明も消えた。凄いアンコールの嵐だった。照明が点くと再び登場し、3曲演奏すると言った。

だんだんジャズの世界に嵌まって行くのが分かった。心地よいリズムとテクニックに酔い痴れる。ジャズはアドリブと言うが、スコアーがあり、それによって1曲を成している。曲中アドリブはあると思うが、5人がその決まりの中で楽しんでいるのには感動する以外にない。

クリスマスだからと言ってそれも演奏されたが、馴染みのものではなかった。「ホワイトクリスマス」などがあったらなあと期待していたのは、私だけだっただろうか。2階の高い所から見下ろしているのに、曲は上から降って来た。

もっと聴いていたかった。垂水まで娘と一緒に迎えに来た息子は言う。

「よくじっと座ったまま聴いておれますね。僕なんか『ブルーノート』で食べたり飲んだりして聴く分にはいいですけどね」

そして、

「立って聴く事が多いし、体を動かして聴かなかったら駄目ですよ」

と言った。まあ、2時間40分坐りっ放しではあったけれど。

曲目が分からないでは済まされない。終わった後ロビーに曲目が貼り出されていた。携帯に撮ろうとしている人の多さ。そこを掻い潜って、私も携帯に収めた。今から見て書き写したいと思う。ちゃんと写っていたらの話だ。

本日の演奏曲目

1st

1. TADD’S DELIGHT
2. STARS EYES
3. 3.10 BLUES
4. DEEP IN A DREAM
5. EMILY
6. BODY & SOUL
7. BOOGIE STOP SHUFFLE
8. DONNNA LEE

2nd

1. GROOVIN’HIGH
2. BIRD’S OF PARADISE
3. MOOSE THE MOOCHE
4. A NIGHTINGALE SANG IN BERKELEY SQUARE
5. DIDN’T YOU KNOW I CARE
6. I’M WITH YOU
7. LOPIN’
8. HOT HOUSE

アンコール

1. CHRISTMAS SONG
2. BYE BYE BLACKBIRD

何とか書けたと思う。

外に出ると雨も治まって、敷きつめられた杉の木の落ち葉が、照明で枯葉色に浮かび上がっていた。


行くように勧めてくれたブログ仲間達、ありがとう。