10時10分発の山陽高速バスに乗った。一番前の左側の席に座った。三宮には43分到着予定だと運転手は言った。
ビルの森と、向こうには本物の山を見て、いつもの風景だと思った。いつもの事ながらうとうとしていたら、バスは高速道路を下りる所だった。シートベルトを外しながら、降りる準備をした。予定より3~4分早い到着となった。
12月は要りようなので、銀行で少ないありったけのお金を下ろした。これがないと、僅かの支払いも出来ないのだ。三宮へ来た目的はこれだった。
そそくさと用事を済ますと、高架下の「一貫楼」で豚マンを買って帰ろうと思っていた。そこへ行くまでに「そごう百貨店」のデパ地下がある。ちょっと覗いて見る気になった。美味しそうなお菓子やお惣菜が並んでいる。色鮮やかで大量に買い占めてお昼のおかずにしようと思ったが、品質もいいのだろうけれど、他の店より2倍近くは高いと思えたので、やっぱり豚マンかと思わされた。
その時、「お薦めですよ」と、私を見た店員が声を掛けた。神戸牛のミンチを使ったコロッケだった。豚マン止めて、これにしようと決めた。優柔不断ではなく、如何にも美味しそうだったからだ。1個224円はかなりの値だが、魚の煮付け500円などよりはいいかと思ったりした。自分だけ食べる訳ではないので、思い切って6個買った。
西宮の実家から娘夫婦と孫が来る事になっているので、彼と飲むちょっとした夜の焼酎の為のあても買った。無造作に買うのではなく暫く見て、考えながら指示した。煮付け、高野豆腐、肉の煮物の3点を袋に入れて貰った。「なだ万」のもので、もうこれ以上は手を出せなかった。帰り際、1050円の、あの極旨の肉飯が目に入った。
急いでバス停に向かったが、11時20分発に間に合った。30分程で用を済ませたことになる。
家に着くと、孫の乗った車が着いたばかりだった。孫は一段と大きくなっていた。抱き上げたが、そんなに重くはなっていなかった。生まれたばかりの赤ちゃんを見て、手を伸ばしたがすぐに引っ込めて、母親にしがみ付いた。えも言えぬ複雑な心境だったのかも知れない。
私と孫は、持って来たプラレールを繋げて、機関車達を走らせた。「これ、ジェームスだよ。パパにトイジャラシュに行った時、買って貰った」と、得意げに話した。私は、この子が楽しいよう出来るだけ傍にいて、放って置かないようにした。
「コロッケ買って来たから、これ食べながら薄うい焼酎を飲もうか」
と言って、昼間から彼と飲み出した。赤ちゃんがいる事に遠慮して夜帰ると言うので、2階に寝るようにしているからと言って飲み始めた。コロッケは流石に美味かった。こうなったらお惣菜にも手を付ける事にした。これは孫も入れて3人で食べた。「なだ万」と思うからか、高級な味がした。いくらでも買える人はいるのだろうなと想像した。
やっぱり家で飲むと寝てしまう。暫く飲んで、2人とも轟沈した。
何かバタバタしているのに気付き台所の方に目を遣ると、1歳半位の女の子がこちらにやって来る所だった。娘の会社の社長夫婦が訪ねて来ていた。
「今、出ない方がいいよ、赤い顔だから」
と言われ、彼と、どんな人だろうと詮索し始めた。と間もなく、帰る気配がした。
「やっぱり、ちょっと見ておこう」
と言って、2人は玄関に出た。奥さんの全体からは、眩い程のオーラが発散されていた。品があって美しい。こんな人には、滅多に出会えるものではない。娘が世話になっている事のお礼と、顔の赤い理由を言った。
ご主人はと言えば、格好いいの一言だった。身長は180センチ。年齢34歳位だった。勿論体格はいいが、ばりばりのスポーツマンだった。どちらも、スターに会っていると言うより寧ろVIPに会っているような感じだった。
孫と同じ年の女の子もいて、車に乗ってから私がウインドーに手を当てるとにっこりして、とってもいい顔をした。服装のセンス(親の)の感じがいい。孫も少しの間でも遊べて良かった。こんな子が孫の・・、と思ったりした(爺馬鹿)。送ってから、
「この職を失ったら、こっちで使って貰おうかなあ」
と、赤い顔の彼が半分真顔で呟いた。
赤ちゃんの父親が帰って来て彼は夜、車でアパートに帰る為、3人で唐揚げを中心にした夕食をとる事にした。孫のパパとは引き続きビールを飲んだ。若い2人の父親は話が合うのだろう、日頃の勤務の事や世間話をしていた。時折、先輩面をしながら、私は役に立つかどうかも分からぬ処世術を喋ったりした。
下の娘が赤ちゃんを抱いて、飲み食いをしている部屋に入って来た。そこに赤ん坊を寝かせた。孫も傍に寄って、本当に優しく、この赤ちゃんの胸の辺りを撫ぜた。孫も、あの可愛い2人の突然の来訪者と遊んだ所為もあって、また赤ちゃんを向こうの部屋で一緒に見ただろう事もあって、やさしい落ち着きを取り戻していた。私は、この優しさが嬉しい。そして、これからは逞しさも身に付けて行って欲しいと思った。
大男の父親は、大事そうに赤ちゃんを抱いていた。静かに、澄み切った満月の夜は更けて行く。10時半を回った頃、彼は煌々とした月の下を帰って行った。
孫一家も、早く寝た。明日朝5時には広島に帰らないと仕事がある。つまり今日の未明、寂しいとか感じる暇もない程に、慌しく帰って行った。孫は眠そうにしていた。
昨日の事だけれど、
「じいちゃん、リョウたんに会いたかったよ」
と言った。
これも昨日の事だけれど、
「じいたん、リョウたんが帰ったらさびしい?」
と聞いてきた。
「うん、さびしいよ」
と答えると、
「ふーん」
と言った。
ビルの森と、向こうには本物の山を見て、いつもの風景だと思った。いつもの事ながらうとうとしていたら、バスは高速道路を下りる所だった。シートベルトを外しながら、降りる準備をした。予定より3~4分早い到着となった。
12月は要りようなので、銀行で少ないありったけのお金を下ろした。これがないと、僅かの支払いも出来ないのだ。三宮へ来た目的はこれだった。
そそくさと用事を済ますと、高架下の「一貫楼」で豚マンを買って帰ろうと思っていた。そこへ行くまでに「そごう百貨店」のデパ地下がある。ちょっと覗いて見る気になった。美味しそうなお菓子やお惣菜が並んでいる。色鮮やかで大量に買い占めてお昼のおかずにしようと思ったが、品質もいいのだろうけれど、他の店より2倍近くは高いと思えたので、やっぱり豚マンかと思わされた。
その時、「お薦めですよ」と、私を見た店員が声を掛けた。神戸牛のミンチを使ったコロッケだった。豚マン止めて、これにしようと決めた。優柔不断ではなく、如何にも美味しそうだったからだ。1個224円はかなりの値だが、魚の煮付け500円などよりはいいかと思ったりした。自分だけ食べる訳ではないので、思い切って6個買った。
西宮の実家から娘夫婦と孫が来る事になっているので、彼と飲むちょっとした夜の焼酎の為のあても買った。無造作に買うのではなく暫く見て、考えながら指示した。煮付け、高野豆腐、肉の煮物の3点を袋に入れて貰った。「なだ万」のもので、もうこれ以上は手を出せなかった。帰り際、1050円の、あの極旨の肉飯が目に入った。
急いでバス停に向かったが、11時20分発に間に合った。30分程で用を済ませたことになる。
家に着くと、孫の乗った車が着いたばかりだった。孫は一段と大きくなっていた。抱き上げたが、そんなに重くはなっていなかった。生まれたばかりの赤ちゃんを見て、手を伸ばしたがすぐに引っ込めて、母親にしがみ付いた。えも言えぬ複雑な心境だったのかも知れない。
私と孫は、持って来たプラレールを繋げて、機関車達を走らせた。「これ、ジェームスだよ。パパにトイジャラシュに行った時、買って貰った」と、得意げに話した。私は、この子が楽しいよう出来るだけ傍にいて、放って置かないようにした。
「コロッケ買って来たから、これ食べながら薄うい焼酎を飲もうか」
と言って、昼間から彼と飲み出した。赤ちゃんがいる事に遠慮して夜帰ると言うので、2階に寝るようにしているからと言って飲み始めた。コロッケは流石に美味かった。こうなったらお惣菜にも手を付ける事にした。これは孫も入れて3人で食べた。「なだ万」と思うからか、高級な味がした。いくらでも買える人はいるのだろうなと想像した。
やっぱり家で飲むと寝てしまう。暫く飲んで、2人とも轟沈した。
何かバタバタしているのに気付き台所の方に目を遣ると、1歳半位の女の子がこちらにやって来る所だった。娘の会社の社長夫婦が訪ねて来ていた。
「今、出ない方がいいよ、赤い顔だから」
と言われ、彼と、どんな人だろうと詮索し始めた。と間もなく、帰る気配がした。
「やっぱり、ちょっと見ておこう」
と言って、2人は玄関に出た。奥さんの全体からは、眩い程のオーラが発散されていた。品があって美しい。こんな人には、滅多に出会えるものではない。娘が世話になっている事のお礼と、顔の赤い理由を言った。
ご主人はと言えば、格好いいの一言だった。身長は180センチ。年齢34歳位だった。勿論体格はいいが、ばりばりのスポーツマンだった。どちらも、スターに会っていると言うより寧ろVIPに会っているような感じだった。
孫と同じ年の女の子もいて、車に乗ってから私がウインドーに手を当てるとにっこりして、とってもいい顔をした。服装のセンス(親の)の感じがいい。孫も少しの間でも遊べて良かった。こんな子が孫の・・、と思ったりした(爺馬鹿)。送ってから、
「この職を失ったら、こっちで使って貰おうかなあ」
と、赤い顔の彼が半分真顔で呟いた。
赤ちゃんの父親が帰って来て彼は夜、車でアパートに帰る為、3人で唐揚げを中心にした夕食をとる事にした。孫のパパとは引き続きビールを飲んだ。若い2人の父親は話が合うのだろう、日頃の勤務の事や世間話をしていた。時折、先輩面をしながら、私は役に立つかどうかも分からぬ処世術を喋ったりした。
下の娘が赤ちゃんを抱いて、飲み食いをしている部屋に入って来た。そこに赤ん坊を寝かせた。孫も傍に寄って、本当に優しく、この赤ちゃんの胸の辺りを撫ぜた。孫も、あの可愛い2人の突然の来訪者と遊んだ所為もあって、また赤ちゃんを向こうの部屋で一緒に見ただろう事もあって、やさしい落ち着きを取り戻していた。私は、この優しさが嬉しい。そして、これからは逞しさも身に付けて行って欲しいと思った。
大男の父親は、大事そうに赤ちゃんを抱いていた。静かに、澄み切った満月の夜は更けて行く。10時半を回った頃、彼は煌々とした月の下を帰って行った。
孫一家も、早く寝た。明日朝5時には広島に帰らないと仕事がある。つまり今日の未明、寂しいとか感じる暇もない程に、慌しく帰って行った。孫は眠そうにしていた。
昨日の事だけれど、
「じいちゃん、リョウたんに会いたかったよ」
と言った。
これも昨日の事だけれど、
「じいたん、リョウたんが帰ったらさびしい?」
と聞いてきた。
「うん、さびしいよ」
と答えると、
「ふーん」
と言った。