10日程前になろうか。先輩のK女史から1冊の本が届いた。何冊も出版している中の最新刊だ。2009年12月15日初版第1刷発行と書いてあるので、封切前の映画を観ているようなものか。
謹呈で送って来た。すぐに読んで、すぐにお礼と感想を書いて投函した。数日して葉書で、またまたお礼のお礼が舞い落ちた。
今回は、短い文章で自分の思いが伝わるように書こうとしたものを書き溜めて出版したもので、私には耳の痛い本となった。
彼女が挑戦したのは、新聞の投稿欄だった。この欄は、「四百字以内」と言う厳格な規定があって、原稿用紙一枚で読者に意図が伝わるように書かなければならない。彼女の場合「たいていは、大切なことを落とさずに普通の調子で書くと一枚半くらいになった。それを一枚に縮めるのは大変な仕事だ」ったそうである。
せいぜい月に1度位しか載せてくれないと分かっていても、「文章を真剣に書いた実績が残したくて、頻繁に投稿した」らしい。採用されたもの、そうでないものをこの本に纏めている。採用されたものは皆しっかりした名文になっているが、先程の理由で不採用になった文章も、捨て難いものが沢山ある。
目次では次の項目で纏めてある。
ことばの力
-ことばは優しさを作る-
もったいない
-庶民の経済孝-
花は何も言わない
-生きものたちに学ぶ-
政治家のみなさん 困ります
-ことばが大事-
高齢化社会と健康
-生き抜く力-
折にふれて
-ふと見た聞いた考えた-
エッセイ
今を盛りの事業仕分けではないが、そう区分されている。
「ことばの力」から2編書き出して見よう。
作家は言葉に命を懸ける
森進一の歌う「おふくろさん」をめぐる騒動が起きている。私も、歌い出しの前に、かなりの詞がつけ足された歌を初めて聞いて、「ない方がいいのに何故」と不思議だった。
長い年月を生きぬいてきた歌は、曲はもちろん、歌詞がすばらしい。私達の心の中に、しっかりと刻み込まれる。練り上げられたからだろう。「新おふくろさん」は、大分前からあるのに、今になってどうしてとは思うが、作詞家の気持ちを察することができる。
作家が原稿用紙に向かう時、私達とは違って、言葉に命を懸ける。
島崎藤村は『夜明け前』の冒頭の「木曽路はすべて山の中である。」に、三日間も費やしたそうだ。内田百閒は「あのう・・・」というような時の点々の数も、原稿どおりでないと、激怒したという話も聞いたことがある。
名作には、作家の命が込められている。一字一字、確かにとらえながら音読してみよう。美しい日本語の響きを感じることができる。
2007.3.11 神戸新聞
消化不良の敬語
突然、全く知らない人から電話がかかってくることがある。何かの宣伝か勧誘のことが多い。
先日の電話中、不審に思うことを質問すると、一人の顧客を例にして説明を始めた。間違いだらけの敬語で話すので、私は話の内容よりも、その事の方が気になってきた。「そのお客さんは、私の親戚でもないので、敬語は要りません。普通の言葉で簡潔に」と、私は要望したが、彼は、なおも消化不良の奇妙な敬語を使い続けた。
少し難しい質問をすると「上の方に伺っておきます」と言う。私はますます不快になり、「社内の人に対しては、伺うなんて言わず、聞くでいいのです」と、厳しく言った。すると「もしかして、叱られていらっしゃるのですか」と彼は言った。私は意地になって、「叱られているのはあなたです。自分に敬語は要りません。叱っていらっしゃるのですかでしょ」と言い放った。彼は「後日、おかけなおします」と言った。彼は重症だった。
2007.11.7 神戸新聞
何とよく纏まっていて、面白いのだろう。読者を引き付けて放さない。2つ目の投稿文は、何度読んでも噴き出してしまう。と同時に、義務教育中に敬語の使い方を教えて貰えなかったかと、悲しくなる前に重大な問題だと思った。
K女史の葉書には、内容などについて聞けるチャンスがないかと書いてあった。自分の書いたものには誰だって感想を聞きたいものだ。この言葉の裏には、久し振りに会って話しませんか? と言う意味合いも隠されているように思う。一度、時間を見つけて会ってみるとするか。
それに彼女は鹿児島に、ボランティア活動目的の家を新築して、活動を行っている。神戸に住んでいるが、月1回は催し物を計画して実行しているそうだ。時々神戸からプロの音楽家を招いてコンサートをしているらしい。何故私を呼んでくれないのだ。あっ、そうか。私はプロではないし、それに鹿児島までの交通費が大変だと思ってくれているのだ。これは無理な話だ。でも、私でよければ、来年でも再来年でも、お金が貯まったら、喜んで行くのだが。幸い、鹿児島は一度も行った事がない。桜島も教科書でしか見た事がない。
「私はオカリナを習い始めてわずか二年半ですが、数曲吹かせてもらっています。楽しんでおります」と結んでいる。
いいないいな、人間っていいな。出来るだけ早く会いに行って、オーディションを受けて来ようっと。きっと話が噛み合わないだろうな。自著の感想を聞きたいK女史。そして、オカリナを聴いて欲しいアマチュアの私。
謹呈で送って来た。すぐに読んで、すぐにお礼と感想を書いて投函した。数日して葉書で、またまたお礼のお礼が舞い落ちた。
今回は、短い文章で自分の思いが伝わるように書こうとしたものを書き溜めて出版したもので、私には耳の痛い本となった。
彼女が挑戦したのは、新聞の投稿欄だった。この欄は、「四百字以内」と言う厳格な規定があって、原稿用紙一枚で読者に意図が伝わるように書かなければならない。彼女の場合「たいていは、大切なことを落とさずに普通の調子で書くと一枚半くらいになった。それを一枚に縮めるのは大変な仕事だ」ったそうである。
せいぜい月に1度位しか載せてくれないと分かっていても、「文章を真剣に書いた実績が残したくて、頻繁に投稿した」らしい。採用されたもの、そうでないものをこの本に纏めている。採用されたものは皆しっかりした名文になっているが、先程の理由で不採用になった文章も、捨て難いものが沢山ある。
目次では次の項目で纏めてある。
ことばの力
-ことばは優しさを作る-
もったいない
-庶民の経済孝-
花は何も言わない
-生きものたちに学ぶ-
政治家のみなさん 困ります
-ことばが大事-
高齢化社会と健康
-生き抜く力-
折にふれて
-ふと見た聞いた考えた-
エッセイ
今を盛りの事業仕分けではないが、そう区分されている。
「ことばの力」から2編書き出して見よう。
作家は言葉に命を懸ける
森進一の歌う「おふくろさん」をめぐる騒動が起きている。私も、歌い出しの前に、かなりの詞がつけ足された歌を初めて聞いて、「ない方がいいのに何故」と不思議だった。
長い年月を生きぬいてきた歌は、曲はもちろん、歌詞がすばらしい。私達の心の中に、しっかりと刻み込まれる。練り上げられたからだろう。「新おふくろさん」は、大分前からあるのに、今になってどうしてとは思うが、作詞家の気持ちを察することができる。
作家が原稿用紙に向かう時、私達とは違って、言葉に命を懸ける。
島崎藤村は『夜明け前』の冒頭の「木曽路はすべて山の中である。」に、三日間も費やしたそうだ。内田百閒は「あのう・・・」というような時の点々の数も、原稿どおりでないと、激怒したという話も聞いたことがある。
名作には、作家の命が込められている。一字一字、確かにとらえながら音読してみよう。美しい日本語の響きを感じることができる。
2007.3.11 神戸新聞
消化不良の敬語
突然、全く知らない人から電話がかかってくることがある。何かの宣伝か勧誘のことが多い。
先日の電話中、不審に思うことを質問すると、一人の顧客を例にして説明を始めた。間違いだらけの敬語で話すので、私は話の内容よりも、その事の方が気になってきた。「そのお客さんは、私の親戚でもないので、敬語は要りません。普通の言葉で簡潔に」と、私は要望したが、彼は、なおも消化不良の奇妙な敬語を使い続けた。
少し難しい質問をすると「上の方に伺っておきます」と言う。私はますます不快になり、「社内の人に対しては、伺うなんて言わず、聞くでいいのです」と、厳しく言った。すると「もしかして、叱られていらっしゃるのですか」と彼は言った。私は意地になって、「叱られているのはあなたです。自分に敬語は要りません。叱っていらっしゃるのですかでしょ」と言い放った。彼は「後日、おかけなおします」と言った。彼は重症だった。
2007.11.7 神戸新聞
何とよく纏まっていて、面白いのだろう。読者を引き付けて放さない。2つ目の投稿文は、何度読んでも噴き出してしまう。と同時に、義務教育中に敬語の使い方を教えて貰えなかったかと、悲しくなる前に重大な問題だと思った。
K女史の葉書には、内容などについて聞けるチャンスがないかと書いてあった。自分の書いたものには誰だって感想を聞きたいものだ。この言葉の裏には、久し振りに会って話しませんか? と言う意味合いも隠されているように思う。一度、時間を見つけて会ってみるとするか。
それに彼女は鹿児島に、ボランティア活動目的の家を新築して、活動を行っている。神戸に住んでいるが、月1回は催し物を計画して実行しているそうだ。時々神戸からプロの音楽家を招いてコンサートをしているらしい。何故私を呼んでくれないのだ。あっ、そうか。私はプロではないし、それに鹿児島までの交通費が大変だと思ってくれているのだ。これは無理な話だ。でも、私でよければ、来年でも再来年でも、お金が貯まったら、喜んで行くのだが。幸い、鹿児島は一度も行った事がない。桜島も教科書でしか見た事がない。
「私はオカリナを習い始めてわずか二年半ですが、数曲吹かせてもらっています。楽しんでおります」と結んでいる。
いいないいな、人間っていいな。出来るだけ早く会いに行って、オーディションを受けて来ようっと。きっと話が噛み合わないだろうな。自著の感想を聞きたいK女史。そして、オカリナを聴いて欲しいアマチュアの私。