フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第5戦スケートアメリカで、尻もちをつくなどミスが目立った金妍児(韓国)を迎えてフリー1位(最終成績は2位)となったのは、レイチェル・フラット(米)。笑顔が印象的な17歳だ。

                                         2009.11.17 読売新聞22面(岡田卓史)

こうして記者の名前を挙げて貰えるのは、読者も安心して読む事が出来る。昨日の岡田卓史氏の文章が魅力的で、金妍児の舞いを見なかった事が悔やまれた。

岡田氏の記事はこうだ。


魅惑ボンドガール

金が最後に拳銃を撃つポーズで決めると、この日初めてスタンディング・オベーションが送られた。19歳の世界女王は、観客の心まで撃ち抜いてしまったようだ。

ジャンプのキレが抜群だった。冒頭に高さのある3-3回転ジャンプを成功させて波に乗る。終盤の見せ場のステップも華麗に決めた。「最後にスピンの速度が遅くなってしまった」と反省したが、一体どこまで得点を伸ばしてしまうのかという出来栄えだった。

昨季の世界選手権で優勝、今季も初戦のフランス杯を歴代最高得点で制すなど、向かうところ敵なしだ。「パリで素晴らしい結果が出たので、今回もいい演技をしなければと、ナーバスになっていた。でも、曲がかかったら落ち着いて滑れた」。映画「007」のメドレーに乗り、氷上のボンドガールになりきった。

完璧な演技につけられたのは、SPの歴代最高得点。「スコアを見てびっくりしたけど、とてもうれしかった」と笑った。もはや、フリーの焦点は、金の優勝ではなく、またも歴代最高得点が出るかに移った。そう感じさせるほど、今の彼女には圧倒的な存在感がある。

                                         2009.11.16 読売新聞17面(岡田卓史)

写真は余裕をもっている金妍児の美しい笑顔と肢体だった。この記事で、何度もチャンネルを変えてみた。けれど、ニュースにでも出くわす事はなかった。ショートプログラムで世界歴代最高得点76.28をマークした金妍児を是非見たいと思った。チェ・ジウにも似た顔立ちは、ボンドガールでも通用する可愛さだ。今後も見守って行きたい。

緊張と言うよりプレッシャーだったのだろう。確かにフリーでは転ぶなど、目だったミスがあった。既婚者ではないので仕方が無いとは思うが、華麗な舞いを見てみたかった。

フリーでは、それでも2位に入る所など、転んだ所も絵になるのだろう。流石女王。総合では176.91のフラット(2位)を抜いて、187.98で優勝した。他を寄せ付けない王者の貫禄なのだろう。日本の村主章枝は僅か及ばず、銅メダルを逃した。

金妍児が華麗に滑った曲「007」ボンドガールのメドレーは元より、フリーで滑った「ピアノ協奏曲ヘ長調」も音楽を嗜む者達の耳に入り、あちこちで演奏される事になろう。



編集手帳には金妍児とは関係ないが、面白い書き方がしてあるので掲載する。


東北地方の独立国を舞台にした井上ひさしさんの小説「吉里吉里人」に、頭の二つある犬が登場する。名前を<イッタカキタカ号>という。

吉里吉里国の誇る科学技術の象徴として、動脈、静脈、脊髄神経などの接合手術によって2匹の犬から作り出したもので、しっぽがあるべき側にも頭がある。前後どちらにも歩くことができ、あちらへ行ったかと思えば、そのままこちらに来ることがあり、名前もそこに由来する。

そういう犬が実際にいれば、どこに向かうのか、何をしようというのか見当がつかず、見ていて神経がまいるだろう。「普天間」の鳩山内閣がそうである。

きのう午前、首相は東京の公邸前で、「日米合意を前提にしない」と語った。同じ日の昼、岡田外相は那覇市内で記者会見し、「日米合意はある程度、前提にせざるを得ない」と語った。東京と那覇にそれぞれ別個の頭をもつ胴体の長~い犬を見ているかのようである。迷走と呼ぶのはおそらく褒めすぎだろう。迷走は少なくとも動きが目で追える。現状は迷走以前である。

<イッタカキタカ内閣>というのは、あまり名誉な愛称ではない。
                                            2009.11.17 読売新聞「編集手帳」

やっぱり上手いと思う。関係付けをする所など絶品である。是非、岡田卓史氏のように、名前を知らせて欲しい。いや、そんな事をすれば、書かれた対象(集団)に目を付けられる恐れがある。個人を会社として守らなければならない義務と責任もあろう。

一読者は、そんな事とは関係なく作文に感心するので、どんな人が書いているのか知りたいだけだけれど。



金妍児と書くと一瞬でも二瞬でも誰かと思う。妍児となると、男かなと思ってしまう。だが、こう書くと別人のようによく分かる。

キム・ヨナ。