昨日は、18時30分に新長田駅で待ち合わせた。

それまでにジムで汗を流し、風呂に入り、ゆったりと出かけた。垂水からはJRに乗った。

18時25分過ぎに着いた。駅前の噴水の前のベンチには、2人が座っていた。すぐ1人来て、タクシーで店に向かった。オカリナの仲間で、忘年会や新年会に集まったり、今回のように暑気払いをしようとの提案を受けて集まる場合もある。8月にメールを貰っていたが、この日になった。一時はオカリナと直接関係のない私の知人が合流し、8人集まったこともある。兎に角、中身の濃い、楽しい集まりである。

「こっちゅ」は東尻池5丁目にあり、入ると韓国を思わせる色鮮やかな座布団が目に付く。予約をしていたが、席にはショッキングピンクの座布団が、2枚ずつ重ねてあった。壁は縦にハングルが書かれた大きな紙が張られている。

生ビールから始まり、マッコリ(韓国の濁り酒)、眞露(ジンロ)、そして瓶ビールへと戻った。

ちょっとした4つの皿に盛られた突き出し。それからここ独特のブロッコリーなどの入ったサラダ。ジョン(葉書を正方形に切って、その上に一杯に乗せた位の丸い山芋で作ったチジミ)が出されて、チャプチェが運ばれた。ズリの煮たものが来た。骨付きの唐辛子に餡かけのような鶏肉も来る。変な言い方だが、本格的なニラ入りチジミもやって来た。

最後にピビンバを食べるのは重いので、キムパにした。韓国風海苔巻きが、8つに切られて出された。日本とは違い、酢飯ではない。ごま油が使ってある。韓国で食べたものと、そんなに変わりはない。ごま油の強い香りに変わりはなかった。

夏、オックスフォード大学からの男子留学生を受け入れて、楽しく過ごしたMさんの話。医学部の学生で、頭が良いのか、歌などいっぺんで覚え、すぐにメロディーをギターで再現出来たとか。書いていて、これが正しかったのかは分からない。

テナーオカリナはどこのが良いか、ともう一人のMさんに訊いていた社長。この大きなオカリナを吹いてみる気らしい。そのMさんは「吉塚」か「Sakura工房」のオカリナがいいと言っていた。確かに、どちらもいい音を出す。700度と1200度で焼いた違いは、音には現れるけれど。

私はテナーを吹いた事は殆どない。しかし、一度試し吹きをした事のあるティアーモがいいと思った。または、ソルジェンテかカンターレを吹いてみたいと思った。10月の初め頃車で5人乗って福島県での結婚式に出席する。帰りに茨城県笠間市にあるカンターレの工房に寄れるチャンス到来か? と思っていたが、私一人ではなく、外の者は何らオカリナに興味がある訳でもないので、そこに行って帰るのでは、余りにも自分勝手過ぎると思い、それはいつの日にか、一人で行ってみる事に決めた。今興味があるのは、テナーではなく、ソプラノからアルト、つまりSC管SG管SF管MC管の4本だけである。気に入っても、もうそうそう買う訳には行かない。SCとMCに絞る事になろう。

そうこうしている内に、3時間は矢のように早く過ぎた。レディーが2人いるので、そろそろ帰る事になった。しかし、ほろ酔い気分も手伝って、バッグに入れて来たオカリナを吹いた。10人位いた他の客が全部帰った事も手伝った。上手いも下手もそんな事は頭になかった。だから、こんな大胆な事が出来たと思った。

これ以上小さいと指が押さえられないと言う程小さな3,500円のオカリナで「天城越え」を吹いた。娘2人は私達が帰るまでは表にいたが、魅力的なママは、奥の部屋に引っ込んでいた。それが、すぐに出て来た。オカリナの音を聞いたからだ。厨房で娘達と3人で聴いてくれているようだった。こちらには顔も姿も見えないが、私は次に3連の「イカロス」を出して、「トロイメライ」を吹いた。いつもの「イカロス」ではなくこの前注文した、全く同じ型の3連を持って来ていた。それは、やや銜える吹き口が厚い。そして、音が緩く甘いのだ。まあ、吹きこなしていないと言うことになるだろうか。「情熱大陸」や「タイスの瞑想曲」、「亜麻色の髪の乙女」には、この甘さがいい。オカリナは同じ種類の物でも、全く同じ音とかフィーリングの物はない所に、この曲はこのオカリナで吹こう、と言う話になる。しかし、どこかでオカリナを集める事を止めない限り、金の切れ目まで遍歴は続いてしまう。

後、「アリラン」を吹いて、終わった。またまた下手さ加減と馬鹿さ加減を晒してしまった。若さ加減? の至りだと反省している。


タクシーが来るまでに、ママから驚きの言葉を聞いた。えっ、とこの耳を疑った。

「12月に、この店閉めるわ」
「どうしてぇ」
「もう疲れたし、結婚もしないと」
「えっ、結婚?」
「嘘嘘、それは嘘だけど」

写真家の立木義浩さんも何度か寄ったと言う、好感の持てる店なのに。また一つ店仕舞いをする。こんな事があろうなど信じられない事だった。もう「こっちゅ」に行けなくなる。

「だから、12月までに、また来て下さい」

店との別れは、経営者達との別れでもある。「また会えるよ」と言いながら、どれだけの人とそのままになってしまった事か。

もし、許される事ならば、店仕舞いのその日までに、ここで40分ばかりの「オカリナ・ヘタクソ・コンサート」をやってみたい。お客が、うるさいと言えばそれまでだけれど。

1人は歩いて帰った。すぐ近くの吉田町へ。3人はタクシーに乗り、私以外の2人には、新長田駅より家が近くなる兵庫駅まで行った。垂水へ向かう電車の中で店仕舞いの事を考えていると、揺れ動いていたあのママの美しい顔が止まり、脳天に張り付いてしまった。