部屋の中だから安心だと書いたが、何の何の雷鳴は暫く留まり、何度かは驚天動地の有様だった。脳天を劈(つんざ)き、大地を揺るがす、近年稀(まれ)な雷だ。目の前に落ちたかと思う程の音で、流石に恐れを抱かせるに十分なものだった。本当に安心出来るのは、いくら大きくても太鼓の音だ。

新聞(読売)にも、「梅雨前線の影響で、中国、近畿地方は19日午後から夜にかけ、強い風雨に見舞われ・・」とあり、その凄さはここだけのものではなかった。神戸市外に住む親友からの携帯メールにも、「昨夜の雷には驚愕しました」とあったのだから。

最近正しい漢字や熟字が書けないことがある。まさかと思いながらも、うろ覚えの状態である。ワープロやワードを使うようになってから、書けない文字が増えてきた。ならば、みんな多かれ少なかれ、そんな傾向にあるのかも知れない。

相手は誰か名誉のために言わないが、食卓で「一宿一飯」の話が出て、
「一宿一ぱんの恩義って言葉があるけど、一ぱんのぱんは、どんな字だったかなあ」
と、私に聞くでもなく自分に問うている風でもなく口を開いた。

「飯と言う字じゃない?」
と何の戸惑いも無く返事すると、

「えーっ!」
素っ頓狂な声が返って来た。

「どんな字だと思ってたの?」
そう聞き返すと、

「一般のはんだと思ってた」
と言った。

「そうしたら一宿が当たり前のことになるだろう?」
と言いながらも心配になって来て、慌てて辞書を開いた。「一宿一般」(笑)ではなく「一宿一飯」だった。ちょっと世話になること、そう書いてあった。私はそう覚えていたのだが。

「計算してみて。お前なんか七千宿七千飯位じゃないの? もっとかなあ・・」
そう言って笑った。PCでは「いっぱん」を入力すると最初に変換されるのは「一般」だし、無理も無いことかも知れない。

どんよりとした雲に覆われている窓の外。やけに静かだ。嵐の前の静けさか、と思っていると、道路を隔てた向かい側の家の犬が、急に吠え出した。暫く練習から遠退いていたオカリナの練習でもするか。

そうして、重い腰を上げた。