ここまで①~⑨まで書き綴ってきた

ADHD、ASD、LDの3つの診断名をもつPくんの

中学進学についてお話します。



成育医療センターでLD指導を受けている時から、主治医の先生からは「情緒固定がいい」と勧められていました。 


情緒固定学級というのは、

知的な遅れはないけれども、コミュニケーションの困難さから一斉指導や集団生活が難しいために、少人数できめ細やかな指導を行う学級のことです。


しかし、Pくんが5年生のときまで、住んでいる自治体に中学校の情緒固定学級はありませんでした。


そのため、親戚の家に住民票を移して、他区の情緒固定級に進学することを考えました。


管理職や、区教委の特別支援課などに相談してみたところ、

中学入学に関する進学相談(情緒固定級への申込み)は、当該自治体に住民票をおき、そこの公立小学校に通っていないと受けられないことがわかりました。


つまり、進学相談の始まる6年の一学期に、その区へ転校をして、そこから申し込まなくてはいけなかったのです。


しかも、情緒固定級は志望者が多く、申し込んだところで必ず進学できるとは限らないのです。



これには、Pくんもご両親も悩みました。

自閉傾向を強くもつPくんにとって、全く慣れない環境へ、卒業目前に転校させ、

入れるかどうかわからない進学相談を受けさせるのか…と。



並行して、


Pくんに合った特別支援に手厚い私立中学への進学も考えました。


その学校は小学校3、4年程度の読み書き計算ができていたら入試がクリアできると言われており、これまで地道に基礎固めをしてきたPくんなら射程圏内でした。


幸いなことに家庭の経済的にも問題ありません。


しかし、

Pくんを連れて、見学に行ってみたところ、学校の最寄り駅のバスロータリーの複雑さがネックだったようです。


また

注意散漫なため、目的地で降りられない可能性が高いことから、Pくんは公共の乗り物に対して不安感を強く持っていました。


これは、無理だ……ショボーン


と本人もお母さまも判断したようです。



試行錯誤しているうちに、

Pくんは、Z先生のもとで安定した学校生活を送り、学力もPくんのペースで確実に上がっていきました。



これは、

もしかしたら、地元の普通の公立中に行けるかもしれない!?



という思いもよぎり、

さらに迷いました。




そんな中

いきなりのコロナ休校。


いきなり学校に通えなくなる

出かけられなくなる、3ヶ月を過ごします。



その間に出された学校からの課題を

Pくんのご両親はしっかりと見てくださいました。


そして、

この子は1対1だと理解できる子なんだ


逆に言えば、一斉指導は無理なんだ


ということを、ご両親ともども、心の底から痛感されたのでした。



その途端、

Pくんが中学に入学する年に、区内で初めての情緒固定級が新設されることになりました。



これはもう、

Pくんの日頃の行いがよかったから…

なんて思ってしまうほど。



Pくんのお母さまは、医療センターから推薦状を書いていただき、

私もZ先生と一緒に、審査に通るように訴える進学相談書類を作成しました。



10倍ほどの倍率のなか、Pくんは無事、情緒固定級の入学許可を得ることができました。



お母さまは大喜びして、


そして、一方で本当にこれでよいのか悩まれました。


情緒固定級に進学すると、通常の9教科のカリキュラムを網羅してないために(社会、理科などがない)

普通科高校進学、大学入学資格がとれなくなるのではないか、という心配です。


(これは自治体によって異なるようです)



しかし、お父さまの

この子に、今、何が一番必要かを考えよう

という言葉で、情緒固定級への進学を決心されました。



Pくんは、「中学校はみんなと違うけど、特別支援の授業がたくさんになるから嬉しい」

と、安心した表情で卒業を迎えました。


中学校入学前には、

前日に教室を案内してくれたり、体育館の様子を見せてくれたり、してもらいました。


入学後1ヶ月をお試し期間として、通常学級のいろんな教科を経験させてもらい、

その中で自分に合う教科を「交流学習」として選ばせてもらえたようです。


安心して、小学校から中学校への橋渡しができた、


そのことが、満足感でいっぱいです✨