文科省から出されている学校教育での指導指針、「学習指導要領」では、各学年に学ぶべき内容が示されています。

この内容が系統的に、小学校から中学校、そして高等学校へ続いていることは確かです。

 

一方で、昔から小・中・高は7・5・3と暗に言われてきているのをご存知でしょうか・・・。

 

これは、それぞれの学校で学業についていけなくなる子供の割合だと言われています。

小学校では3割、

中学校では5割

高等学校普通科では7割の児童生徒が

その学校で身に付けるべき学力を身に付けられずに卒業するということです。

 

それだけ学習指導要領に示されている内容のハードルが高めに設定されているのですね。

 

 

読み書き障害(ディスレクシア)の権威、国立成育医療センターの小枝先生は、

生きていくために必要な最低限の読み書きの力は、

小学校4年生までの漢字が書けること、

小学校6年間で習う漢字を読めること

であるとおっしゃっています。

 

 

通常、LD(学習障害)やディスレクシアと診断されるお子さんは、

小学校1、2年では、実際の学年よりも1学年以上の遅れ

小学校3年生以上では、実際の学年よりも2学年以上の遅れがあるといわれます。

 

つまり、3年生のBくんにとって3年生の漢字を書くということは、かなり無理のある学習なのです。

しかし、みんなと一緒に同じ教室で勉強しているのですから、できるだけみんなと同じことがしたい思いがあるのは当然です。

つまり②で示した宿題の簡略化は、これらを実現するための打開策なのでした。

 

 

実際問題、背伸びすることばかりにパワーを取られていたら、本当に身に付けるべきBくんの学力が育ちません。

 

そのために私がお母さまと担任の先生に進めたのが、

「漢字の書き取りテストを、読みのテストに変えること」

です。


書くことに関しては、1年生後半~2年生前半の漢字の力を固める段階のBくんですが、

読むことならば、学年相応の内容がなんとか理解できます。


Bくんに相談したら「読みの方がいい」と快諾してくれたので、

担任の先生に伝えると、その翌日の小テストから早速変えてくれました!

(毎度思いますが、この仕事は担任の先生と連携を取ってこそ成果が表れるのですキラキラ

 

読むことはできるけれども、もちろん簡単ではないので、

前の日やテスト前に確認して、90点程度。

学習障害をもたない子供たちが書き取りテストをするのと、負担や難易度がほとんど変わらないと思います。

 

 


(読み書き障害の子にとって、手も足もでない漢字50問テスト。)

(しかし、読みならできます!!)

 

その後何回かに分けて、教室での様子を聞き取っていますが、

Bくんは読みのテストになってから「答えを書けることが増えた」と喜んでいました。

今までは答えが全く思い浮かばず、白紙に近い状態で提出していたからです。

 

テストをその子の力に合ったものに変えること

BくんがBくんに合った方法で、友達と一緒に漢字を学び続ける環境を整えることにつながります。

 

 

Bくんはとても素直で従順なお子さんなので、

テストや宿題の形式の変更について、すぐに受け入れることができました。

 

しかし、学習障害をもつお子さんは、ASD(自閉症スペクトラム)を併発していることが多く、

ASDのお子さんにとっては、臨機応変な対応が受け入れられないことがあります

(テストや宿題はみなと同じでなくてはいけない、という強いこだわり)

 

そのような場合は、時間をかけてゆっくり丁寧に、本人の気持ちを動かしてくのがよいと思われます。

あくまで本人の意思を尊重してあげて下さい。

 

 

また、Bくんの担任の先生はとても特別支援に理解のある先生なので、スムーズに進みましたが、

残念なことに、そうではない先生も多くいらっしゃることは確かです。

 

その場合は、

直しをするときに予め先生が答えを書いて、なぞらせてあげてほしい

(時間がないなら、私が請け負います…と)

50問テストを2~3回に分けて実施してあげてほしい、

再テストを2~3回に分けて実施してあげてほしい

などと、

担任の先生に伝えています。

 

とにかく、50問テストが全部できるまで再テストを何度もやらせる行為は、最初に書いた根性論以外の何物でもありません。

私はよく

「50mを9秒台でしか走れない人に、6秒台を出すまでひたすら走れ!と言っているようなものです」

と例えて、担任の先生の理解を得ていますグラサン

 

何度も言いますが、

一番大事なのは、

その子どもが、自分に合った方法で、友達と一緒に漢字を学び続ける環境を整えること

だと思うのです。