「斜面住居」の絵を描きながら、これを背中合わせにすると、「合掌造り」のような集合住宅ができることを思いつきました。
20戸前後の小規模な集合住宅ですが、末広がりで、大地に踏んばって立つのですから構造的に強いのは明らかです。
この場合は背中側から各戸にアプローチせざるを得ないのですが、内側には住民たちが集まって食事をとることのできる共同のリビング空間、「みんなの家」ができます。
釜石ではひとり暮らしの高齢者の方も多いので、昼間はこのスペースで仲間と一緒に過ごせば、孤独からも解放されるに違いありません。
津波の場合も屋上に避難すればまず安全でしょう。
この提案は住民をはじめとする一般の人たちには歓迎されましたが、建築関係者からは必ずしも好評とは言えませんでした。
「合掌造り」というあまりにシンボリックな形状が気に食わないようですし、これまで現代建築の新しさを追求してきた伊東が、突然日本の民家のような過去回帰をしてよいのか、という批判もあるのでしょう。