建築家として被災地に提案したかったのは集合住宅のあり方です。
私たちは何とかして元住んでいたエリアに極力近い場所に住めるような集合住宅を実現したいと思いました。
そこで昔の仲間と楽しく暮らせるような提案を模索しました。
そんな模索のなかから思いついたのが「斜面住居」です。
特に魚市場に近い魚河岸周辺エリアでは山と海が接するくらいに迫っているので、山裾はコンクリートの擁壁で覆われています。
傾斜50~60度の擁壁に沿わせて5層くらいの斜面住居をつくろうという提案です。
擁壁の上には既存の避難路もあるので、下の道路と避難路はこの集合住宅を介してエレベーターや階段で結ばれるという利点もありますし、各住戸を隔てる壁が擁壁と直角方向に設けられるので構造的にも強いのです。
各住戸の前面には海の見える大きなテラスと縁側があるので、かつての農家のように、人は隣家を縁側から訪れ、縁側に座って話し込むことができます。
通常の公営住宅より若干建設コストはかかるかもしれませんが、ほとんど使い物にならない土地を利用できることを考えれば、実現の可能性は十分にあると言えるのではないでしょうか。