最近は上場している会社の株式を大量に購入すると「その会社はもとより経営者や従業員が危機に陥いる」らしい。M&Aの防衛策を探ることが上場企業の最大のテーマであるかのようだ。

また本日の日経によると、ヤフーの調査によって会社は誰のものか?というアンケートによれば、「株主」32%に次いで、「社員」が25%となっている。同じ紙面には、MAコンサルの村上氏がニッポン放送の株主総会に出席するという記事もあった。総じて「株主はますますうるさくなりますね。」という記事だろうか。

さて、個人的にこの「誰のもの」という質問について、理想を語るのであれば「もっともその会社の成長に貢献した者のもの」だと考えている。もちろんその成長に貢献しているのは、「顧客」「従業員」「役員」であろう。
ただし、「顧客」「従業員」「役員」は、貢献の見返りに一定のリターンを得ることができる。しかし「株主」はなにによってリターンを得ることができるのか?配当とキャピタルゲインだが、誰よりもリスクを取って経営参加していることをもっと強調されて良いはずだ。

なんとなく株式を購入し、総会にも出席せずに値上がれば売却するような消極的な株主が大多数だろう。企業はこれまでも、村上氏や堀江氏のような、第三者の株主の声を遠くに置いてきたし、退ける努力にエネルギーを注いできた。
外人株主による「もの言う株主」の圧力やソニーのガバナンスの透明化の努力によって、近年には株主に真摯な姿勢をすべき論が盛り上がりつつあったのだが、最近のライブドア問題でこれが逆行しているようで不安を覚えている。

最近の記事によると、ようやく日本の株式市場も欧米並の(PER)水準に落ち着いてきたとのこと。
それでも最近の新規公開株を見ていると、まだまだバブルの感が否めない。

ところで私がかつて証券会社に入社した平成元年当時の注目は新規公開株ではなく新発CBだった。(CB:転換社債)
CBは本来、転換価格が決まっており、親株(CBを発行する会社の株価)が上昇すれば比例してCBの価値も上昇するものだ。
しかし、当時の相場はそうではなくて、親株の株価は動いていないのに、CBの初値は必ずといっていいほど1.2倍~1.5倍くらいに値上がっていたものだ。
もし1.5倍の初値でCBを150万円で買って、株式に転換して売れば理論上100万円で、一瞬にして50万円の損失となる。
当時は新日鉄のCBが初値300万円(もちろん親株は動かないのにかかわらず。)とか、気が狂ったような相場だった。
明らかなマネーゲームである。
結果的にCBの大量発行が発行株式数の拡大となり、すなわち株式価値の下落となり、バブル崩壊の一因ともなったのだ。

さて、現在のマーケットもあいかわらずのマネーゲームの様相である。
大型分割の発表で株価が大幅に上がるのはおそらく日本のマーケットくらいだろう。
もっとも株価が暴騰した会社もうれしい反面、その株価維持には必死となるだろう。
大型分割で暴騰した会社、せめて株主の期待は裏切ってほしくないものだが、株主も株主で適度な判断を望むところだ。

やはり日本人はどの国より貯蓄率も高く、堅実な性格をもつ側面があるが、反面、ばくちが好きなのだろうか。
もしかしたら世界中のどの国よりもリスクに敏感なのに、享楽的な一面も持つのかもしれない。
日本人は時間にも品質にもシビアで全てをシステマティックに管理する傾向があるが、反面バブルのような非理論的な現象を心のどこかで期待する国民性があるのかもしれない。

前回は、新規公開する未公開企業の分析についてざっくりとお話しました。
聞いたこともない企業が、何を仕入れ、どんな工夫の加工をして、どこで販売するのか。さらにその売上をどのように拡大させていくのか?リスクはどんなものか・・・といろいろ頭をめぐらすわけです。

ところが、私たちの身近な(株式公開していない)企業の株式を買いませんか?って紹介されるとどうでしょうか。
おそらくは株式公開に際しての条件は充分に整備されているでしょうから、調べるまでも無く欲しくなるわけです。
つい最近でも、極めて知名度のある製薬業界の株式が第三者(ブローカー)の手によって売りに出されているという情報がありました。(というか、今でも巷で売買されているようです。実際にこの会社のHPでも、売買に関しての注意喚起を促すメッセージが発信されています。)
聞いたこともない未公開企業の投資であれば、なるほどプロのキャピタリストでさえ10社に投資して2~3社公開すれば御の字とか言われるところですが、テレビCMなどでも有名な民生品企業の未公開株であれば、多くの皆様が是非買いたい!としてお金を出してしまうようです。

さて、この手の有名未公開株を買うときの最大の注意点は、譲渡制限の有無となります。
一般的に、公開していない限り株式の譲渡はその会社の取締役会の承認を得られなければ名義書換がなされません。すなわち購入したとしても、発行会社から株主と認めてもらえないわけです。
もちろん、発行会社に名義書換請求を行うことで、承認されるかも知れませんが、多くの会社はあらかじめ経営が認識していない株主の参入を認めてくれません。(そのための譲渡制限ですからね。)
大抵は役員の親族の相続とか、よほどの事情がない限り、あなたの購入した株が取締役会で承認されることは無いと理解すべきでしょう。

最近の新規公開株はまるで宝くじ状態。3倍~5倍があたりまえになってます。100万が一夜で500万。
なるほど新規公開株を貰っておけば、間違いなく儲けられますね。
ここに目をつけた金融ブローカーが何にも知らない個人の資産家に対して「近々株式公開する会社があるんだけど一口買わないか?」って近づいてくるわけです。
まあ、私たちキャピタリストも「あー1~2年で公開する会社ないかな・・・」って探してるわけですが、ブローカーはキャピタリストではなく、個人投資家に話を持っていきます。
なぜならば、個人投資家には未公開株に関する基礎的な知識が無いからなんですね。
それに、個人投資家さんはそういったうまい話を「自分の力で引っ張ったネタだ!」って信じ込んじゃいます。
ブローカーも実に巧みなもので、「ココだけの話ですが、あなたを信用してご紹介しますよ・・」ってくるわけですね。

以前に私の知人が上記のような儲け話を聞いたらしく、知人を含めた4名程度が200万づつ投資しようと検討しておりました。
彼らはここ1年でそこそこの資産を作った株式投資家さんらしく、200万円程度は勉強の為に惜しくもないとかおっしゃるのでした。
私もその席に同席させてもらい、その会社に投資を行うべきかどうかをキャピタリストの立場からいろいろ意見を申し上げたのです。たとえば・・・
 ・その事業のマーケット分析
 ・その事業の同業他社の分析
 ・その会社の事業計画の確度
 ・その会社の試算表の分析
 ・その会社の(今回投資する)株価の分析
 ・その他、投資に関わる契約書、投資スキーム、投資後の管理方法・・・
など、ある程度事前に考慮するリスクと、それに対して期待できるリターンをかいつまんで説明しました。
個人的にはとても高いバリュエーション(投資する株価が高すぎる!)ということを理解して欲しかったのです。
ところが、ひととおり説明したあとに質問を受付けたところ唯一いただいた質問が「その会社は分割をしますか?」。
なるほど、当時(1年前)は分割をすれば株価暴騰という図式でしたね。それで彼は公開直後(直前を含めてかな?)に分割をするならば今の内に買っておきたいと考えていた様子。もういまから公開したつもりでいるのが怖い。

以上のお話は別に笑い話でもなく、おそらく今日の株式市場にも通じるのかもしれません。
会社のバランスシートやビジネスモデルよりも、分割のニュースやマーケットメーク銘柄の情報の方が大事なのでしょう。
しかし未公開株への投資については、公開しなかったら1000分割しようが、株式の価値は1円も値上がりしません。
公開していない会社の株式は大抵の場合、誰も買ってくれないのです。(発行済みの30%近くあれば話は別ですが・・)