八重山の伝統と戦争 | 田口裕史のブログ

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 石垣島宮良地区で、この地域に古くから伝わっていた神歌「牧祝」アヨーが60数年ぶりに再現されたという(八重山毎日新聞2月23日付記事 )。沖縄県文化振興会の古謡保存記録事業の一環だそうだ。
 記事によると、この神歌は、「牛馬の繁殖や生産の向上を願い歌う内容」であり、戦時中に牛馬が徴集されてしまったために歌われなくなり、途絶えていたものだという。八重山毎日新聞は、同じ日に「伝統文化奪った戦争 」という記事も掲載している。

 戦時の文化財保護については、「武力紛争の際の文化財の保護のための条約」がこれを定めているが、条約の対象とならないレベルの、日々の生活に根ざした文化もまた、戦争によって暴力的に破壊されてしまうわけだ。それはまさに、戦争が、人びとの日常生活そのものを破壊するからに他ならないだろう。牛馬が奪われ、物が奪われ、人の生命が奪われ、当たり前の生活が壊されていく。
 「戦時文化財保護条約」の重要性は言うまでもないが、それは特定の「文化財」を守るものにすぎない。人びとの日常に根ざした文化や生活を、戦争・紛争という暴力から守ることはできないのだ。八重山毎日新聞の記事は、そのことを再確認させてくれた。

 武力の行使は、自然環境破壊にも結びつく。かつて、WWF(財団法人 世界自然保護基金)ジャパン職員有志が、イラク戦争に際し「最大の自然環境破壊は戦争である―戦争の即時停止を求める 」という意見書を発表したことがある(2003年4月3日)。武力行使は「平和」の構築を主張しつつ実行されるものだが、生活や、生活の基盤となる環境を破壊する行いが、人びとの安全や安心をつくるものになるとは思えない。

参考リンク:
1)先日の報道によれば、日本政府・与党は「武力紛争の際の文化財の保護のための条約」の承認案と関連国内法案を今国会に提出することを決めたらしい(産経新聞07年2月21日付記事 )。
2)可児英里子「「武力紛争の際の文化財の保護のための条約(1954年ハーグ条約)」の考察―1999年第二議定書作成の経緯 」pdf文書(外務省調査月報2002年度No.3。リンク先は外務省
3)七海由美子(在ユネスコ日本政府代表部)「ハーグ条約について―ユネスコの文化財保護関連条約の出発点 」pdf文書(ユネスコ・アジア文化センターのニュース「ACCU news」351号2005年9月号。リンク先はユネスコ・アジア文化センター )。
4)武力紛争の際の文化財保護のための条約Convention for the Protection of Cultural Property in the Event of ArmedConflict (英文。pdf文書はこちら 。いずれもリンク先はUNESCO )→国会図書館法令議会資料室のデータ
・武力紛争の際の文化財保護のための議定書Protocol for the Protection of Cultural Property in the Event of Armed Conflict (英文。pdf文書はこちら 。リンク先はUNESCO )→国会図書館法令議会資料室のデータ
・同第二議定書Second Protocol to the Hague Convention of 1954 for the Protection of CulturalProperty in the Event of Armed Conflict (英文。pdf文書はこちら 。リンク先はUNESCO国会図書館法令議会資料室のデータ