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「美空さん、これは見えますか?」
「はい、はっきりと見えます」
「経過は良好のようですね。今日から眼鏡なしで、外を歩いても構いませんよ」
「本当ですか!ありがとうございます、先生!」
「よく頑張ったね。美空さん」
「いえ、みんなの・・・おかげですよ」
「良かったわね。美空さん」
「看護師さん、本当にありがとうございます・・・」
「美空さんのすごさを見れてうれしかったわ」
「そんな・・・私は、ただ、必死に毎日を過ごしただけだもん」
「・・うんうん(それが私にはうらやましかったわ)」
「あっ、それから美空さん、はれて君も目が見えるようになって、幸いにも瞳をいただいたおじさんの奥さんの家にお世話になれると聞きました。そこで、いよいよ明日、退院日にします。本当にいままでよくがんばったね。おめでとう」
「先生!ありがとうございます・・・ですが、なんだか複雑です」
「何言ってるの、美空さん。退院なんだから、喜ばないとね!」
「そう、そうですよね・・・看護師さん。皆さんと別れるのはさみしいけれど・・・」
「その気持ちだけで十分ですよ。でも、本当に神様っているんですね!瞳の移植手術の成功だけでなく、瞳の持ち主だったおじさんの奥さんとひきあわせてくれて、こういうかたちになるなんて、思いもしませんでしたね」
「・・・そうですね・そういった意味ではできすぎですよね。・・・先生、ちょっと外の空気吸ってきてもいいですか?久しぶりに空も見たいですし」
「構いませんよ」
私は診察室を後にした。
(神様・・・か。いたら、お父さん、お母さん、そしておじさんを助けてくれただろうなあ・・・。でも、いたとしても、そんなに助けてばかりいたら、世の中大変なことになって・・・あれ?こんなこと前にも?これってデジャヴ?まあ、いいか。まずは、変わらないなあ・・・空。ずいぶん久しぶりなのに、青く、澄んでいる。この感動を再び与えてくれたのはおじさん。お礼を言わなくっちゃ。そうと決まればあの場所しかない)
私は、ビオトープに向かって歩き出した。
でも、何か、胸にぽっかり穴が開いた感じがする。何か・・・足りない。
「美空さーん」
私が待っていた声だった。遠く、後ろから聞こえてくる。
「袴田、今ごろになって・・・今まで・・・何やってたのよ・・」
流れ落ちる涙は、今度は正真正銘、自分の涙だった。うれし涙だった。
足を止めて振り返れば、そこに・・・・・
「本当に、袴田は・・・!・・・・え!?・・・・し・・・紫獲!?」
不定期小説5 八百万分の一の神 終幕