「八百万分の一の神」最終幕58 | Ash(アシュ)Hのブログ

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「おじさん・・毎日、ほとんど毎日、奥さんやお子さんたちに『ごめんなさい』って・・確か、私がおじさんにすがって泣いた日も・・・ひょっとして、おじさんだって、私に何か言いたいことあったんじゃないのかな・・・なんか、つらい・・・そんなこと知らずに私、おじさんに甘えて・・・」

 

 さらに美空は読み続けた・・・。

 

「途中からコメントも多くなってる・・・すごい数・・おじさんのことだから全員に答えてたんだろうなあ・・・でも、本当にあやまって、あやまって、おじさん・・・あれ?やっぱり、そうだよね・・・同じような『ウタ』が繰り返されてる・・・コメントでも指摘されて・・・それだけじゃない!字のうち間違いも多くなって・・・・・!あっ!病気が進行したからだね・・・。でも、それでも、まだ、まだ、あやまりつづけて・・・。

 おじさん・・・私、涙でよく見えないよ。お父さん、お母さんが死んじゃって、そしておじさんだって亡くなって、涙はなくなったかと思ったけど、悲しみの涙じゃなく、なんだろう・・・切ないよ・・・おじさん・・・帰りたいよね家に・・・早く帰りたくて、あやまり続けたんだもんね・・・・。

コメントもだんだん・・・・・

最後までコメントを書いている人がいる・・・『珍』?そう言えば、この人は最初の方からずっとコメントをしてる・・・最後も・・・

この人・・・!?

袴田!!このケイタイは私が持っているべきではないわ!」

 

私は、ケイタイを開いて、ただ泣き続けていた・・・・。

 

「おじさん・・・」

 

コン、コン。

 

「美空さん、入りますよ・・・!?どうしたの!どこか痛むの?それとも見えなくなってしまったの?」

 

「・・・ううん・・・違うの、看護師さん、このケイタイの中に確かにおじさんがいるの・・・『こんなに小さくなっちゃった』って・・・それだけでもつらいことかもしれないけどね・・・それだけじゃないの・・・」

「・・・違うの?」

「この中にはおじさんが家族を思う気持ちがいっぱいつまってて・・・すごく、切なくて・・・両親とおじさんを亡くして、これ以上、涙なんかでないと思っていたのに、後から後から出てくるの・・・。きっと、私の涙だけじゃないの・・・おじさんの瞳からも出てくる涙・・・だから・・・私には止められないよ・・・」

 

「美空さん・・・」

 

「どうしたのかね?美空さん」

 

「先生!」

「すいません・・私が携帯を見てもいいと・・・」

「ある程度はわかっていましたよ。だって、美空さん、ずっとその携帯を握りしめてましたからね。それにこんな短時間じゃ、なんともないはずですよ」

「本当にすいませんでした」

 

「あの、先生・・」

「なんですか?美空さん」

「私、外出したいんです!」

 

「それは今は無理です。外の日差しが今の君の目には強すぎます。しかも、残念なことに、おじさんの目はもともと、日差しには強い方ではないのです。それに、一体どこへ行くつもりなんですか!?」

 

「このケイタイ・・・おじさんが家に帰りたがっているんです」

「もし、仮にそうだとしても、誰も彼の家なんて知らないでしょう?」

 

「・・・私が、私がお連れします・・」

「え?看護師さん?」

「君は自分が何を言っているのかわかっているんですか?もし、美空さんの目に何かあったら、今度はこの間のようにあやまるだけじゃすまないんだよ!」

 

「・・・・・・・」

「・・・・看護師さん?・・・私はうれしい・・」

「美空さん!何を言うんですか!」

「先生・・・私は何も、責任を看護師さんだけに押し付けるつもりなんてありません。それにこれは私が言い出したことだもん。目に悪いって言うなら・・・いざと言うときには、私は、目を閉じて杖を使ってでも行けます!いや、行きます!だから・・・お願いします!すぐにでも行かせてください!」

 

「そうか・・・君には・・いや、そうまでして行きたいのですね・・・。どうやらうちの看護師も『その目』にやられたらしい。その目で言われたら、断れないな・・・。ですが、少しだけ待ってください」そう言うと、主治医は病室を後にした。

 

「看護師さん、ありがとうございます。でも、何でおじさんの家を?」

「あっ・・・うん、昔ね・・ちょっと、知り合いだったの、家も・・近かったからね」

「そうだったんだ・・」

「はい(ごめんなさい、美空さん。また、ウソを・・)」

 

 

「美空さん!」

「先生・・」

「これだけは守ってください。目が見えなかったときに使っていた眼鏡、サングラスを必ず、車の中でもかけておくこと。それからこれです」

 

「これは・・・日傘?」

「そうです。車から降りて歩くときは必ずさしてください。絶対ですからね」

「わかりました。ありがとうございます、先生」

 

 そして、私は看護師さんと二人で車に乗っておじさんの家に向かった。