ガチャン
「あっ、誰ですか?」
「ごめんなさい、美空さん。私です。戻ってきました」
「看護師さんか。お帰りなさい」
「あっ、ただいま」
「あれ?なんだかうれしそうですね!いいことありました?」
「え?そうかな・・?」
「はい。なんだか声の調子が違いますよ!あ!さっきの携帯に関係があるんでしょ?」
「!?・・・そんなことないですよ(先生の言ったとおり、鋭い子かも)」
「今の間がますます怪しいですよ!わかった!デートの誘いが入ったとか?」
「(その辺はまだ子どもか)そんなんじゃありませんよ」
「おかしいなあ、確かに看護師さんの声のトーンが高かったのに・・・。ほら、私、目が見えなくなって長いじゃないですか。最初は誰とも口をききたくなくて。でも、そんなことではだめだと気づかされて、それはいいんだけど、次に怖かったのが・・・」
「感情・・・ですか?」
「それなんです。目が見えれば、顔を見て顔の表情で判断できますが、目が見えない私にとってはそれができない。だから、声のトーンで判断と言うか、聞き分けると言うか・・・」
「美空さん、当たってますよ。残念ながら、デートの相手はもういないんですけど。先ほど、先生に少し心を救われたので、きっとうれしかったのだと思います」
「先生もあなただったから救ったのかもしれないですよ?」
「え?なぜ?」
「今まで私にしてきてくれたことを考えれば、わかります。常に私のことを一番に考えてくれたもんね!きっと心もきれいだし、顔だってきれいなんだろうなあ」
「そんなことありませんよ・・さあ、美空さんは早くよくなるように、まずはゆっくりしましょう」
「はい。・・・看護師さん・・・ありがとう・・あれ?」
美空の手に、温かいしずくが落ちた。
「それはこちらのせりふよ・・・」
がまんしていた涙があふれ、零れ落ちた。
「・・・看護師さん、やっぱり私、疲れてるみたい。だから、少し休みますね・・・」
「そ、そうですね。全身麻酔の後ですからね。休んだほうが早く回復しますからそうしましょう」
「あっ、袴田が来たら・・・袴田が来ても起こさないでくださいね!心配させてやるんだから、しばらく、口きいてやらないんだから」
「はい、はい。わかりましたよ」
「本当にわかりましたか?」
「ええ、十分に伝わりましたよ」
「なんだか子ども扱いされたような気分なんですけど・・・」
「そんなことないですよ(ありがとう、美空さん)。私は、定期的に美空さんの様子を見に来ますし、体の変化はモニターでわかるようになってますから安心して寝てくださいね」
「ありがとうございます」
「それでは・・」