「八百万分の一の神」最終幕53 | Ash(アシュ)Hのブログ

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ガチャン

 

「あっ、誰ですか?」

「ごめんなさい、美空さん。私です。戻ってきました」

「看護師さんか。お帰りなさい」

「あっ、ただいま」

「あれ?なんだかうれしそうですね!いいことありました?」

「え?そうかな・・?」

「はい。なんだか声の調子が違いますよ!あ!さっきの携帯に関係があるんでしょ?」

「!?・・・そんなことないですよ(先生の言ったとおり、鋭い子かも)」

「今の間がますます怪しいですよ!わかった!デートの誘いが入ったとか?」

「(その辺はまだ子どもか)そんなんじゃありませんよ」

「おかしいなあ、確かに看護師さんの声のトーンが高かったのに・・・。ほら、私、目が見えなくなって長いじゃないですか。最初は誰とも口をききたくなくて。でも、そんなことではだめだと気づかされて、それはいいんだけど、次に怖かったのが・・・」

「感情・・・ですか?」

「それなんです。目が見えれば、顔を見て顔の表情で判断できますが、目が見えない私にとってはそれができない。だから、声のトーンで判断と言うか、聞き分けると言うか・・・」

「美空さん、当たってますよ。残念ながら、デートの相手はもういないんですけど。先ほど、先生に少し心を救われたので、きっとうれしかったのだと思います」

「先生もあなただったから救ったのかもしれないですよ?」

 

「え?なぜ?」

 

「今まで私にしてきてくれたことを考えれば、わかります。常に私のことを一番に考えてくれたもんね!きっと心もきれいだし、顔だってきれいなんだろうなあ」

「そんなことありませんよ・・さあ、美空さんは早くよくなるように、まずはゆっくりしましょう」

「はい。・・・看護師さん・・・ありがとう・・あれ?」

 

 美空の手に、温かいしずくが落ちた。

 

「それはこちらのせりふよ・・・」

 

 がまんしていた涙があふれ、零れ落ちた。

 

「・・・看護師さん、やっぱり私、疲れてるみたい。だから、少し休みますね・・・」

「そ、そうですね。全身麻酔の後ですからね。休んだほうが早く回復しますからそうしましょう」

「あっ、袴田が来たら・・・袴田が来ても起こさないでくださいね!心配させてやるんだから、しばらく、口きいてやらないんだから」

「はい、はい。わかりましたよ」

「本当にわかりましたか?」

「ええ、十分に伝わりましたよ」

「なんだか子ども扱いされたような気分なんですけど・・・」

「そんなことないですよ(ありがとう、美空さん)。私は、定期的に美空さんの様子を見に来ますし、体の変化はモニターでわかるようになってますから安心して寝てくださいね」

「ありがとうございます」

「それでは・・」