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息子のイヤイヤ期。
このころは、昼寝させようと必死になり
よく外に出かけていて
特にお気に入りだったのが
羽田空港の展望デッキでした。
飛行機が飛び立つ瞬間を見るのが
ワクワクするのと、
マンションの密集する地区に住んでいたので
空港は空が広く見えて、
開放感を味わうのには、
ちょうどよかったのです。
息子も、人のいないところを自由に
歩いたりしていて、
親子で楽しむことが出来ました。
息子といつもマンションの一室に2人だったので、
空港の展望デッキのような
開放感を感じられる場所は、
普段の閉塞感や孤独感から
解放される貴重なひとときになっていました。
もともと田舎で生まれ育って、
都会のキラキラの風景に憧れがあったものの、
実際に住んでみて
見渡す限りマンションや高層ビルなどが見える風景には
だんだんと、閉塞感を感じて
つらくなっていきました。
独身の時には、
ワクワクしていたものが
子育て中には、
とてもつらく感じるようになってしまいました。
☆☆☆☆☆
なぜ「同じ場所」なのに、こんなにも感じ方が変わるのか
独身のころはワクワクしていたのに、子育て中は閉塞感でつらくなった。
この「感じ方の変化」を、自分の気持ちの弱さや、
母親失格のサインだと思ってきた人は多い。
でも、そうじゃない。
あなたの神経系が、正直に反応していただけ。
☆HSS型HSPが「開放感」を強く必要とする理由
HSS型HSPには、2つの相反する特性が共存している。
ひとつは、刺激を強く求める(High Sensation Seeking)こと。
もうひとつは、その刺激を深く処理しすぎてしまう(Highly Sensitive Person)こと。
飛行機が飛び立つ瞬間のダイナミックな映像、広い空、開けた風景
こういった「身体ごと動かされるような感覚」は、
HSS型HSPの刺激希求をちょうどよく満たしてくれる。
マンションが密集した風景の中では得られない、あの解放感。
それは単なる「好み」の話ではなく、
神経系レベルで必要としている刺激量の話だった。
☆育児中に「つらい」に変わったのは、神経系の余裕が変わったから
ポリヴェーガル理論という考え方がある。
人の神経系には、大きく3つの状態があるという理論だ。
- 安全・安心の状態(腹側迷走神経が働いている) → 穏やかで、人とつながれて、笑える状態
- 戦う・逃げるの状態(交感神経が優位) → ドキドキ、イライラ、じっとしていられない状態
- シャットダウンの状態(背側迷走神経が優位) → 無気力、感覚が鈍くなる、ぼーっとする状態
HSS型HSPは、穏やかすぎる日常だけでは刺激不足で
「戦う・逃げる」方向へじわじわとずれていきやすい。
だからこそ、空港の展望デッキのような「ちょうどいい非日常」が、
安全なまま神経系をリセットしてくれていた。
でも、ワンオペ育児という状況は、
神経系を慢性的に「戦う・逃げる」モードに置き続ける。
余裕がなくなった状態では、
同じ「刺激」が「癒し」ではなく「負荷」として処理されてしまう。
独身のころと「同じ場所」なのに感じ方が変わったのは、
あなたが変わったのではなく、神経系が置かれた文脈が変わったから。
☆アダルトチルドレンは「孤独+閉塞」の組み合わせが特につらい
もうひとつ、見落とせない視点がある。
アダルトチルドレンとして育った人は、
子ども時代に「安全ではない場所に閉じ込められた」体験を、
身体の奥深くに刻んでいることが多い。
逃げられない、声を上げられない、ひとりで耐えるしかない。
そういった記憶は、頭で忘れても、神経系には残り続ける。
これを「身体化記憶(ソマティックメモリ)」と呼ぶこともある。
イヤイヤ期の子どもと、マンションの一室に2人きり。
その状況は、論理的には「子育て中の日常」であっても、
神経系の古い記憶が「あのころの閉じ込められた感覚」と重なってしまうことがある。
だから、ただの育児疲れ以上に、
息がつまるような感覚が来やすかった。
あなたの感じた閉塞感は、過剰反応なんかじゃない。
ちゃんと理由のある、神経系の反応だった。
☆空港に行き続けたこと、それ自体がすでに「自己調整」だった
今になって思うと、
羽田空港の展望デッキに通い続けていたのは、
ただの気分転換じゃなかった。
神経系が「このままじゃまずい」と感知して、
ちゃんと「安全に刺激を補給できる場所」を直感的に選び取っていた。
心理学では、
自分の感情や神経系の状態をうまく整えることを
「自己調整(セルフレギュレーション)」と呼ぶ。
難しい言葉だけど、
要するに「自分をなだめて、また動けるようにすること」。
誰かに教わったわけでもなく、
正解を知っていたわけでもなく、
それでも、あなたはあのころ、
自分と息子のために、ちゃんと動いていた。
それでよかった。 あなたは、あのころすでに、自分を助けていた。
頭で考えるより先に、身体が動いていた。
それが、あなたの神経系の底力だった。
☆☆☆☆☆
つづく
