「流通雑感 臨時号NO.21」2025年 12月20日
「流通雑感 臨時号」は、住谷ゼミのOBOGの皆さんに読んでいただこうと思って発行するものです。
*現在、千葉商科大学のゼミのOBOGのグループLINEと東洋大学のゼミのOBOGのグループLINEが動いていますので、このブログをここに書くのは最後になります。ゼミの卒業生はグループLINEに入ってください。そこには毎月、流通雑感を公開しています。
《近況》
*妻が白内障の手術を受け、現在は眼鏡なし生活をしています。私も白内障の手術をしようと眼科にいったのですが、もう少し白内障の症状が出てからにした方が良いと判断され、手術は数年先のことになりました。
*それで眼鏡のレンズ交換をしようということになったのですが、それがなかなかなじめません。もう二度レンズ交換しました。目に眼鏡がなじむといいのですが。
*今年も、もうすぐ終わりですね。時節柄、ご自愛の上、良き新年をお迎えになられますことを祈念申し上げております。
1,社会・消費者について
(1) エッセンシャル職、人材難
(2) 都市部でもエッセンシャル職、高齢化
(3) 公営住宅に大学生が住む
(4) K字経済
(5) 大学の生成AI活用6割
2,小売業について
(1)ツルハとウエルシアが経営統合
(2)ファミマ、加盟店の損益を把握して指導
(3)バロー、横浜市に首都圏1号店
(4)セブンイレブン、できたて弁当の実験始める
(5)カインズ、無人店舗の実験始める
(6)イオンが描くライフストア
3,消費財メーカーについて
(1)アサヒビール、アフリカに本格進出
4,その他
(1)アメリカでデータセンター建設に住民反発
(2)あえて飲まない・・・ソバ―キュリアス
1,社会・消費者について
(1)エッセンシャル職、人材難
日常生活に欠かせない現場の担い手を「エッセンシャルワーカー」と呼ぶのだそうです。具体的には、公共交通(運転手)、介護、建設、飲食・宿泊、運輸などです。2040年には、エッセンシャル職の不足は約500万人迫ると予想されています。
なぜ、エッセンシャル職への転職が少ないのかと言われれば「相対的な待遇の低さ」にあると言われています。
そのような状況にあるため、東京都ではバスの運転手不足のため、路線廃止や減便が相次いています。タクシーの運転手も不足していて、困るときもありますね。また、西東京都では、小中学校2校で給食を出せなくなったことがありました。どうやら発注価格を上げられない自治体。事業者は人出確保難だったいう双方の事情があったようです。
バスの運転手不足、介護職になりたがらない状況を解決するのは、どうやら「自動運転バス」の導入、介護職に人を集めるためには、介護ロボットの導入、デジタル機器の導入などが必要のようです。
すでに私が住んでいる地域では「タクシーの予約」ができません。なぜできないのかと聞くと明日にならないと何台タクシーが稼働してるかわからないからだと言われてました。日本も自動運転タクシーの導入を急ぐ必要があるのかもしれません。ファミリーレストランでは配膳ロボットが活躍していますが、これからはロボットを導入しながら生産性を高めて、従業員の給与を上げていくという方向にいかないと、人材確保はますます難しくなります。
(2)都市部でもエッセンシャル職、高齢化
都市部でもエッセンシャル職の人が高齢化してきているので、生活インフラの維持が危うくなってきている状況にあります。バスの運転手不足、電気設備の管理要員が不足(9%)しています。家庭ゴミの収集要員も毎年1~2割が離職しています。埼玉県足利市では水道の検針を利用者が自ら行っています。深刻な状況になってきています。バスの運転手が不足しているために、路線を廃止したり、電気設備の管理要員の不足については40年には不足率が46%に足する見込みで、そうなると病院などで大規模な停電がおきかねないのです。ゴミの収集要員の不足は、ごみを収集する場所の集約化につながります。
高齢者が多くなってきている都会でもエッセンシャル職の方々の減少は、生活インフラを危うくしています。そのため、AIに仕事を奪われていくホワイトカラーの方々のエッセンシャル職への転職が近いうちに始まるのではないかと予想されています。
(3)公営住宅に大学生が住む
ほとんどの公営住宅が古く、空き室も多くなってきています。同時に、高齢者の割合が5割以上となっています。そのため、公営住宅の清掃、草刈り、自治会の祭りの準備・後片付けなどに問題が生じていたりしています。
そこで各公営住宅は、家賃を安くして大学生に住んでもらう取り組みをしてきています。
・桐ヶ丘団地(東京・北区)・・・大学生が何人か入居し、火の用心パトロール、祭りの設営などで自治会を支えています・
・県営笹山団地(神奈川県)・・・横浜国立大学の学生に家賃5000円で貸し出しています。学生は、自治会の祭りや餅つきの手伝い、高齢者向けスマホ教室にも取り組んでいます。
2025年10月時点で14大学76人の大学生が公営住宅に住んでいます。
個人的には、それぞれの大学が公営住宅と協定を結び、安い家賃で学生を入居させ、団地の催事などに積極的に参加してもらって、団地の活性化に貢献してくれることを望んでいます。十分に実現性があります。
(4)K字経済
支出を増やす高所得者と、節約志向を強める中所得者という「K字型経済」の進行があると言われています。消費の2極化と類似しているのですが、消費の2極化は、同じ人なのにある種の商品の買い物の際は、節約志向なのに、他の種類の買い物については高級志向であることを意味していたと思います。
現在の「K字型経済」とか「K字経済」と言うときには、所得や資産が非常に多い人たちがいて、彼らは高価格帯の商品を購入するが、低所得者はすべての商品について低価格志向だということを意味しているようです。所得や資産の格差がますます拡大しています。どの国も同じです。
先日、イタリアのベネチアの最も古いカフェが紹介されていました。カフェオレとテラミスで5000円以上していました。欧米のインフレは本当に凄いです。それで所得格差が拡大しているのですから、多くの人は経済的に大変でしょう。所得格差が拡大しているのは日本も同じですが、物価が今のところ安いので助かっているのではないでしょうか。
(5)大学の生成AI活用6割
日本経済新聞社が全国の大学の学長にアンケートを実施ました。回答したのは国公立私立合わせて532校でした。既にAIを活用している大学は316校(59%)、41%は活用していませんでした。
活用している大学は、「授業に必要な情報の収集」(225校)、「問題や教材の作成」、「授業中のブレーンストーミングや論点の洗い出し」「学生によるリポートや論文などの作成」などに活用しています。
活用していない大学は、「リポートや論文などに不正利用される」「学生の思考力や創造性が損なわれる」などを懸念しているようです。
これからは優秀な学生ほどAIを使いこなしていくように思います。AIを使うのを前提に教育したり、課題を出したり、試験を行っていく必要があると思います。どうやったらAIを上手に使いこなせるかといった講義科目もあっても良いかもしれません。
ビジネスの世界ではAIをうまく使いこなせる人材を確保しようとしているのですか、大学もそれに対応するべきです。
2,小売業について
(1)ツルハとウエルシアが経営統合
ツルハHDは、ウエルシアHDを2月1日、経営統合しました。ウエルシアはツルハ傘下に入ったのです。ただ、今後、イオンがツルハHDへTOBを実施し、持ち分比率を50.9%まで高めて、ツルハHDを連結子会社にします。
両社の経営統合で、国内店舗数は約5600店になります。国内のドラッグストアの約2割を占めます。売上高は単純合計して約2兆3000億円となり、3位のマツキヨココカラ&カンパニーの2倍超になります。この売上高は、世界のドラッグストアで6位に位置するようです。
これだけの規模になれば価格交渉を有利に進める事が出来るでしょう。また、来春には医薬品や日用品の新PB「プラスワン」が誕生します。さらにイオンの協力があれば、食品や日用品の品揃えもできますから、『ドラッグストア』から『ライフストア』という標語も理解できるような気がします。
そして、海外にも進出します。すでにタイ、ベトナム、シンガポールに進出していますが、これからはマレーシアにも進出する予定です。これからどのように成長していくのか、夢のある企業だと思います。
(2)ファミマ、加盟店の損益を把握して指導
ファミマは、約20年ぶりに会計システムを刷新。スーパーバイザーが加盟店の損益計算書を把握できるようにしました。売上げ高をあげればいいという方針からの大転換です。これからは、加盟店の利益をいかにして増やすかを指導していくことになります。スーパーバイザーの力量が問われることにもなります。
現在、人件費の上昇や水道光熱費の高騰などコスト増がコンビニ経営を圧迫していますので、これらのコストをいかにして適正化していくべきかを指導していくことになるのでしょうが、上手な方法があるものなのか?スーパーバイザーも大変になりますね。
(3)バロー、横浜市に首都圏1号店
現在、勢いのあるスーパーと言えば、オーケー、ロピア、トライアル、ヤオコーなどです。そのようなスーパーがひしめく関東に中部地区の有力小売業のバローが横浜に関東1号店をオープンしました。バローにはどんな特徴がるのでしょうか。
➀「ディスティネーション・ストア戦略」独自のヒット商品を目当てに集客するという考え方です。一般的なスーパーの商圏は3~5キロとされていますが、バローは10~20キロまでが商圏と言っています。果たして首都圏でそのようなことが成立するでしょうか。
➁独自商品・・・その独自商品にはどんなものがあるのでしょうか。「魚屋の寿司」は大きいマグロのネタが特徴です。「八百屋の生フルーツデザート」フルーツを使った格安デザートです。
➂バローでは、短期間で検証や改善を繰り返す「アジャイル開発」的に商品開発しています。そのようなやり方でヒット商品を開発しているようです。なお、バローにはグループ内に製造、調味料メーカー、畜産や水産加工を手掛ける会社などを持っているのが特徴です。
バローは、25年3月期に8544億円の売上高でしたが、28年3月期には1兆円を超えるという目標を持っています。首都圏でもいままでのような成長ができるか注目されています。
(4)セブンイレブン、できたて弁当の実験始める
セブンイレブンは、川越市の直営店2店舗で「できたて弁当」の実験を始めました。かつ弁当(税別852円)、から揚げ弁当(税別704円)、てんぷら弁当(税別990円)、うなぎかば焼き弁当(税別1980円)の4品です。
この弁当、この値段では、成功するとは思えません。高すぎます。
この他にも2024年には「お店で揚げたドーナッツ」を売り出し、25年3月からはメロンパン、ピザ、クッキーなどの「セブンカフェ べーカリー」の導入店舗を増やしているそうです。店内調理マシンを使ったラーメンの販売も埼玉県の約40店舗で始めたそうです。
どうにかして集客力を上げ、店の利益も増やすことができればという想いでいろいろとやっているのはわかるのですが、何をやっているのか何をやりたいのか?はっきりしませんね。当分、セブンの迷走は続くのではないでしょうか?
(5)カインズ、無人店舗の実験始める
ホームセンター大手のカインズが無人店舗の実験を始めます。小型無人店は「カインズ モバイルストア」といいます。売り場面積34㎡で日用雑貨、ペット用品など1200品目を品揃えしています。来店客は、あらかじめLINE 上でカインズを友達登録しておきます。そして、スマホのQRコードを入口の読み取り機にタッチすると入店できます。顧客が商品を手に取ると自動的に検知します。退店すると購入金額をアプリやカードから自動引き落としします。
まずは埼玉県の吉川市の「カインズ 吉川南美店」に併設して開業します。これから営業して、顧客の声を反映して修正していくのでしょう。果たして、成長できるかどうか、今後の展開が楽しみです。
なお、アメリカでは無人店はどんどん少なくなっています。万引きが横行しているからです。
(6)イオンが描くライフストア
イオンはドラッグストアという業態を超えて食品や日用品など生活全般を扱う「ライフストア」への転換を目指しています。
そのために、品揃えについては、イオンの生鮮品の陳列ノウハウを活用して、人手を増やさずに食品売り場を運営できるようにします。また、トップバリュの品揃えも充実させます。
そして、約1億人のツルハとウエルシアの顧客データを3年以内に一元化する予定です。その上で、顧客一人一人の購買データから、アプリなどを通じてその人に最適な商品広告や提案を配信しようと考えています。処方箋の履歴を分析した結果も踏まえれば、生活の中で健康に気を付けるべきポイントの提案や、日々の食事のアドバイスなどもできるようになると考えているようです。
ツルハとウエルシアが統合して、ライフストアを目指すには少なくても3年以上かかるわけです。イオンは、さらに東南アジアにも目が向いています。ツルハとウエルシアの海外店舗は100店未満ですが、東南アジアのドラッグチェーンの買収も視野に入っていて、東南アジアでの店舗数を増やし、ライフストアという業態を東南アジアでも展開しようとしています。
将来構想は描かれています。あとは実行だけです。
3,消費財メーカーについて
(1)アサヒビール、アフリカに本格進出
アサヒビールは、2016年以降のグローバル化によって、24年12月期には、欧州とオセアニア事業で全社売上高の5割、事業利益の7割を稼いでいます。
今回は、イギリスの蒸留大手のディアジオから東アフリカ事業を買収することになりました。買収額は約4654億円。ケニア、ウガンダ、タンザニア3カ国のビールや蒸留酒事業を取得します。買収の完了は2026年下半期になります。
買収後には、ケニアでビールシェア1位の「セネタ―」、ケニアとウガンダで販売するビールの「タスカ―」、タンザニアのビール「セレンゲティ」を所有し、蒸留酒でもウォッカやジンの「クローム」を所有します。
対象事業の売上高は約1546億円、税引き利益は約400億円です。
アフリカでの事業展開は、アサヒとしては初めてです。これで一層、アサヒビールのグローバル化は進みます。人口が増加していて、アルコール飲料も伸びているアフリカへの本格進出は、アサヒのさらなる成長につながりそうです。
4,その他
(1)アメリカでデータセンター建設に住民反発
アメリカで人工知能(AI)向けデータセンター建設への住民の反対運動が勢いづいています。健康不安や電気代の上昇といった負担ばかりが住民に押し付けられるとの危機感が強いためです。わずか3カ月で3.8兆円分の投資計画が中止に追い込まれたとの試算もあります。
アメリカではデータセンター建設によって、大気汚染による健康被害が懸念されています。もう一つは電気と水の大量使用です。特に電気代の上昇は生活費に直結します。
このような情報をここに書くのは、日本では全く議論されることがない事がアメリカでは大問題になっていることを知っておく必要があると思ったからです。
(2)あえて飲まない・・・ソバ―キュリアス
お酒を飲めるのにあえて飲まないという考え方を「ソバ―キュリアス」と欧米では呼ぶそうです。このような考え方が生まれているのは、「飲酒が健康に与える悪影響や企業のハラスメント対策への意識が高まったこと」が「飲まない」という潮流を高めてきているようです。
低アルコール・ノンアルコール専門のバーのように、お酒を飲む人も飲まない人も楽しめる場がこれから徐々に増えていくのかもしれません。そのうち、飲めるのに飲まない人が「カッコいい」となるのかもしれませんね。
以上