「月刊 流通雑感」NO.227、2023年 8月号
《目次》
1、 社会・消費者動向
(1) 熱波・水害
(2) 気候変動に不安を持たない日本の若者
(3) パリの暴動
(4) 専業主婦世帯29.9%
2、 小売業・卸売業の動向
(1) そごう・西武労組がスト権確立
(2) ツルハに香港系アクティビストが株主提案
(3) セブン・ザ・プライス
(4) デジタルサイネージの可能性
(5) 22年度の日本の小売業売上高ベスト10
(6) 移動スーパーの「とくし丸」1133台に
(7) 無印良品の500円戦略
3、メーカーのチャネル戦略、
(1)ライオンの電動アシストブラシ
(2)資生堂、男性用化粧セミナー始める
4、その他
(1)自販機シェア
(2)日用品メーカー9社と大手卸の物流連合
少し早いかもしれませんが、暑中お見舞い申し上げます。
そのように言いたくなるほどの暑さが連日続いていますね。
私は8月1日・2日と大学にいって、その後、成績を付けると夏休みです。涼しいところに行きたいものです。
皆様、体調に十分に気を付けていただいて、その上で、夏を楽しんでください。
1、 社会・消費者動向
(1)熱波・水害
残念ながら今年の夏も暑い日々が続きそうです。高温・乾燥した気候によって、今年もカナダ東部で大規模な森林火災が発生し、その煙がカナダに近いアメリカ北部から中西部にも広がりました。また、6月にはその煙が大西洋を越えてスペインにまで達しました。
各国の最高気温も異常に高い。メキシコ北西部では6月末に49度を記録。アメリカ南部のテキサス州、中国、インド各地も猛暑や熱波に見舞われています。スペイン南部では6月下旬に最高気温が44度を記録しました。
南米ペルー沖の海水温が上がる「エルニーニョ現象」で、今年の夏は気温がさらに高まる可能性が高くなっています。この傾向は毎年続く可能性が高いのです。涼しいところに避難するか、エアコンを上手に使うしか方法はないのかもしれません。
(2)気候変動に不安を持たない日本の若者
異常気象を招く気候変動に対する強い不安が南半球の新興国を中心とした若者間で広がっています。ただし、日本の若者は気候変動を心配する人の割合が低いようです。
11カ国の16~25歳を対象にした調査で、気候変動の影響を「極度に心配している」「とても心配している」と答えた人の割合は、➀フィリピン:84%、➁インド・ブラジル:67~68%、➂アメリカ・フィンランド:44~47%。そして日本は最低の16%。11カ国の平均は55%。日本の若者は気候変動をそれほど心配していないので、それは精神的には良い事なのですが、その一方で地球温暖化防止に必要な行動をとっていただく必要もあります。
気候変動に対する不安のまん延は、心の病の原因になる可能性が高いからです。それに関する報告が数多く出ています。その点、日本の若者は比較的心配ないようです。
(3)パリの暴動
6月末に起こった警官による少年の射殺事件をめぐる暴動が1週間後の7月4日になってもおさまりません。少年はパリ郊外に住む北アフリカ系移民の出身です。こうした移民らが住む地域(バンリュー(郊外)と呼ばれています)は経済格差に悩まされています。
6月30日の拘束者数は1300人を超えましたが、7月2日の夜は157人の拘束者数でした。パリ郊外の自治体の市長宅襲撃にまで発展。現地メディアによると6月30日夜だけで1350台の自動車が放火され、自治体庁舎や学校を含む266の建物が放火や破壊にあったそうです。
バンリュー地域の貧困率は平均で43%、全国平均の15%を大きく上回っています。アフリカなどからの移民やその子孫が多く暮らし、人種問題と貧困が複雑に絡み合っています。
欧米先進諸国における分断、所得格差、人種問題などがパリで爆発したと言ってよいのではないでしょうか。暴動は治まっても、いつまた不満が爆発するかわかりません。所得格差の拡大は欧米先進諸国の共通の課題です。それに人種問題が絡むと問題はさらに複雑になります。
(4)専業主婦世帯29.9%
労働政策研究・研修機構によると、2022年の日本の世帯は、共働き世帯が1262万世帯(70.1%)で専業主婦世帯が539万世帯(29.9%)となりました。妻が25~34歳の世帯では、専業主婦の世帯の割合は24.6%でした。なお、40年以上前の1980年の時は、専業主婦世帯は6割強でした。専業と共働きの世帯数が逆転したのが1992年です。それ以降、共働き世帯の割合が年々多くなる傾向にあります。
2、小売業・卸売業の動向
(1)そごう・西武労組がスト権確立
セブン・アイが、そごう・西武百貨店を売却しようとしているのですが、なかなか引き渡しになっていません。その間に、23年2月には、そごう・西武の元社員らがそごう・西武の株式売却を差し止める仮処分を東京地裁に申し立てました。これは同地裁が却下したので、原告側は4月に本訴訟に切り換えています。
また、5月にはそごう・西武の元社員がセブン・アイ取締役に対する株主代表訴訟を東京地裁に提起しています。
そして、7月にはそごう・西武労組がストを検討していて、賛否を問う組合員投票を実施しています。そごう・西武の従業員側からすると一連の過程でセブン側との対話の機会が設けられず、雇用維持への不安が払えなかったため組合員投票に踏み切ったようです。
7月25日には投票結果が公表されます。組合側は、セブンに対して「雇用維持と事業継続、セブン側との事前協議を要求していく」ことになるようです。そして、7月25日、組合員の93.9%がスト権確立に賛成しました。スト権は確立しました。これによって、そごう・西武労働組合は、スト権を後ろ盾にして、親会社のセブン&アイHDに対してそごう・西武売却後の事業計画や雇用継続についての情報開示、事前協議や団体交渉を求めていくようです。
百貨店がなくなるかもしれないという地方都市の不安(それに対するセブンの説明はありません)、従業員5000人に対するセブンの説明もありません。
アメリカの投資ファンドの要望があったとはいえ、そごう・西武の売却には、企業の社会的責任や、従業員に対する責任を果たしていないように感じます。セブン側は、「必要なのは地権者である西武HDの承認を得る事だ」との立場をとっています。果たして、どうなりますか?
(2)ツルハに香港系アクティビストが株主提案
ドラッグストア大手の「ツルハ」に対して、香港系アクティビストのオアシス・マネジメントが企業統治を巡り、株主提案を行っていて話題になっています。
ツルハの筆頭株主はイオン(13.35%所持)で、第二株主はオアシス・マネジメント(12.84%所持)です。そのオアシス・マネジメントが企業統治を巡って、いくつかの提案をしています。たとえば、「取締役会長ポストの廃止」「オアシスが推薦する5人の社外取締役の選任」「現在の3人の社外取締役の解任」などです。
いずれの提案もツルハは提案に反対の立場です。果たしてどうなりますやら。また、イオンがどんな行動をとりますやら。興味深く見守りたいと思います。
(3)セブン・ザ・プライス
セブン&アイHDは、低価格PBの「セブン・ザ・プライス」を強化します。現在、80品目あるのですが、これを年度内に倍の160品目にする計画です。他社の低価格PBが売れていますので、セブン&アイもそれに対応しようとしています。
(4)デジタルサイネージの可能性
デジタルサイネージ(電子看板)の可能性が実験によって明らかになりつつあります。ファミリーマートは、4月下旬から「コカ・コーラ」とファミマの「ファミチキ」の販促企画をファミペイでもイベント広告などと店頭のサイネージで実施したところ、実店舗で両商品を同時に購入する併買率が全店ベースで実施前に比べて6~7倍になったそうです。サイネージが設置されているのは約4600店だそうですので、全店ベースで比較と言われるとちょっと変な感じがしますが、デジタルサイネージの可能性が広がってきていると思います。サイネージの広告費が加盟店の収入になるのであれば、加盟店も喜んで協力するのではないでしょう。
(5)22年度の日本の小売業売上高ベスト10
海外(中国)で売上高を伸ばしたローソンが7位に入りました。そして、躍進著しいドラッグストアが一気に2社(マツキヨとツルハ)、ベスト10に入りました。実はウェルシアは1兆円を超えているのですが、イオンの子会社なので参考にしています。これからドラッグストアは数社ベスト10に定着しそうです。
(6)移動スーパーの「とくし丸」1133台に
移動スーパーの「とくし丸」が6月末で1133台に達したそうです。将来的には4000台以上にしたいそうです。
とくし丸は、47都道府県の約140社のスーパーに仕組みを提供し、販売は個人事業主の運転手に任せる手法で都市部にも浸透してきています。
スーパーは1台当たり開業時の50万円の契約料と毎月3万円の月額利用料をとくし丸に払えば、それでよい。運転手は、車両導入費や燃料代を負担し、売上高の2割弱が取り分となります。平均年収は500~550万円です。売れ残った生鮮品はスーパーに返すことができます。スーパーでの価格に販売手数料として10~20円を上乗せして販売し、この上乗せ分をスーパーと運転手で分け合っているという仕組みです。どこまで成長するかはわかりませんが、買い物弱者にとってはありがたい移動スーパーです。
(7)無印良品の500円戦略
良品計画は、23年春夏向け商品から商品戦略を見直しました。「暮らしの基本を支える500円以下の日用品を拡大します」という考えです。そして、洗剤やキッチン用品など、これまであまり扱ってこなかった500円以下の日用品約90品目を新たに投入したのです。狙いは月1回程度だった消費者の来店頻度を週1に増やす事だそうです。
無印良品は、地方や郊外への積極出店で国内の総売り場面積は約58万平方メートルと急増したのです。しかし、1㎡あたりの月平均売上高は4万2800円と20年9月~21年2月期の5万5900円から2割も減っているのです。23年の4~5月は、3月のセールの反動か、客数が2割近く減りました。
このような悪材料を解消するための500円戦略のようですが、「スタンダードプロダクツ」(大創)や「3COINS」など競合がひしめいていますので、狙いどおりにいくかは大いに疑問です。
良品計画は、無印のファンが欲しい物・欲しいサービスを、都市部を中心に供給して成長してきたと思うのですが、急激な郊外への出店増は無印のファンを無視しているのではないかという疑問を個人的には持っています。無印らしさが消えていくように感じています。
3、メーカーのチャネル戦略
(1)ライオンの電動アシストブラシ
ライオンの「電動アシストブラシ」が人気を集めています。5月だけでドラッグ店への販売本数は約4万本。市場シェアは4割に迫ります。
・価格が税抜き1800円と手価格
・「システマ」「クリニカ」など使い慣れた好きなブラシを選べること
・歯ブラシと電動歯ブラシの中間的な商品という訴求が消費者の心を捉えた
中間的な商品ですが、歯を磨きながらも、1分あたり約9000回の音波振動を加えることによって、手磨きと比較して1.4倍の歯垢除去効果が見込まれるそうです。潜在需要の大きい20代、30代の若者層の需要を開拓する方針のようです。「今後は現在の2倍以上となる。月間10万本の販売を目標としたい」と担当者は発言しています。電動ブラシ市場での久々のヒットになりそうです。そのため、今後はドラッグストアだけでなく、コンビニにも配荷しようとしています。
(2)資生堂、男性用化粧セミナー始める
資生堂は、男性向けのメーキャップセミナーを始めました。セミナー名は「メンズビューティアップコース【アドバンス編】」。肌質を改善するスキンケアに焦点を当てた男性向けセミナーの上級編として設けました。受講時間は1時間~1時間半。実地とオンラインのいずれかを選択する事が出来ます。受講可価格は60分で2200円です。すでに千葉県柏市や学校法人から申し込みがあり、出足は好調のようです。これからこのような男性向けの化粧セミナーは増えそうな気がしますね。
4、その他
(1)自販機シェア
飲料総研によると、22年の清涼飲料水の自販機シェアは次の通りでした。
➀コカ・コーラグループ:34.7%
➁サントリー食品:22.1%
➂アサヒ飲料:11.8%
④キリンビバレッジ:9.7%
➄ダイドー:9.3%
⑥伊藤園:7.1%
以上でした。コカ・コーラとサントリーで56.8%のシェアです。22年の稼働台数は215万台だそうですので、コカ・コーラが約75万台、サントリーが約47万台ということになりそうです。一時よりは、自販機の総台数は減っているようです。
(2)日用品メーカー9社と大手卸の物流連合
プラネットが物流の24時間問題に対して動き始めました。ライオン、ユニ・チャーム、エステー、ユニリーバ・ジャパン、小林製薬など9社と大手卸売業のPALTACが物流連合を作りました。さらにP&Gジャパンと卸売業の「あらた」に参加してくれるように呼び掛けているようです。
プラネットが物流基盤システムを作りました。メーカーが商品を発送する際に各トラックが運ぶ商品や荷物量のデータが事前に卸売業に共有されます。そのため、卸の倉庫で段ボール箱を1箱ずつ納品伝票と突き合わせて商品を確認する細かな検品作業が不要になります。プラネットとライオン、PALTACの実証実験では、荷下ろしの作業時間を4割短くできました。そのため、今回の日用品メーカー9社とPALTACとの物流連合ができたわけですが、これにP&Gやあらたが加わればさらに物流効率が上がる可能性が高いと思います。
以上