「流通雑感 臨時号NO.10」2025年 正月20日
「流通雑感 臨時号」は、住谷ゼミのOBOGの皆さんに読んでいただこうと思って発行するものです。
《近況》
*先月、退職後初めて忘年会に参加しました。スポーツ吹き矢の忘年会です。大いに盛り上がり、楽しかったです。
*クリスマスは、沖縄で過ごしました。HIYORIオーシャンリゾート沖縄というホテルが3泊目のホテルだったのですが、すべてスイートルームという素晴らしいホテルで、夕方プールサイドでチェロの生演奏を聞き、その後、コース料理をいただき、妻は翌朝、プールサイドでヨガに参加していました。また、行きたいホテルです。
*1月は旅行にも行かず、のんびりと日々の生活をする予定です。
*今は、家から歩いていけるレストランとかで外食する事があるだけです。今月・来月は初めて隣駅まで出かけて夕食を食べてみたいと思っています(予約のとりにくいフレンチとイタリアンがありますので、行ってみたいと思っています)。まだ、遠くまで出かけて飲むことはありません。私がお酒を飲める量が著しく減ったことと、おそらく帰りが心配になるのだと思います。また、おそらく翌日、どっと疲れが出るので、夕方以降、遠くまで行くのは控えたいという気持ちがまだ強いのだと思います。それでも、暖かくなったら、もう少し離れたところまで夕食にいってみたいと思っています。
1.社会・消費者について
(1)貯蓄率、3年連続低下
(2)経営難の私大に縮小を促す文科省
(3)女性活躍推進法改正か
2,小売業について
(1)しまむら、再度都心出店に挑む
(2)西友売却
(3)セブン&アイ、コンビニ事業不振
(4)イオン、人件費増が重荷か
(5)ニトリの野望
3,消費財メーカーについて
(1)トヨタのROE20%宣言
(2)日立、指定価格制度を1割から2割に倍増させる
(3)キリン、ビール中心からの脱却を急ぐ
(4)「金麦」にかけるサントリー
4,その他
(1)PayPayアセットマネジメント、25年9月に廃業
(2)日経「社長1000人アンケート」90.8%が値上げ意向
1、社会・消費者について
(1)貯蓄率、3年連続低下
2023年度の家計の貯蓄率は1.5%と3年連続で低下しました。貯蓄に回ったお金は4兆7千億円で3年連続減少しました。
「貯蓄をしないで、投資をしなさい」というのが政府の立場でしょうか?これはあくまでも余裕資金を手元に置かないで、投資に回しましょうという話だと思うのですが、この3年連続の貯蓄率の低下は、そのような動きではなく、物価上昇に伴って消費支出が増えて、貯蓄できなかったというのが実態のようです。「この数年は物価上昇もあって、貯蓄をとり崩して消費に回す傾向が続いている」という説明があるように、どうやら物価上昇によって、家計が苦しくなってきているという状況を反映しているようです。
雇用者報酬は23年度に前年比1.9%増と3年連続でプラスだったそうですが、物価上昇はそれ以上なのでしょう。1月にも、また商品の価格が100品目以上上がるそうです。正月が終って、買い物にいったら、肉や魚、野菜の価格が上がっていて驚きました。物価上昇はいつまで続くのでしょうか?収入の少ない人、年金生活者などにとっては、この物価上昇は節約せざるを得ない状況なのではないでしょうか。生活の苦しい人が増えれば犯罪も増えます。困った世の中になってきています。
(2)経営難の私大に縮小を促す文科省
経営悪化を理由に文科省が13年に運営法人に解散命令を出し、創造学園大学(群馬県高崎市)が閉校した際には、100人超の学生を他の学校などに転入させる必要が生じました。もちろん、この場合、教職員は失業するわけです。
現在、私大は622校もあり、経営困難な私大は20%近くあります。この経営困難校に対して、文科省は経営改善計画を提出させ、上向かなければ助成金の減額も検討するそうです。
これらの経営困難校からは優秀な教員はすでに逃げ出していると思われます。そのため、教員も十分に補充出来ない状態になっていると思います。学生に迷惑がかからないようにいかに上手に閉校するか、あるいは他の学校法人に吸収合併してもらうか、経営難の大学は学生、教職員になるべく迷惑がかからないように撤退していただきたいものです。
(3)女性活躍推進法改正か
企業に女性の登用を促す女性活躍推進法が成立して25年で10年になります。企業に行動計画の策定を義務付けて格差の是正を目指したものの、女性の管理職はまだまだ少ないのが現状です。そのため、25年の通常国会に改正案を提出します。
改正の内容は、➀男女の賃金差を公表する義務の対象を従業員数101人以上の企業に拡大します。従来は従業員数301人以上の企業に義務付けていました。対象企業は、法改正によって1.7万社から5.1万社に広がります。➁従業員数101人以上の企業に管理職に占める女性の比率の公開も義務付けます。
フルタイムで働く女性の賃金は、男性を100とすると78.7にとどまっています(22年)。法が成立した15年の74.3から大きな改善は認められません。OECDの平均は88.6%です。また、管理職に占める女性の割合は23年で14.6%にとどまっています、法成立前の14年には11.3%でしたから大きな改善は見られていません。管理職に占める女性の割合は、アメリカ、フランスで約4割、ドイツで約3割です。日本はずいぶんと見劣りします。
女性の管理職が少ない理由として、➀長時間労働、➁家事や育児の負担が女性に偏る構造、を指摘していますが、説得力があるとは思えません。企業が、もっと思い切って女性役員を増やせばいいだけなのではないでしょうか?それとも役員になりたくないという女性が多いのでしょうか?皆さんはどちらが真実に近いと思いますか?
2,小売業について
(1)しまむら、再度都心出店に挑む
しまむらは、2011年に「しまむらレディース」という店舗を都心の駅ビルなどに出店しました。売り場は標準店の半分の広さで、主に女性向けの衣料品と雑貨に絞っていました。しかし、採算が合わず、閉店を余儀なくされました。
現在、しまむらは20年2月期の1432店をピークにゆるやかに店舗数が減少してきています。地方の人口減少、出店余地がなくなってきている事などが重なり、地方出店だけでは成長が困難になりつつあります。
それで再び都心出店にいどみます。今度は、基本的に標準店と同じ品揃えで勝負していきます。チャンスはあります。スーパーが自前の衣料品売り場から撤退した跡地への出店要請があるのです。その跡地を精査して、収益性があると判断すれば出店していくようです。もちろん、インフルエンサーらとの共同企画商品の開発とか、会員顧客を拡大して、データ分析による商品開発なども強化していきます。
果たして、競争の厳しい都心部でしまむらの魅力が消費者に伝わるかどうか、かなり難しい挑戦になるのではないでしょうか。
(2)西友売却
アメリカの投資ファンドのKKRが傘下の総合スーパー西友の売却を検討しています。株式売却に向けた入札続きを始めています。現在、西友の株式はKKRが85%、ウォルマートが15%所有しています。なお、西友は本州に約240店舗を構えています。
入札しているのは、イオン、パン・パシフィック・インターナショナルHD(PPIP:ドン・キホーテ)、トライアルHD(九州に本拠を置くディスカウントストア)、投資ファンドなどです。
西友は首都圏に多くの店舗を持っていますので、イオンもPPIPもトライアルも欲しいでしょう。一番欲しいのはトライアルでしょう。数千億と言われている買収額ですが、果たしてどうなるでしょうか?個人的には、首都圏にはイオンもPPIPも数多くあるのでデジタル化で一歩先んじているトライアルが買収すると、さらに競争が激化し、消費者には良いように思います。イトーヨーカ堂も売却され、西友も売却。大きな小売業の変化を感じています。
(3)セブン&アイ、コンビニ事業不振
セブン&アイHDが24年3月~11月期の連結決算を発表しました。売上高にあたる営業収益は前年同期比6%増の9兆695億円、営業利益は23%減の3154億円、純利益が65%減の636億円でした。純利益が減少するのは同期として2年連続。営業減益は4年ぶりとなります。
国内コンビニ事業の営業利益は8%減の1829億円でした。実質賃金が伸び悩み、物価高の中、消費者の生活防衛意識が高まり、客足が遠のいたようです。
海外事業の主力であるアメリカの既存店売上高(ガソリンを除く)も、24年9月まで13か月連続で前年割れでした。併設するガソリンスタンドも販売額が減少しています。
本業の不振で、特別損失も発生しました。アメリカのコンビニ不採算店舗の閉店費用として567億円を計上しました。イトーヨーカ堂でもネットスーパー事業からの撤退関連費用が458億円かかりました。
25年2月期通期の業績予想は据え置いています。営業収益は前期比4%増の11兆8790億円、純利益は27%減の1630億円です。
2月末までにヨークHDの株の75%を売却したとすると、予想では4053億円のキャッシュを得られます。このお金をどのように使うのかという発表もありません。このお金を自社株買いと配当の増加に充てるといえば株価も上がるのでしょうが、今の株価だと買収もより容易になるでしょう。5月下旬の株主総会までに、➀クシュタールの傘下に入るのか、➁創業家主導の買収による株式非公開にするのか、➂単独による現経営体制の維持なのか、という3択のいずれかにするかを意思決定するようですが、クシュタールのその後の動きも、創業家が資金を用意できるのかという情報も発表されません。
すばやく環境適合してきたセブン&アイですが、環境適合も遅くなりましたし、情報公開も不十分すぎます。どうしたのでしょうか?現在のセブン&アイは謎です。今のように株価が下がれば、クシュタールによる敵対的買収もあり得るかもしれません。
(4)イオン、人件費増が重荷か
イオンの2024年3月~11月期の連結決算が発表されました。最終損益が156億円の赤字(前年同期は183億円の黒字)でした。イオンは、24年春にパート従業員の時給を平均7%引き上げました。賃上げで人件費は前年同期よりも427億円増になっています。綜合スーパー事業は192億円の赤字でした(前年同期は14億円の赤字)。明らかに人件費増が、最終損益を赤字にしたことがわかります。
賃上げは良い事です。賃上げをして、同じ業務をさせていたら赤字になります。イオンは、もっとパートに自主性と責任を持たせるように変えていかないといけません。あいかわらず「マクハリの言う事さえ聞いていればよい」という態度なのでしょうか。
総合金融、SC開発、アミューズメント施設などのサービス・専門店事業の3部門は増益だったので、総合スーパーのパートの使い方、どこまで権限依存するのかを再考していただきたいものだと思います。
(5)ニトリの野望
ニトリは、製品ラインを3つから4つにしようとしています。①家具、➁布団やカーテン、➂食器や収納ケース、この3つに④家電を第4の柱にしようとしています。実際に、9万9900円のドラム式洗濯乾燥機を出して注目されています。
その一方で、海外進出も盛んです。中国は24年末には95店舗でしたが、25年3月末には144店舗にする計画です。同様に韓国は3店舗から9店舗へ、台湾は61店舗から71店舗へ、タイは5店舗から11店舗へ、マレーシアは11店舗から16店舗へなど海外進出も盛んです。
24年3月末には8957億円の売上高でしたが、25年3月末には1000億円になるようです。猛烈な勢いで成長しているニトリですが、似鳥会長の存在がとても大きいと思います。似鳥会長(現在80歳)が仕事から退いてもこの成長路線がとれるのか多少疑問です。
3,消費財メーカーについて
(1)トヨタのROE20%宣言
トヨタがROE(自己資本利益率)を20%にすると宣言し、話題を呼んでいます。トヨタは「ソフトウェア事業の比率を高めてROEを上げる目線を持っていると確認できたのはポジティブ」と言われています。車メーカーは、工場などを含め資産規模が大きく、ROEが低くなりがちです。ただ、稼ぎ頭が自動車売り切りからCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)へと移るなか、小さな資本で大きく稼げる可能性が高まってきているのです。トヨタが、サービス事業を育てて成長を志向する姿勢は日本株の位置づけを変える可能性とも言われています。
どうやらトヨタも大量生産して、車を世界で最も多く売るだけではなく、売った車にネットを通して新たなソフトを売ったり、自動運転のソフトを導入したりすることに踏み切ろうとしていると理解されているようです。そうすると利益額が増加し、ROEも増加するというストーリーのようです。
(2)日立、指定価格制度を1割から2割に倍増させる
指定価格は、家電の値引きを防ぐ仕組みで、メーカーが商品の返品に応じる代わりに店頭価格を指定する制度です。「価格維持」は独禁法で禁止されているのですが、家電メーカーを守るためでしょうか?公取が家電業界だけに設定した制度です。
パナソニックは22年に先行して本格的に始めました。現在は、理美容家電やドラム式洗濯機などの約4割の製品が指定価格の対象となっています。
日立は、25年度から冷蔵庫などを対象に加えます。同社は、23年に指定価格制度を導入し、ドラム式洗濯機とステック型の掃除機を対象としました。価格指定の製品数は2倍となり、全体の2割を占めるようになります。
同社は、これまで33万~37万円台の洗濯機と7万円台の掃除機といった製品カテゴリーの最上位機種を中心に指定価格を採用していました。今回、19万円台の洗濯機など最も安い価格帯の機種にも指定価格を導入します。最も安い機種の価格を指定することによって、中上位機種の安売りに歯止めがかかると期待しているわけです。そして、「中上位機種の価格を一定の範囲内で変動できるようにすることで、製品カテゴリー全体の値崩れを防ぎながらシェアを維持する」という戦略意図のようです。はたして、うまくいくでしょうか?中位機種を最も低い機種と同じ価格にすれば、中位機種はとても売れますよね。注目される価格戦略です。
(3)キリン、ビール中心からの脱却を急ぐ
キリンHDは、ビール中心の経営から脱却し、「ヘルスサイエンス」事業を育成して、ヘルスサイエンス事業を将来の稼ぎ頭にしようと意図しています。
そのために、国内ではファンケル(通販と実店舗約160店を展開、約280万人の顧客基盤をもつ)を買収しました。海外では、オーストラリアのブラックモアズ(オーストラリア、タイ、中国など12の国・地域に販路を持つ健康食品大手)を買収しています。
現在、キリンは「プラズマ乳酸菌」を使う健康食品事業を国内とベトナムで展開しており、また、プラズマ乳酸菌をアメリカ・メキシコなど12カ国の企業に提供しています。ただし、24年12月期ではヘルスサイエンス事業は91億円の赤字を見込んでいます。
そこで、2025年には、「プラズマ乳酸菌」を使う健康食品事業で台湾に進出します。また、ブラックモアズと共同で商品開発した商品を初めて販売します。さらにブラックモアズは、オーストラリアでプラズマ乳酸菌を「既に当局への販売申請を始めている」そうです。
ビール系飲料の販売数量は、23年にピークの1994年から4割縮小しています。キリンは、ヘルスサイエンス事業を30年までに売上高3000億円に、売上高利益率を10~15%にすることを目指しています。そして、将来、キリンはヘルスサイエンス事業を企業の中心事業にしようと考えているようです。
そのためには、キリンとファンケル、ブラックモアズの技術・知見を融合して、新製品開発を共同で行い、共同で、アジア諸国で販売するといった体制を整えていかなければいけません。どうやらその実験を始めているようです。
(4)「金麦」にかけるサントリー
サントリーは、「国内酒類売上高目標が1兆円(前年比22%増加にしないと達成できない)」です。それを達成するためには、ビール類のシェアを2割から25%程度に引き上げたい考えです。その目標を達成するためには、サントリーの国内ビール類販売数量の半数を占める「金麦」の巻き返しがどうしても必要です。そのため、25年4月に「金麦〈晩酌サワー〉」を発売するそうです。ビール類の原料となる麦芽由来のうまみや缶酎ハイのような爽やかな飲みやすさをそろえたのが特徴だそうです。
私は、ビールと缶酎ハイは別の飲み物だと思っているので、うまくいくとは思えないのですが。
現在、プレミアムモルトは265円前後で販売されているのですが、金麦は185円前後で、小売店で販売されているそうです。この約80円の差に商機があると考えているようです。
何度読んでも「金麦〈晩酌サワー〉」という表現は、いかにもサントリーという気はしますが、果たしてうまくいきますでしょうか。今までの「金麦」の方が売れるように思うのですが。果たしてどうなるでしょうか。
4,その他
(1)PayPayアセットマネジメント、25年9月に廃業
LINEヤフーとみずほファイナンシャルグループの子会社が共同出資するPayPayアセットマネジメントが2025年9月、事業を終了することになりました。赤字が続くことにLINEヤフー側が耐えられなかったことが主因だそうです。長期で資産を管理する運用会社の唐突な廃業は異例で、投資家からは受託者としての責任を問う声も上がっています。
運用資産は1900億円。金融庁は個人向けの公募投信8本を繰り上げ償還するという当初の廃業計画に再考を求めました。なぜなら、投資信託の終了時に基準価額が下がっていれば実現損が出る可能性があるからです。結局、繰り上げ償還の本数を8本から4本に減らし、残りをアセマネOneに移管することで理解を得たのでした。投資家保護のために株主責任を超えた責任を果たす必要があるとアセマネOneは判断したそうです。
一方、機関投資家向けの私募投信は全て繰り上げ償還の対象となりました。もちろん、投資していた地方銀行などからは「責任放棄だ」と怒りの声が続出しました。
結局、テック企業として早期の収益化を求める姿勢が、長期の受託者責任が必要な運用業と相いれず、顧客に迷惑をかける事態を招いたのです。
個人が、余裕資金をどこに投資するか?大いに迷うと思います。私は、投資信託のように、誰かに運用を任せるのは、比較的若い時に2度経験しました。ひとつは、100万円預けて、半額だけ返ってきました。もうひとつは80万ほど返ってきました。一つは50万円の損失。もう一つは20万円の損失でした。それ以来、投資は人任せではいけないと思いました。結局、それ以来、自分の判断で利益が出たり、損失が出る、株式の売買だけやっています。
(2)日経「社長1000人アンケート」90.8%が値上げ意向
日経が行っている「社長100人調査」(2024年12月調査実施)によると、主要な製品やサービスの半年後までの値上げ意向について、「値上げする」(36.7%)、「値上げを検討」(54.1%)であわせて90.8%になります。
値上げ理由は、円安傾向、原材料価格の高騰、包装資材費の増加、物流費の高騰、調達コストの上昇など、様々な表現が使われていますが、「価格転嫁がいまだに不十分」とする回答が87.7%を占めていますから、これからもさらに値上げが進むことは明らかなようです。
たとえば、ビール4社は4月からの値上げを決定していますし、マルハニチロは2月以降、冷凍食品や缶詰を、江崎グリコも菓子やチルド食品を2月1日出荷分から順次値上げしていきます。値上げ、値上げで暮しは楽になりませんね。
以上