「流通雑感 臨時号NO.3」2024年6月20日 | 流通雑感のブログ

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「流通雑感 臨時号NO.3」2024年6月20日

 

「流通雑感 臨時号」は、住谷ゼミのOBOGの皆さんに読んでいただこうと思って発行するものです。

臨時号とするのは、毎月掲載するわけでもなく、一定量が溜まったらなので、月に1回かもしれませんし、2~3か月に一度くらいかもしれません。その点はご容赦のほどお願いします。現在は、月1回の刊行を目指しています。住谷ゼミのOBOGの皆さんに、少しでもお役に立てたら幸いですし、私の近況もお知らせしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

ところで、6月より、私は東洋大学名誉教授に就任しました。

 

1.社会・消費者について

(1)私大、110法人が経営困難

(2)出生率、1.20に

(3)あなたは地域社会に外国人が増える事をどう思うか

(4)アメリカで、消費者がエルメスに集団訴訟を起こした

2,小売業について

(1)ヨーカ堂、24年度は成長戦略

(2)ロピア、20代で年収1000万円も可能な給与体系

(3)神戸物産(業務スーパー)、11~4月期最高益

(4)パンパシHD、売上高2兆円を超える

3,消費財メーカーについて

(1)   キリン、ファンケルを完全子会社化

(2)   三菱鉛筆の「KURUTOGA」シリーズの販売、累計1億本超え

4,その他

(1)   2024年度上期ヒット商品番付

(2)   北欧サーモンの仕入れ値、3年で2倍に

 

 

 

1、社会・消費者について

(1)私大、110法人が経営困難

日本の私立大学を運営する法人は、全国に567法人あります。日本私立学校振興・共済事業団が2022年度の法人の決算を収集し、教育に関する収支や債務の状況などを分析したそうです。

その結果、「レッドゾーン」(教育に関する収支が2年以上赤字で外部負債が運用資産を超過し、かつ4年以内に資金ショートの恐れなどがある法人)が16法人ありました。この16法人については、自力での再生は極めて困難で26年度までに破綻する恐れがあるとしています。

 「イエローゾーン」(外部負債が超過していなくても、10年以上先に資金ショートする可能性があるなど経営困難な状況にある法人)が85法人でした。この85法人は、経営を改善しない場合、破綻が懸念されるそうです。

 「イエローゾーン予備軍」(経営収支が2年以上赤字の法人、経営困難の予備段階)が135法人で、黒字の正常状態は331法人でした。

 23年春の入学者が定員割れした私大は320校で、初めて5割を超えています。

 これから私大の破綻や私大の再編・統合などが起こる可能性は極めて高いと言えましょう。日本は、もともと大学が多すぎるのです。その上、1990年代から規制緩和を行いましたから、さらに私大は増えたわけです。必要のない私大が淘汰されるのは時間の問題でしょう。

(2)出生率、1.20に

厚生労働省が6月5日に発表した2023年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯のうちに産む子供の数の平均値)は、過去最低の1.20でした。1989年には「1.57ショック」などという言葉が使われ、出生率が戦後最低を記録したことが大きな話題だったのですが、今や1.20です。少子化は続き、高齢化・人口減少も続きます。

出生率が低い都道府県ベスト3は、1位:東京都(0.99)、2位:北海道(1.06)、3位:宮城県(1.07)でした。逆に、出生率が高い都道府県ベスト3は、1位:沖縄県(1.60)、2位:長崎県(1.49)、2位:宮崎県(1.49)、なお4位は鹿児島県(1.48)でした。北海道、東北、北陸、関東の出生率の相対的低さ、沖縄・九州の出生率の相対的高さが目立っています。国内だけでも、これだけ出生率が異なるのですから、この点をもう少し深く考えてみるべきかもしれません。「なぜ九州は出生率が高いのか?」という研究プロジェクトがあってもいいと思うのですが。

日経リサーチの5000人調査によると、「妊娠・出産・子育ての壁になる事」という調査項目では、1位:「教育費や住宅費などの経済的負担」(71.3%)、2位「仕事との両立の難しさ」(62.3%)といういつもの同じ結果が出ています。「それではお金があれば、子供を作るのか?」と言われればどうなのでしょうか?なんだかとても難しいですね。

私は、運よく娘が二人の子供を生んでくれたので、孫と遊ぶ楽しさを味わうことができました。その楽しさを味わうこともできない高齢者が増えているという事ですよね。残念な事です。

(3)あなたは地域社会に外国人が増える事をどう思うか

入管庁が、日本人側の理解や考え方を把握するためにアンケートをしたのは初めてです。18歳以上で日本国籍を持つ1万人を住民基本台帳から無作為抽出し、23年10月~11月に実施。有効回答数は4424人でした。

「地域社会に外国人が増える事をどう思うか」を聞いたところ、全体では「好ましい」28.7%、「好ましくない」23.5%でした。年代による大きな違いはありませんでした。ただ、40代前半までは外国人の増加を前向きに捉える回答が3割を超えた。高齢になるにしたがって「好ましくない」「どちらともいえない」の割合が大きくなり、慎重な見方が根強いことが浮き彫りになったそうです。

私が住んでいる地域でも外国人が増えています。共生していくしかないのですが、なかなかコミュニケーションのきっかけがないですね。

(4)アメリカで、消費者がエルメスに集団訴訟を起こした

アメリカで「バーキン」を入手できないとして消費者が集団訴訟を起こしました。その主な主張は次の2点です。

・「バーキンの販売をスカーフや革製品などの他の商品の購入に結び付けているとして、独禁法が禁じる『抱き合わせ販売』にあたると主張した」

・「他製品の十分な購入履歴があり『価値がある顧客』と判別された消費者だけが別室でバーキンを案内してもらえることなどを『不公正な販売方法』だとも訴えている」

 すぐには、結論は出そうにありませんが、「いつ、どこで出会えるかわからないことは、バーキンの希少性を強調し、人気を後押ししてきた」と事実です。エルメスの販売手法が、独禁法違反となるのか注目されるところです。

 

2,小売業について

(1)   ヨーカ堂、24年度は成長戦略

イトーヨーカ堂の山本哲也社長のインタビュー記事が掲載されていた。

➀なぜヨーカ堂は業績が低迷したのか?

・「売上高が下がり続ける中、コスト削減で利益を捻出しようとしていた点だ」

・「GMSの事業構造を変えるような抜本的な改革にはなかなか手を付けられなかった」

以上の様に述べている。

➁23年度には何を行ったのか?

・「23年は選択と集中を進める構造改革の1年だった」

・・・具体的には、北海道、東北、信越からの撤退。首都圏でも一部店舗を閉鎖すると発表しました。そして「関東と中部、関西地方に絞る」と言っています。また、ヨークとの合併に伴う本部統合などを行い、経費削減にある程度のめどがついたようです。

➂24年度は何を行うのか?

・「24年度は会社の売上高を伸ばす成長戦略を実行していく」

・・・・具体的には、店舗改装に約200億円を投資する。改装店舗は約80店舗。グループ共通のセントラルキッチンを使った惣菜の品揃えの充実などを実行していくようです。

以上のように成長を目指して、26年2月期には黒字に転換さえようとしています。26年2月期にEBITDA(利払い・税引き後・償却前利益)550億円の達成は無理だと考えているようですが、黒字にはできると考えているようです。

すでに臨時号NO1で書いたように、黒字転換はそう簡単な事ではないので、競合店に何をもって勝つのか?何を競争優位と思っているのか?その点が不明なので、物足らないインタビューになっているように思います。

(2)ロピア、20代で年収1000万円も可能な給与体系

ロピアを展開するOICグループは、24年度から、20~30代が多い売り場の部門責任者などを対象に年収1000万円が可能になる報酬体系を導入したそうです。

対象は「チーフ」と呼ばれる各店の売り場責任者や店長で、チーフ以上の管理職など役700人です。「チーフ」は部門ごとにいて、予算管理から仕入れ、値付け、パートの採用まであらゆる裁量を与えられているそうです。

OICグループは24年度から、チーフと管理職の平均年収を700万円と前年度よりも60万円増やしました。その上、店舗の売上高などの成果に応じた賞与も増やし、20代から年収1000万円が可能になりました。年収が1000万円になる社員は、従来の報酬にくらべて153~353万円の増額になるそうです。

小売業の給与水準は一般に低いので、このOICグループの給与体系はインパクトのあるものです。ロピアは、23年9月時点で93店舗でしたが、25年2月期中には100店舗を超える見込みです。給与体系の引き上げが、社員の働き甲斐を高めて、業績が伸びていくのか注目されますね。

(3)神戸物産(業務スーパー)、11~4月期最高益

業務スーパーを展開している神戸物産が好調です。23年11月~24年4月期の連結決算は、純利益が前年同期比36%増の123億円となり、上半期としては過去最高を更新しました。独自のPBの値ごろ感で節約志向の消費者を取り込みつつ、食品メーカーとしてコスト削減を進めて採算を向上させています。売上高は12%増の2481億円、営業利益は25%増の177億円でした。

業務スーパーは、4月末時点で全国に1,062店舗ありますが、直営店は4店舗のみで、それ以外はフランチャイズチェーン(FC)の加盟店です。神戸物産は、FC店に食材を卸したり、自ら生産するPB商品をFC店に販売しています。業務スーパーの店舗数は、1年間で39店増えていますが、将来は1500店舗以上にしたいそうです。

豆腐のケースに入った「リッチチーズケーキ」などのヒット商品をこれからも新たに開発できるかどうかも神戸物産の今後の成長のカギになるように思います。また、業務スーパーを自らPRしてくれているファン層をどのように大切にしていくのかも重要なことだと思います。

(4)パンパシHD、売上高2兆円を超える

 パン・パシフィック・インターナショナルHDは、24年6月期連結売上高が2兆円を超えたと発表しました。セブン&アイHD、イオン、ファーストリテイリングに次いで日本で4社目の2億円超えです。

 売上高は過去5年でほぼ2倍という驚異的成長です。25年6月期までの中期経営計画で掲げる営業利益120億円も1年前倒しで達成する見通しです。3月末の店舗数は727店舗でこの10年で約3倍です。

 流通雑感 臨時号NO2でご紹介したように、ドン・キホーテは徹底した顧客志向を続けています。どこまで成長するのか・・・ちょうと驚異的ですね。

 

3,消費財メーカーについて

(1)キリン、ファンケルを完全子会社化

キリンは、持ち分適用会社のファンケルを完全子会社化すると6月14日に発表しました。TOBを実施し、年内にも全株式を取得する予定です。2019年の資本業務提携から5年越しの買収になります。

キリンは、ビールでは突破口がみいだせない状態です。そのため、健康食品を含む「ヘルスサイエンス」事業へ投資して、育成しようとしています。①協和発酵バイオ株の95%を取得したのが2019年のことでした。➁同年にファンケル株の約3割を取得しました。➂2023年にオーストラリアのブラックモアズを約1700億円で買収しました。④2024年にファンケルを完全子会社化すると発表。このようにすでに6000億円を超える投資をしてきました。キリンは、健康事業に背水の陣で臨む覚悟をしたようです。

ヘルスサイエンス事業を26年12月期までに黒字にしたいと述べているキリンですが、ファンケルにずいぶんと期待しているようです。キリンの売上収益事業利益率は9%なのですが、ファンケルは11%なのです。そのファンケルの利益をキリンが取り込めば可能なのかもしれません。

キリンは、ファンケルの完全子会社化を発表すると同時にヘルスサイエンス事業の売上を10年以内に23年12月期の実績の5倍にあたる5000億円に引き上げます。キリンの売上高の2割になるようにしたいようです。ヘルスサイエンスへの投資は終わって、これからは育成し、収益を得ようとしているわけです。確かに成長分野ですが、競合も多いのでどうなるか注目されます。

(2)三菱鉛筆の「KURUTOGA」シリーズの販売、累計1億本超え

高級シャープペンシルの人気が高まっています。

三菱鉛筆の芯が回ってとがり続ける「KURUTOGA(クルトガ)」シリーズの販売は累計1億本超えました。ノック不要の「クルトガ ダイブ」(5500円)などは中高生の垂涎の的だそうです。

その他にも、ゼブラの芯が折れにくい「デルガード」、自動で芯が出るぺんてるの「オレンズ」、パイロットの「S30(エスサーティー)」などが人気の高級シャープペンシルです。

このような高級文具人気に火をつけたのは文具ユーチューバーの「しーさー」さんだそうです。そして「α世代」(2010年以降の生まれが多い中学生)に支持され高級文具ブームが訪れたようです。今は、本当にSNSの影響が強くなってきていますね。

 

4,その他

(1)   2024年度上期ヒット商品番付

横綱:東:新NISA、西:円バウンド

大関:東:Bling-Bang-Bang-Born、西:イマ―シブ(没入)

関脇:東:東急プラザ原宿、西:北陸新幹線延伸

小結:東:尊富士・大の里、西:名探偵コナン(100万ドルの五稜星)

前頭:東;「不適切にもほどがある!」、西:キリンビール 晴れ風

以上は参考までに。皆さんはこのヒット商品、すべてご存じでしたか?私個人は半分しか知りませんでした。

(2)北欧サーモンの仕入れ値、3年で2倍に

日本人が最もよく食べる寿司ネタは、1位「サーモン」(50.6%)、2位「マグロ(赤身)」3位「ハマチ・ブリ」(マルハニチロ24調査より)です。その生サーモンの8割強を輸入に頼っています。ところが、ノルウェーから空輸するチルド品の5月の輸入単価は1キロ約1750円と3年前の2倍になっています。もちろん、円安の影響もでています。世界のサーモンの生産量は年300万トン~310万トンと増加傾向にあるのですが、世界的なすし人気もあり需要の伸びが勝っています。

そのため、回転ずしで100円のサーモンの寿司が減っています。銚子丸が提供する「オーロラサーモン」は1皿440円です。

そこで、国内産のサーモンが注目されています。日本で今、サーモンを養殖するのは「全国で約130か所。24年になってビジネスとして成長の勢いが増している」といわれるように国内産のサーモンの流通が増加しています。これから、私たちは「青森サーモン」とか「オリーブサーモン」などを口にすることが多くなりそうです。悪い事ではないと思いますが。

                                      以上