「月刊 流通雑感」NO.213、2022年 6月号 | 流通雑感のブログ

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「月刊 流通雑感」NO.213、2022年 6月号

 《目次》           

1、 社会・消費者動向

(1)教育の七五三

2、 小売業・卸売業の動向

(1)  マツキヨココ、順調、純利益前期比60%増

(2)  DZマート、北海道全域へ

(3)  ウォルトのQコマースは成長するか?

(4)  自販機以上、コンビニ未満の無人決済店

(5)  ネットスーパー、地方でも成長する可能性大

3、メーカーのチャネル戦略、

(1)効果的POPをAIが検証

(2)シニアに受ける「ミノン」

(3)植物由来の代替肉と卵

4、その他

(1)週休3日、実現可能ですか?

(2)TikTokの企画を考えて、制作するのも立派な事業

 

 6月、もうすぐ梅雨の季節ですね。

 6月は、祭日もなく我慢の1か月でしょうか。夏休みを楽しみにして黙々と仕事をする期間でしょうか。

 幸いにも、GWの後、コロナの感染者があまり増えず、徐々に減少してきていることがうれしいサプライズでした。

 我が家は、現在、リフォーム中で、なんだか落ち着かないのですが、黙々と仕事をする1か月にしようと思っています。

 

 

1、社会・消費者動向

(1)教育の七五三

 「高校生の7割、中学生の5割、小学生の3割が授業についていけない」と言われています。ベネッセの16年調査では、大学生の35%が補修を経験しているそうです。機械メーカーのクボタは、技術系新入社員を対象に機械設計の基礎である材料力学、疲労強度、材料・熱処理の3分野で「学びなおし教育」を実施しています。きっかけは若手の学力不足を懸念する現場の声でした。2016年7月、入社10年以内の技術系社員360人にテストを受けさせると衝撃的結果が出たのです。降伏点や引っ張りの強さ、ヤング率など基礎的な言葉の理解や計算問題の正答率がわずか22%だったのです。技術系新入社員の9割は有名大学の大学院卒なのです。

 このようなエピソードにあふれています。「行き過ぎた履修主義の浸透は、小学校から大学まで卒業に甘い文化を生んだ」のです。まったく耳の痛い話です。今は、私が教員になった当時よりも、学生に甘い状態になっていることは確かです。講義のパワーポイントをPDFにしたものが大学の教育システムを活用してあらかじめ学生に提示されている事が多いため、学生は講義中、ノートをとるという習慣がありません。板書もできず、スマホをいじくっているだけ。大学に登校中の学生を見ると、かばんも持っていません。何をするために大学に来ているのでしょうか。そんなことを思うこともあります。

 「どうして板書もしないのに授業にでているんですか」と聞いたことがあります。ゼミ生は、大学に来ないと、授業に出ないと不安だからと言います。不安だから大学に来るけど、勉強はしない。どうせ大学にくるなら、勉強したらよいのにと思うことが時々あります。中学校も高校も大学も、そのうち卒業試験が行われるようになるのかもしれませんね。

単なる案で実施はされませんでしたが、私が勤務する学科でも2年生から3年生になる時に進級試験を実施したらどうかという案が出て、検討した時がありました。そんな議論がこれから多くなるかもしれません。

 

2、小売業・卸売業の動向

(1)マツキヨココ、順調、純利益前期比60%増

 2021年10月に始動したマツキヨココカラ&カンパニーの22年3月期の連結決算が発表され、純利益が前期比60%増の345億円でした。仕入れ先の統一、PBの拡販、無駄な値引きの是正で達成したようです。

 なかでも21年に発売した、PBの基礎化粧品「レシピオ」が好調で22年3月期のPB売上高は前期比1.5倍になりました。

 レシピオは、コーセーと共同開発し、2021年11月に発売した敏感肌向け基礎化粧品です。発売2か月で年間計画の3割を売り上げるヒットとなりました。コロナ禍のマスク着用で肌のトラブルが増えていることに着目した商品です。22年3月までに累計30万個超、約6億円を売り上げました。26年3月期には売上高に占めるPB比率を15%までに高める計画です。このレシピオの開発にあたっては、専用アプリなどで収集した約1億1千万件の顧客のデータの分析が活用されています。今後もこの顧客データの分析を活用してPB開発をしていくようです。

(2)DZマート、北海道全域へ

 「DZマート」という小型スーパーが北海道にあります。EDLPが特徴だそうです。大手が出店を控える人口1万人程度の市町村に照準をあてています。そして、コストに磨きをかけながら年間10店舗程度の新規出店を目指しています。

 「DZマート」は1974年創業で、卸を経て酒類ディスカウントで小売りに参入。その後、「DZマート」を作り、旭川市の9店舗を筆頭に、同市周辺に出店エリアを拡大してきました。これまでは1年に1~2店舗の新規出店で、現在は合計21店舗を展開しています。

 柴田社長は、「低コストの店舗運用が整い、新店の黒字化ペースも早まった」と述べ、大手との競合の少ない地域で出店を加速させるのだそうです。1店あたりの投資額は2億5千万円ほどを見込んでいます。

 「DZマート」の品揃えは、生活必需品に特化してコンビニの2倍に相当する5000~6000品目です。柴田社長に言わせると「週に2回当店に来て、当店にない商品を求めて他の大型店に週1回行くのが標準的な顧客像」だそうです。そして、店舗運営の業務工程を450項目に分類して、ひとつひとつ省力化や時間短縮を検討しているのだそうです。店舗は、原則正社員1名とパート・アルバイト1人で運営しているそうです。

 DZマートを展開するダイゼンの21年9月期の売上高は70億円。22年9月期は80億円を見込んでいます。23年9月期は110億円を目指しています。

 人口減少が続く北海道で、大手が進出しないような立地で、人口1万人程度のところに出店して、チェーン化する小売企業が出現して、成長しているという事に驚きました。この「DZマート」は北海道だけでなく、人口減少が続く東北でも成長できるのではないかと想像しました。あるいはノウハウを整理して、東北はFCにする方法もあるかもしれません。まだまだ、小売業にはいろいろな成長の道があるのだと改めて気づかせられました。

(3)  ウォルトのQコマースは成長するか?

 フィンランド発の料理宅配サービスのウォルトジャパンが食品や日用品などの料理以外の配送サービスを拡充しています。4月に東京都内のスーパーや仙台のスーパー7店舗と提携しました。注文から30分以内で食品や日用品を届けるQコマースが広がると見ているようです。果たして、この狭い日本で、数多くの小売店がある日本でQコマースにそれほど需要があるのか、果たしてウォルトジャパンが成長するのか、注目していきたいと思っています。

(4)自販機以上、コンビニ未満の無人決済店

 1~3日で設置できる簡易型の無人決済店「TTG-SENSE MICRO1」、スペースは横が2.4m、縦が3.2mで面積が7㎡ほど。電源があれば設置できます。設置費用は約25万円、月額料金は約20万円。販売や導入、保守のサポートは資本業務提携する東芝テックに委託しています。無人決済システムは、客が手に取った商品を天井に設置したカメラや棚のセンサーが判別し、レジで決済する仕組み。品揃えは200~500アイテム。一日の売上高は3万~10万円を想定しています。

 空港、高速道路のサービスエリア、ガソリンスタンドなどでの展開を想定してるそうです。「自販機以上、コンビニ未満のマイクロマーケットを狙う」そうです。現在、14店が導入されています。22年度は100店舗の導入を目指すそうです。

 一日3万円の売上高で、マージン率は平均30%と考えても、一日のマージン額は9000円×30日=27万円。これでは投資する意味がありません。一日の売上高が5万円なら、一日のマージン額が1万5千円なので、30日なら45万円。これなら投資に見合うかもしれません。結局、一日の売上高次第のように思います。果たして、計画通りに店舗数が増えますでしょうか。

(5)ネットスーパー、地方でも成長する可能性大

 ベイシアは楽天グループが始めた「楽天全国スーパー」活用の第1号です。バローは、アマゾンの有料会員を対象に同社の通販サイト上で、実店舗で取り扱う商品を販売しています。このように地方スーパーが、大手通販会社が提供する専用のプラットフォームを活用することで、ネットスーパーに参入することが容易になりました。

 ベイシアは、当初、米や水など重い物をネットで購入するなど、実店舗での買い物利用の使い分けがされると考えていました。ところが、ネットスーパーを始めてみると、実際は生鮮食料品などの購入も多く、子育て世代が買い物に行く時間が無くて、必要なものを全てネットで購入する傾向が見られたのです。さらには単身世帯の会員登録数が増えるなど顧客層の拡大にもつながっているのです。地方は、車社会なので、ネットで注文し、店舗でも会社帰りに受け取れるようにするとさらに需要は増えるかもしれません。地方都市でのネットスーパーの成長可能性が大きいようです。しかも、大手のプラットフォームを利用しやすくなりましたから、成長の可能性は高まっています。

 

3、メーカーのチャネル戦略

(1)効果的POPをAIが検証

 大日本印刷が提供しているサービスのひとつの「AI売上予測システム」が機能拡大しました。2021年にユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングとリアル店舗(福島市のハシドラッグ)で実証実験を実施し、売れるPOPの条件を少し明らかにしたのです。

 結論からいうと、POPのデザイン要素においては「ベースカラー」「フォントの大きさ」「フォントの太さ」が、店頭売り上げに影響するという検証結果が得られたそうです。どうやら視認性が高まると売上高が上がるという考えが基本にあるようです。ベースカラーは、補色を用いる方が良いというのが一つの結論のようです。フォントは大きく太くすればよいことになるのですが、POPの面積ごとに効果的な比率が存在するということが分かったそうです。

 ただし、このような実験を花王は数十年前から行っています。また、既述の大日本印刷の実験は、福島市のドラッグストア3店舗のみでの実験ですから、それが東京都とか大阪府でも有益なのかどうかはわからないのです。そのため、既述の実験結果をうのみにすることもできません。それがこのような実験の限界なのです。

(2)シニアに受ける「ミノン」

 第一三共ヘルスケアのスキンケアブランド「ミノン」がシニアに売れています。1973年に敏感肌向けの固形石鹸として発売されたのがミノンの始まりまです。

 そのミノンは、30~40代が購買層の中心なのですが、ここにきてシニア層の購買が目立って増えてきています。60歳以上の購入者数は、21年度に「全身保湿ミルク」などの保湿剤で前年度比2.4倍に増加、75歳~79歳では約5倍と急増。ヘアケア商品でも1.4倍に増加しています。

 ミノンがなぜ、急にシニア層に購入されているのか?その理由ははっきりとしているわけでがありませんが、病院や調剤薬局でミノンのサンプル商品を配っている活動も効果が出てきているのかもしれません。ミノンシリーズの売上高は全体では2%増加の86億円で、22年度は96億円を目標にしています。

(3)植物由来の代替肉と卵

 ユニリーバが「リプトン」などの紅茶事業を22年度中に売却する予定だそうです。売却してえる資金をどこに投資するかといえばベジタリアン・ブッチャーの代替肉などの成長事業に投資するそうです。あの「リプトン」を売却してまで投資したい事業が植物由来の代替肉です。それほどビーガン(完全菜食主義)やフレキシタリアン(柔軟なベジタリアン)が増加すると予想しているわけです。

 ネスレは4月21日、植物由来の栄養食品などを手掛ける米オルゲインの株式の過半を取得しました。セルビアでは欧州市場向けに年間1万2千トンの代替肉製造工場を建設しています。21年には、植物由来の卵(ベギー)も開発しています。

 ユニリーバは、ベジタリアン・ブッチャーを成長事業に位置付け、40カ国以上で植物由来のミートボールやミンチ肉を販売しています。

 この背景にあるのは、欧米での食生活の変化です。若者を中心に環境への意識が高く、畜産業が多くの温暖化ガスを排出するとの認識も広がっています。肉や乳製品は食べるが量を減らすというレキシタリアンも増えています。ドイツとフランスの消費者の5割が肉を食べる量を減らしているそうです。そして、欧州と北米では25年をピークに動物肉の消費量が減っていくという分析もあります。肉や魚の代替食品市場は、35年までに2900億ドル規模に拡大するという予測も出ています。

 この大きな流れは、食品・食品加工メーカーを大きく変えていく可能性があります。

 

4、その他

(1)週休3日、実現可能ですか?

 週休3日のやり方にも3種類あるようです。

➀所定労働時間はそのままに休日を1日増やすもの。総労働時間が減るので給与も減らす方法。(パナソニックHDがこの方法を検討中)

➁休みを増やす代わりに出勤日の就労時間を延ばすもの。所定労働時間は増減しないので給与は減額しない。(ZOZOが採用、日立製作所が検討中)

➂1日の所定労働時間はそのままに休日を増やし、給与も据え置くパターン。

 2021年4月にZOZOのホスピタリティ本部は➁の週休3日制を導入しました。半年単位で、それぞれが申告し、週休3日でも週休2日でもよいそうです。同本部には正社員が約100人いて、その3割強が週休3日で働いているそうです。選択できるというのが素晴らしいと思います。その結果、週休3日を選んだ社員の残業時間が全体で63%減少したというのです。生産性も上がっています。給与が変わらず、週休2日か週休3日か自分で選択できるというのが素晴らしい点だと思います。週休3日制はもっと広がっても良いのではないでしょうか。

(2)TikTokの企画を考えて、制作するのも立派な事業

 タップㇽは、Z世代に人気の恋活・婚活マッチングアプリです。女性は無料、男性は月額4000円です。現役ユーザー数は約700万人。退会者も含めた累計ユーザー数は約1400万人だそうです。

 このタップㇽが、潜在顧客の掘り起こしのためにTikTokの企業アカウントを開設したのが21年6月。デートに使えるグルメの店を紹介する動画などをほぼ毎日投稿したのですが、再生回数は多くて数千。このままでは目的を達成できないと判断し、22年2月、企業アカウントを停止しました。

 その後、ある企業に相談し、その企業が「恋愛総量を上げる」というタップㇽの課題を達成するために、その企業はTikTokの作成の準備に入ります。上位にあるコメントをよく読み、大多数の若者が共感する動画の特徴を見出していきます。

 そして、恋愛関係で受けているのは、恋人同士などが一緒に出演している、いわゆる「カップルアカウント」であると判明。そこで、「男女の幼馴染がルームシェアする」というまるで少女漫画にあるような「胸キュン」のシチュエ―ションです。これをドラマ仕立てにし、毎回、異なるストーリーを30秒程度の動画にして投稿する計画をたてました。「幼馴染にと共同で生活中【おさ活】」という名前でタップㇽの企業アカウントの再開を決めました。若者にとって、「日常にありそう」「友達にもいそう」という距離感の近さを感じさせ、撮影もわざとスマホで撮影。「ユーザー視点の日常感」を出しているそうです。「幼馴染の友達に『俺のこと好き?』って聞いてみた」「幼馴染の友達を待ち受けにしたらどんな反応するのか?」などの動画を投稿したら、いきなり100万回再生を連発。これが今どきの事業です。

 確かに、今どきの大学生は恋愛下手です。恋愛が面倒という女子学生も多く、「デートって何するの?」と聞く男子学生もいます。そんな状況で、マッチングアプリが成長し、恋愛をしてみたいと思わせるTikTokを作るのがビジネスになるのですね。

以上