昔から陰謀論というものは、密やかに囁かれるもので、決して公然と主張されるものではありませんでした。
しかし、昨今は世界中で公然と陰謀論が語られ、一部では政治運動にさえなっています。
昨今の陰謀論の特徴は極めて単純明解化されていて、勧善懲悪的で、陰謀を巡らす側は完全なる悪で、世界中の政府もマスコミも支配下に置きながら、ありとあらゆる悪だくみを実行しているという分かり易いもので、そこらの井戸端会議で話題になれば、単純な人なら、納得して、信じてしまいそうな明快なものに成っています。
しかし、その内容は笑える程荒唐無稽なものばかりで、ちょっと良識のある人なら直ぐにガセネタである事が分かるものばかりです。
多くの研究者によると、それらの最近の陰謀論の殆どは、その発信源を辿って行くとロシアあるいは海外在住のロシア人に辿り着く事が分かっています。
その目的は、人々に自国政府に対する不信感を抱かせる事です。特に欧米を中心とする主要国の政府は全て、闇の政府に支配されており、地球規模の壮大な陰謀に加担している悪の手先であり、唯一、ロシア政府だけがそれと戦っていると人々に信じ込ませる内容になっています。
ヨーロッパ各国での反政府的極右運動の殆どは、それらロシアの情報局による国際情報操作によって扇動されたもので、当然ながら、それら全てはロシア支持です。
ルーマニアなどでは、ロシア情報局によるネットキャンペーンにより無名の人物が大統領の有力候補に成ってしまった程です。
この様に、今や世界中に蔓延している陰謀論や反ワクチン運動や極右運動は、西側諸国で反政府運動を扇動して、これまでの欧米的価値観が、闇の勢力による陰謀であり、それと戦っているのがロシアであるという、みえみえのロシアの情報機関による情報操作なのに、主要なトランプ支持者であるQアノン信者達も、反ワクチン運動家も日本のネトウヨ達も、自分達がロシアに操られている事には全く気付いていないようです。
彼らが、ロシア情報局に洗脳されているのかどうかを見分ける簡単な方法は、彼らが親ロシアであるかどうかです。
そう言う意味では、先のヨーロッパの極右運動もアメリカのQアノンも当然ながら親ロシアであるだけでなく、日本のネトウヨも反ワクチン運動も衆議院で議席をとった新政党もみんな見事に親ロシアなのです。
つまり、彼らの殆どがロシア製の荒唐無稽な陰謀論に洗脳されているか、その陰謀論の世界観を深く信じて、その信念に基いて、闇の政府との戦いや、反政府運動や、反ワクチン運動や、政治運動などを展開しているのです。
要するに、彼らの殆どは、無自覚にロシアの手先としてロシアに有利な活動をしてしまっていると言う事です。
この様に欧米諸国の政府が全て闇の政府の手先で、ロシアのプーチンこそがそれに立ち向かう戦士であるいう設定自体が、よく考えれば、ロシアだけに都合の良い、非現実的な作り話であることは直ぐに分かるはずですが、そのような見え透いた作り話に簡単に騙されしまう単純な人々と、騙されない人々との間に深刻な分断が生じ、互いに憎み合う様に仕組まれているのが、ロシアの情報操作の巧妙なところです。
しかし、このような偽の陰謀論に簡単に騙されて信じ込む人々と、逆に陰謀論そのものを馬鹿げていると思って頭から否定する人々に分断されればされるほど、もし世界が本当に陰謀で動いているのだとすれば、今の状態は本当の陰謀を企てている人々からすれば1番都合の良い状況であると言えるのかも知れません。
つまり、全く荒唐無稽な陰謀論が蔓延すればするほど、本当の陰謀には誰も気付かないし、そもそも陰謀論自体を誰も信じなくなるからです。
一部の単純な人々を除いて、多くの良識ある人々は、やっぱり陰謀論なんて信じる人々は頭がおかしいと思います。そして、その陰謀論の内容が明らかなガセネタである事が判明したら、もはや、陰謀論に対する世間の嘲笑は決定的になります。
それこそが、今のように荒唐無稽な陰謀論の蔓延が放置されている真の理由なのです。つまり、陰謀論を語れば語る程、陰謀論を語るのはちょっと変な人であると思われるように仕組まれている訳です。
そうやって、あらゆる陰謀論は誰にも相手にされなくなり、結果的に誰にも邪魔されずに、本当の陰謀は着実に実行されていくという訳です。
では、そもそもの本来の陰謀とは何かについては、次回お話ししたいと 思います。