欧米先進国が難民を受け入れて来たのは、そうすることに何らかのメリットがあるから、そうしてきた訳ではありません。
人類の良識と良心に基づいて、純粋に人道的な見地から行われてきた訳であります。
もちろん、そうすることで、国内の治安は悪化するかもしれませんし、経済的な負担も増えるかもしれません。
それを承知で、困っている人々を見殺しにしておくのは非人道的であるという見地から、自国の不利益を承知で、難民を受け入れて来たわけです。
人類はようやく国家レベルでも自分達の損得を超えて、困っている他者の為に手を尽くすべしというコンセンサスを育みつつあったとも言えます。
そうなって来れたのも、人道的な政策や行動の為には、自分達の不利益や不便も多少は我慢しようという良心と良識に満ちた人々が世界中に沢山いたからだと思います。
所が、世の中には、そういう心ある人々ばかりが居るわけではありません。自分の利益と自分の都合と自分の快適さだけを最優先する自己中で我儘な人々も少ながらず居たのです。
ただ、これまでは、そういう自己中で我儘な連中も、表向きには「そういう態度ってやっぱり人間としてちょっと恥ずかしいよね!?」という風潮だったので、本音を言わずにひっそりとなりを潜めていたとも言えます。
所が、トランプという人は、そういう人間として恥ずかしい本音の部分を臆面もなくさらけ出し、しかもそれがあたかも正論であるかの如く主張し、これまでの間違いは、そういう馬鹿げたお人好しの政策によるものだとして、それらを徹底的に否定し、純粋に自分たちの利益と都合と快適さだけを追求した政策に方向転換しよう!と訴えたわけでした。
そのような、自己中で我儘な主張は多くの人々が内心思ってはいたけど、恥ずかしくて公言できなかっただけですが、トランプ氏はそのような人間としての恥知らずな主張にお墨付きを与え、そういう考えは何も間違ってはおらず、それこそがこの国を立て直す原動力になると主張したわけです。
その主張に対して、今までは、人道的な見地から、自分の本音も言えずに我慢してきた多くの人々が一気に飛びつき、あっと言う間に、全米を席巻して、今やアメリカの半数の人々が、そのような恥知らずな主張と政策を支持するようになっています。
そのような我儘が許されるのなら、正直に人道的な見地から我慢を重ねてきた人々まで、もう自分達だけ我慢するのは、バカバカしいと思うようになっても仕方がないと思います。
ヨーロッパ各国で難民を受け入れて我慢を重ねてきた人々も、なんで自分達だけ我慢する必要があるのかと、そのうち反対派の方が優勢を占めるようになり、世界各国でトランプの様な、人間が本来持っている自己中で我儘な本音を代弁する指導者が人気を博するようになり、ようやく世界規模で育ちつつあった人道的な見地に基づく政策など、吹き飛んでしまう可能性すら出てきました。
本来、自己中で我儘な欲求を内に秘めた人類が、長い年月をかけてようやく育んできた他者に対する思いやりと、それを反映した国家レベルでの人道的な政策が、人間としての野蛮な本音を助長する人間達によって蹴散らされて踏みつけにされて、再び多くの人々を苦難の道へと放り出そうしているのを黙って傍観するしかないのは誠に悔しい限りであります。
と同時に、そういう人間の浅はかさがもたらす帰結を、あえて世界規模で経験させようとしている人々がいるような点に関しても、そのやり方に疑問を感じざるを言えません。