サヤ取り解説シリーズを連載していますが、一連の分析の流れを示して最終回
となります。(次がラストか・・)
全ての記事が連結しているので過去分は下記記事を参照してください (^-^)/
参考 : サヤ取りを理解しませんか?
参考 : サヤ取りは値差の特徴を重視!
参考 : サヤ取りを行う理由 その1
参考 : サヤ取りを行う理由 その2
参考 : サヤ取りを攻略する その1
参考 : サヤ取りを攻略する その2
ということで最終回は「サヤ取りの攻略」です。サヤ取りは銘柄間の値差とい
う元の時系列データとは違う時系列データを扱うことになります。そして、元
の時系列データとは違う時系列データであることから、通常の分析とは異なる
分析が必要になり分析工程が通常よりも多くなるのです。それを認識しないま
ま通常の分析を行ってしまいますと間違った分析結果を導いてしまうのですね
え (ノω・、)
【想定と現実】
値差と値差の階差を活用して最適なペアを探す術を前回までに解説してきまし
たが、今回からは「サヤ取り」からどのように利益を得るかについて解説していき
ます。まず、
サヤ取りの本来のスタンスは値段の歪みを狙う (^-^)/
ことです。ただ、このスタンスは一物一価という条件下では有効ですが期間が違
ったり(限月間サヤ取り)、そもそも一物ではなく異なる物の値段の差(異銘柄間
サヤ取り)となれば適切な狙い方ではない可能性もあります。つまり、
サヤ取りといっても軸と相手となる銘柄の時系列データが
値差という時系列データに置き換わっただけ (ノ゚ο゚)ノ
であり、通常の単一銘柄によるアウトライトと大差はなかったりもするのですねえ。
ただ、狙い方としては大差はありませんが前回も解説したように、
値差を導く銘柄の変動との相関関係が薄いペアであれば、
ポートフォリオ上はメリットがある
わけです。そして、ポートフォリオ的に意義があるということは1つの「サヤ取り」に
対する想定でもあるわけです。ここで想定という言葉がでてきましたが、一般的
に「サヤ取りとしての値差」に対して想定されることがいくつかあります。それは、
ⅰ) 値差はポートフォリオ的に活用度合いが高い
ⅱ) 値差は同じ区間を行き来する
ⅲ) 値差は正規分布であり統計的手法が有効である
といったところでしょうか。ⅰは既に解説済みですよね!ではⅱとⅲはどうなので
しょうか?先に答えを述べますと、
ⅱに対して ⇒ 実際には値差は同じ区間を行き来しない(区間を変えることもある)
ⅲに対して ⇒ 値差は正規分布ではない(そもそも値差は離散型の値)
となります。ⅲに対しては時系列データの扱いと確率分布への理解が単に足りない
ことからの勘違いなのですが実に多くの方が間違えていることです。また、値差の対
数を取得して連続型にしたとしても正規分布にはならないでしょう。ということから、
① 値差にも上下トレンドがあることからトレンド分析も必要である可能性
② 正規分布とは別に想定する分布を考慮した統計的アプローチが必要である可能性
となります。①・②を考慮しない場合は、
地道に稼ぐことが出来ますが、その稼ぎを全て吹き飛ばす
大きな損失がいつか生じる可能性が高くなる
ことになります。サヤ取りであろうがなかろうが、サヤ取りの現実は銘柄単体で売買す
るのと大差はないことになる可能性が高いわけですよ。そういった経験はありませんか?
ではどうしたら良いのでしょうかねえ・・?
【値差に対する分析を考える】
考えてしまうことは、「価格の歪みを狙った楽な売買がしたい」ということでしょう。でも、
難しいのが実情です。しかし、限りなく「価格の歪み」に近い状態を検出するというのは
可能です。それには、
・ トレンド分析を必要としない
・ 他の分布を考慮しなくても良い
分析方法を考えなくてはいけません。非常に難しいことですねえ。これに挑戦して破綻
したヘッジファンドも多いですし・・
でも方法論が全くないというわけではありません。1つの可能性として、
値差の階差と軸(相手)銘柄の階差との関係
を用いることで道が示されると思います。まず「上記の関係」を分析してみますと以下の
関係が導かれるはずです。
値差の階差は軸銘柄(相手銘柄に対しても)の値差よりも
小さくなる。ただし・・
限月間の値差は軸銘柄の変動よりも小さくなりますが、
異銘柄間の値差は軸銘柄の変動よりも多少小さいぐらい
実際に軸銘柄と値差の階差をグラフ化したものを観察してみましょう♪
■ 大同特殊鋼を軸銘柄
■ NY原油4月限を軸銘柄
■ 住友化学を軸銘柄
確かに軸銘柄の階差より値差の階差の方が小さい場合が多くあることがわかります。
そして、限月間と異銘柄間の関係も特性に従う形になっています。では、値差の階差
の方が小さいことが何を示すかが重要ですね (^O^)/
それは、
値差の変動の方が軸銘柄よりも鈍い (ノ゚ο゚)ノ
ということを示すことになります。そして、どの程度値差の方が変動が小さいかで、
鈍い度合 Σ(゚д゚;)
が測れるわけです。そして、ここで思い出してほしいのが、
値差の変動と軸(相手)銘柄の変動との
相関が低いペアが最適 (ノ゚ο゚)ノ
ということです。最適なペアの場合、例えば軸銘柄が上昇トレンドを形成していると
しましょう。相関が低いのであれば値差には上昇トレンドが生じている可能性は低く
なります。(ただし、相関係数が「0」でない限り完璧に上昇トレンドが生じないわけで
はありません)
値差の方が動きが鈍くて、軸(相手)銘柄との相関が低いということは、
値差の可動領域は狭い ∑ヾ( ̄0 ̄;ノ
ことになります。値差の動きが鈍ければ鈍いほど可動領域が定まってくるわけです。
こうなると正規分布に従っていなくても通常の可動領域と異常な可動領域との区別
もつきやすくなります。
逆に、値差の動きが軸(相手)銘柄と大きく違わない場合は可動領域も広くなってしま
い、通常・異常領域の区別がつきにくくなると考えられます。また、可動領域が広くな
ると見かけの上下トレンドが値差に生まれます。よって、
可動領域狭 ⇒ 一般的な統計アプローチが効きやすい
可動領域広 ⇒ 一般的な統計アプローチが効きにくい
となります。ちょっと論理が飛躍してますが時間的・労力的に解説が厳しいのでご勘弁
ちなみに、一般的な統計アプローチとは「標準偏差」を活用した逆張り戦略ということです。
ポイントは、
ⅰ) 値差変動と軸(相手)銘柄の変動との相関が低い
ⅱ) 値差の可動領域が狭い
の二点です。「価格の歪み」とは「異常値」ですよね?異常値を演出させるかはペアの変動
特性に依存するしかないのですよ。そして、こうした条件を満たしやすペアは限月間の値差
となります。異銘柄間で条件を満たすペアを探すことは難しいのですねえ。生き残っている
現株のサヤ取り専門投資家が職人と言われる所以でもあります (^-^)/
似非現株の社取り専門家の方が推奨するペアは多くが上記二点の条件を満たしていませ
んよ。
もちろん、上記二点の条件によって必ずしも有利になるとは断言できませんが、
・ 稼げたペア・稼げなかったペア
・ 長く使えた(使っている)ペア・数回の売買しかできなかったペア
を再度調べてみてください。稼げたペア・長く使えているペアの多くは二点の条件に従って
いるはずです。今回例題として扱っているペアを判定してみますと、
・ 大同特殊鋼ペア ⇒ 可動領域が広く扱いにくい(条件ⅱが不適合)
・ NY原油限月間 ⇒ 可動領域が狭く適合している
・ 住友化学ペア ⇒ 可動領域が広く扱いにくい(条件ⅱが不適合)
となるかと思います。期間によってももちろん変わりますが、株式において最適なペアを探
すってのは金鉱を探すに等しく探し当てた場合は誰にも教えることはないでしょう。というこ
とで、株式のサヤ取り情報を提供している方々の情報の質ってのは・・・・わかりますよね?
ちなみに、二点の条件に従わないペアにはトレンド分析と分布特性を銘柄単体を売買する
のと同じく把握する必要があります。この場合は逆張り戦略は難しく、順張り戦略が中心に
なる場合が多いのです。
【まとめ】
値差の特性によって戦略が変わってくる可能性を今回は解説しました。また、今回の内容
でも「使えるペア」と「使いにくいペア」とペアの選別を再度行うことになりました。これは、
ペアの重要性を認識することにもなるのですが、
サヤ取りを行うに適した環境とは?
を考える事にもなるのです。値差を求めればサヤ取りが出来るわけではないのですねえ。
サヤ取りの本来のスタンスである「価格の歪みを狙う」のであれば、それを実行に移せる適
した環境の値差を探さないといけないということです。最も、限月間であれば簡単なのです
けどね (;^_^A
次回は予定では最終回になりま~す (^-^)/