昨年末に地質学会の地質ニュースを見ていたら,逝去者リストに古儀君男さんの名があり驚いて,金沢時代の古儀さんの同級生であるSNさんにメールで問い合わせたら,数年前から膵臓腫瘍を患っておられ最後の著書「海外一人見て歩き」(合同フォレスト2023.4.12)の最後に顛末が書いてあることを教えてもらった.SNさんに倣って古儀さんの5冊の単著書籍を入手し眺めている.

 

まずは「海外一人見て歩き」を一通り読んだ.第一章:予期せぬハプニング(82頁)いきなりギリシャで犬に噛まれた話で狂犬病の可能性があったので対処するための行動は結構読ませたが,他の話(全部で20)はまあ海外あるあるみたいな印象.第二章:人々との意外な出会い(38頁)は具体的に各国人との出会いの話で興味深い.第三章:異国の地で日本を考える(32頁)では基本的なものの考え方の違いに出会ったことが記されていて,ニュージーランドでは無駄な道を作らずにゆっくり暮している状況とか,日本と対照的な状況が書かれていて勉強になった.第四章:一人旅のコツ(28頁)この部分を読んで古儀さんが緻密な性格であることを認識,とても私には真似できない.あとがきにかえて(17頁)2021年に体調不良を感じて検査を受けたところ膵臓癌が発見され(1b),身辺整理をして手術を受けたらIVaとのこと.いろいろなデータを見て体調不良の理由が判って納得,というのが古儀さんらしい.金沢時代(7年間)のことを強く懐かしんでおられる.私は同じゼミで3年間一緒だったが穏やかでニコニコしていて長生きしそうな感じがしていたが,結構芯はある人だった印象.

 

古儀さんは1977年に修士を終えられ京都府の高校教員として定年まで勤められ,定年後に海外旅行にはまってその関係の著書を3冊書かれた.1983年に修論の内容を地質学雑誌に発表しておられたが,今回初めて読んでみた.古儀さんは1977年に学会発表で設楽火山岩類がコールドロンをなすことを発表しておられたが,同じころ団体研究では違った見解が出されており少し時間がかかったがきちんとした論文として発表されたものだ.読んでみて,海外旅行のやり方でも感じた緻密で全体を見通す力が半端なく当方はとても敵わない.あれだけ構造が複雑な処で鳳来寺火山岩類の18ユニットの特徴を的確に捉えて(あいまいな部分はあっても)全体的な層序を立て,コールドロン形成とその後の活動等をきちんと記載してあり残る仕事だと思った.

 

もう一冊読んでおきたいのは,「核のゴミ:「地層処分」は10万年の安全を保障できるか?!」合同出版,2021.6.15.

 

ともかくまだ70過ぎで早すぎた.ご冥福をお祈りいたします.

 

PS  「核のゴミ:「地層処分」は10万年の安全を保障できるか?!」合同出版,を一通り読んだ.さすが勉強会の講師をされただけあって,基本的な処は細かく勉強されている.それにしても,政府を中心に電力業界も原子力を手放す気配がないが,核のゴミ処分は日本では非常に厳しいように思われ,本当にどうするつもりなのかと思う.10年程度では切実さは少ないだろうが,100年単位ではじわじわ重荷になってきそうだ.(2024.2.7)