つくばに居られる知人から姫路城の石垣の石材についての問い合わせ。四国旅行の途中で寄られたとのこと。
殆どが流紋岩質溶結凝灰岩とのことだが、大半は白っぽい石材で、一部に黒っぽいものがある。
姫路城は何度か行っているが、石垣の石材は注意して見ていなかった。
送って戴いたパンフレットによると、白っぽいものは鬢櫛山(姫路市西部)の尾根筋に出ているもので、黒っぽいものは広峰ー増位山山系(姫路市北東部)のもの、とのこと。いずれも大規模火砕流堆積物で溶結したものだが、黒い方のものはvitrophyre(ガラス質溶結凝灰岩)ではないかと思った。この部分の地質図は一部、地質調査所発行の龍野図幅に含まれるが、特にガラス質の点について記載はされていないようだった。一度現地で叩いて見て薄片も見たい処だが、メチャ暑いし、偏光顕微鏡は返却してしまったし、ちょっと残念な処ではある。
Vitrophyreは水付きの処で溶結作用が進んだのでは、という妄想を持っていたが、文献を少し調べてもそういう考え方の検討は見つからず、何故同じ溶結作用であのような黒いガラス質になるものとそうでないものがあるのか、イマイチ判らないまま。
何で私がvitrophyreのような言葉がホイと出てきたのか、Googlescholarで検索してもあまりパッとした文献が出てこない。思いついて、 'Aso vitrophyre'で検索すると、Lipman(1967)CMPが出てきて、少し思い出す。多分、1970年代前半に能登柳田村付近の火砕流堆積物を調査していて層の最下部に黒色ガラス質の溶結凝灰岩がでてきて(多分山崎正男先生に伺って)この文献に辿り着いたのだろうと思う。厚さが100mの火砕流堆積物だと最下部は20気圧程度の圧力が加わるので周囲に水が存在するとガラスの粘度が数桁下がり緻密なガラス状のvitrophyreになる、と勝手に納得したのだが、その後学会ではあまりこの手の議論がされているのかどうか、良く判らない。
PS 少し文献を調べてみた。MacDonald, Schminckeの教科書や火山の事典には見当たらない。Wohletz &Heikenの教科書にはobsidian とvitrophyreが並べて書かれていてvitrophyreの説明は'Igneous rock with a glassy groundmass'というもの。
旧い版の地学辞典には
「ガラス質石基を有する珪長質斑状火山岩。玻璃斑岩とも。外観はピッチストーンに類似。石基は暗黒色を呈し、微晶および晶子を含み、二次的に脱ガラス化しやすい。斑晶は、石英・サニデイン・斜長石・黒雲母・角閃石・オージャイトなどからなり、流紋岩と同様であるが、長石類が澄透であることを特徴とする。H.Vogelsang(1892)が命名。[山田直利]
とある。原典が出ている処が凄い。


