堀越叡(1979)地質雑を引用している文献を調べてみたら、この問題に別の観点からの文献があることを知った。
吉田明夫・瀬野徹三(1992)阿蘇火山の地学的成因. 火山。この論文の冒頭に堀越の指摘した火山フロントで阿蘇から霧島迄110kmを越える間何故火山が存在しないかという問題が取り上げられている。小林洋二(1986)や中村一明他(1987)は九州・パラオ海嶺の沈み込みによってマグマが上昇しにくい状況がつくられているためではないか、と指摘されている。小林(1986)は早速見たのだが具体的な機構は書かれていないようだ。
吉田・瀬野(1992)の議論は、阿蘇の下には深発地震面は到達しておらず、雲仙・金峰・阿蘇・九重・由布は沖縄トラフの延長に来てマントル上昇流でマグマが発生している、という考えのようだ。
より新しい深発地震面の論文を見ても、阿蘇の下にフィリピンスラブが到達しているかどうか、微妙な処(Hirose et al. 2008など)。深発地震を見ても、九州パラウ海嶺の沈み込みの影響は見て取れない。一方で、青野山、三瓶、大山等のアダカイトはスラブの溶融で生じていると考えられ(下部地殻溶融モデルは圧力不足で無理)、フィリピンプレートの沈み込みに伴う火山活動は霧島から続いているように思えるのだが。ちょっと暗礁に乗り上げた感じ。
瀬野徹三さんは2020年12月19日に70歳でお亡くなりになっていた。独特の雰囲気のある方だったが惜しまれる。
PS-1 日本火山学会講演予稿集(2026年秋季大会)を眺めていたら、P1-47で、「九州中央部および霧島における深部低周波地震の活動」馬場慧・栗原亮・相澤広記・松本聡・江本賢太郎、という発表があり、阿蘇と霧島の間にも深部低周波地震の活動があることが記されていた。ただ、ギャップの下で起きている深部低周波地震はモホ面より深く、活火山の地下でのそれがモホ面より浅いのとは異なっている。なかなか意味深で、地下深くでマグマの活動が生じているのか別のモデルが考えられるものか悩ましい処。(2026.10.19)
PS-2 同じく日本火山学会講演予稿集(2026年秋季大会)で、P1-55で、畑真紀他「ニュージーランド北島と九州の比較からみた島弧火山活動」というので、「九州では、これまでの電磁気学的研究により、火山地域と非火山地域に対応した深さ依存の比抵抗構造の不均質性が明らかになっており、スラブ由来流体の輸送が空間的に異なることが示唆されている(例:Hata et al., 2015,2017,2020)とあった。Hata et al.(2017)を見てみると、確かに地殻部分では非火山地域では地殻での比抵抗が大きくなっている(下図)。比抵抗が小さくなるのはマグマや流体の存在によると考えると、少なくとも火山ギャップの地殻内にはマグマ気はないということになる。それが何故かはまだ判らないが、いろいろな手法で制約できると面白い。
