2009年に出版になった頃、図書館で手にした記憶はあったのだが、今回入手して読んでみたら中身の記憶は殆どなかった。いづれにしても、著者が仙台から1979年頃琉球大に移られて、コツコツと進められた研究がひと繋がりの物語に纏められていく様子は、(あとがき)にあるように、「振り返れば楽しい一年弱」を読者として堪能する事ができた。
勿論、今回読んだのは過去の福徳岡ノ場噴火からの漂着軽石がどのように書かれているかに興味があったのだが、予想以上の情報が含まれていた。
一番驚いたのは、遺跡から出てくる軽石で、アルカリ岩質のものが広範囲に琉球列島各地の遺跡で現在でも見られ、その時代は7世紀後半との事。全岩化学組成では、今回や、1986年のものより少しシリカが低くアルカリが多いが、福徳岡ノ場か硫黄島付近で大噴火があったようだ。
7章で、軽石の海水成分を抜くために、ビーカーに軽石を入れて熱すると穏やかに煮ても角が削れて軽石は丸くなり、ビーカーの底に粉が溜まってくる、との事。「この作業をすると、時間の経過とともに次第に角が取れて丸くなっていく様子を、つい人間と重ねて見てしまう。」所々にこのような遊びがあって楽しめる。
10章は「漂流できなかった変わり種 材木状軽石」で、しんかい2000で沖縄トラフの水深1800mの小丘の頂部で見つかった巨大軽石ブロックが繊維状に伸びた気泡が特徴的で材木にそっくり。でwoody pumiceという有名な論文を書かれている。深い割に発泡度は63〜90%と高い。但し孤立空隙は4〜28%と低く、多くの気泡は透水性。水圧がかかってどの程度発泡度になるか計算してみたら含水量4wt%で水深1000mだと平衡を仮定して74%になる。まあ、あり得る発泡度のようだ。
いづれにしても、水中噴火(マグマ水蒸気爆発)の機構は、詳細に見たら分かって無いことか多いように思われ、軽石の発泡組織の多様性の記載と生成モデルの検討が進むと面白そうだ。
新着でMitch et al.(2022) EPSLでは、トンガのwest Mata海山の噴火では流出溶岩でimplosionが見られたとの事。発泡溶岩が冷えて気泡内圧が低くなって潰れたようだ。深さ1200m。
御本では、1924年、西表海底噴火で生じた軽石ラフト、渡島駒ヶ岳1929年噴火での軽石ラフト、等の経験も書かれている。また、一般向けの用語解説、簡単な実験方法、等も説明されている。
まえがき(3頁)
1章 海岸に漂着した軽石(3)
2章 西表海底火山(41)
3章 軽石に関わる用語(13)
4章 火山ガス(7)
5章 軽石の性質と判別法(13)
6章 北海道駒ヶ岳(17)
7章 福徳岡ノ場(41)
8章 西表島群発地震(27)
9章 遺跡から出てくる軽石(25)
10章 漂流できなかった変わり種 材木状軽石(33)
付録、◎野外観察の手引(11), ◎室内実験の手引(10)
あとがき(4)