今週はじめに,受け取って,興味あるタイトルが並んでいたので,早速読ませてもらった.5編だが,いずれも充実した内容で大いに勉強になり楽しませて頂いた.発行は,蒜山地質年代学研究所.
http://geohiruzen.co.jp/?p=577
最初に,地質データベースとして,「地形紹介No.1 空から見る吉備高原」(竹下)では,蒜山地質年代学研究所が取り組んでいる吉備高原について,ドローンにより高原面の高さからの空影で,見事にフラットな吉備高原を捉えていて,まさにドローンの有用性!という内容.
二番目は,この号一番の論文,乙藤先生の「日本列島に記録されるMMCO」.MMCOとはMiddle Miocene Climatic Optimamの略で,17-15Maの頃に中緯度地域で温暖期があったとされる.このレヴューでは”総合的かつ俯瞰的,かつ詳細な根拠づけ”が徹底的に行われているのが印象的だ.温暖期に海面上昇が20-140m(60m)程度生じ,吉備高原の範囲にあるこの時期の海成層(勝田層群,備北層群)の成因に海面上昇が関わったことについて検討が行われている.当方は昔,同じ時期の瀬戸内火山岩類の調査を行ったことがあるが,瀬戸内では土庄層群以外では,花崗岩類の基盤に直接火山岩類が載る場合が多く,瀬戸内地域では当時は海面上にあった部分が多かったと思うので,瀬戸内と津山等では相対的な基盤の上下変動があったのだろうかと思った.
三番目は里和・鈴木・中岡「薩摩半島南部海岸沿いに点在する阿多火砕流堆積物の粗粒岩相の岩相記載と定置温度の推定」.阿多火砕流は約11万年前に鹿児島湾南部の阿多北部カルデラから噴出した大規模火砕流堆積物で,薩摩半島,大隅半島に広く分布しているが,この研究では薩摩半島南部の海岸沿いの露頭に分布する粗粒岩相を3相に分類し,それらの岩片や本質物質,溶結した基質の残留磁化から堆積温度を決めている.大きな岩塊を含む粗粒岩相3では溶結が弱いが,岩塊自体は高温堆積を示しており十分な熱が残っていたことが示されている.この1m大の岩塊は暖まった火道壁から来たものだろうか?
四番目は技術報告として,澤田・紅野・中尾・郷津「炭酸塩岩のガラスビードを用いた蛍光X線分析」.炭酸塩は高温では分解してCO2を発生し,またガラスビードが失透(結晶化)し易いあるいは割れ易い等の問題があり,それらの条件を検討して信頼できる定量分析結果を得ている.狙ったら結果が出るまで粘り強く努力するのは頭が下がる.
最後は,地質データベース〔露頭紹介〕で,「No.4 岡山県東部の白亜系非海成層(硯石層)およびそれを覆う火山岩ー美作市上山地区ー」(井上).白亜紀火山岩類の下位を占める硯石層の産状について,渕尾川の川底の露頭を丁寧に紹介されている.思わず行ってみたくなる.この頁岩は’緻密・硬質’とあるが硯に使われたのだろうか.