マグマ溜まりや深成岩体の深さについて,LNB(Level of Neutral Buoyancy: Ryan, 1987)という考え方があるが,火山岩を見ているとあまり,この考え方は議論に出てこない.何故かと考えると,例えば,雲仙岳,有珠,伊豆大島等で,複数の異なる深さの膨張源が存在していたりすることがあるのかもしれない.ほぼ同じ化学組成のマグマだと結晶度によって若干は変化あるにしてもマグマの密度はそう変わらないだろうが,それが異なる深さに溜りを作るのは地殻の密度や物性(competencyみたいな)が不均質であるためと考えることができる.

そう思って,検索してみたら,やはり考えている人が居て,ちょっと古いが、Vigneresse and Clemens(2000)ではLNBは深成岩体の深さを必ずしも規制していない,と議論している.
彼等はLNBは深成岩体の深さを規制していない,という考えで,その根拠を3つ挙げている.
(1) 含水流紋岩質マグマの密度(2.2-2.5)は普通の大陸地殻の密度(2.6-2.9)よりも小さい.
(2) 玄武岩質マグマが噴火していること自体,マグマが密度中立に制御されていない事を示している.Takada (1989)さんの実験で,マグマが縦に繋がれば,大きい密度の流体が軽い媒体を通って貫入・噴火することが可能.
(3)花崗岩体は一般に負のブーゲ異常を示すが,もしマグマ溜まり状態で密度中立だったら,固化した花崗岩は重い筈なので,正のブーゲ異常を示すべき.このことは元々マグマ貫入時点で密度(浮力)中立ではなかったことを示している.

もっともな議論で,(1)はLNBよりも深くに深成岩体が定置することを示唆しており,(2),(3)はLNBよりも浅所に深成岩体が貫入する可能性を示唆している.最近あまり密度差に関連した議論を見ないけれどもっと突っ込んだ議論が出てくると面白そうだ.それともふた昔前の文献に感心しているのは時代に遅れすぎているのかも。