先日、本屋でたまたま見つけて読み始めたら、大当たり!

北アルプスの槍・穂高は始めとする主要な山々が第四紀~中生代のコールドロンと密接に関係していることを、ホームズ探偵役のハラヤマ教授とワトソン役の山本さんの掛け合いで解りやすく理解できるようになっている。主要な登山ルートを辿りながら重要な露頭での観察が描かれ、登山紀行を楽しみながら、地質の成り立ちが解きほぐされるので、地図を見ながら凄く楽しい読書であった。

全体は3部に分かれ、第一部「天空にそびえる巨大カルデラ伝説」を追う」では、槍・穂高山塊が溶結凝灰岩を主体としており広域火山灰を分布させた第四紀巨大カルデラを構成していたことが示される。この部分での登山調査ルートは3本で、上高地ー北穂高ーキレットー槍ヶ岳ー上高地、涸沢ー奥穂高ー西穂高ー上高地、明神周辺散策。

第二部「北アルプス地質迷宮紀行」ではやはり第四紀のコールドロンに底付し回転・隆起した黒部川花崗岩体、雲ノ平火山と黒部川の流路変更、古い花崗岩でできた薬師岳、笠ヶ岳、北アルプスの下に横たわる高温マグマ溜りと温泉、等々。ルートとしては、新穂高ー双六岳~雲ノ平ー高天原ー太郎平ー折立、笠ヶ岳物語、上高地ー蝶ヶ岳ー常念岳ー燕岳ー中房温泉、扇沢ー室堂ー剣沢ー剣岳ー室堂ー扇沢、扇沢ー爺ヶ岳登山口、八方池ー唐松岳ー五竜岳ー鹿島槍ヶ岳ー爺ヶ岳ー扇沢、の6コース。

第三部は残りの主要な山々の成り立ちが解説されている。雪倉岳・朝日岳、白馬三山、不帰ノ劍・唐松岳、針ノ木岳、水晶岳、鷲羽岳、樅沢岳、硫黄岳、立山、黒部五郎岳。

10年余り前に原山さんが書かれた『超火山[槍・穂高]』は読んだはずなのに全然印象に残っていないが、今回は、ワトソン役がいるおかげか凄く頭に入りやすく、その学術的な意味も今回初めてよく理解できた。本当に学会賞ものだと思う。主要な調査結果は、5万分の1地質図幅「上高地」、「槍ヶ岳」、「立山」と幾つかの国際誌論文と和文誌論文として発表されている。

本当に、北アルプスは火成岩の世界であるし、プレート境界に接していることもあり、地殻変動、火山活動が活発だ。南アルプスは付加体、中央アルプスは白亜紀花崗岩の世界で、地下の構造の比較論がされると面白そうだ。南アルプスはジオパークが立ち上がっているので、同じような地質ルートガイドが欲しいところ。

ps 実は当方、金沢大に居た時(1973年頃)に山崎正男先生に付いた金子君の調査で、平湯の西の高原を作る高原火砕流を3人で2回ジープで走り見た。あの更新世の火砕流がこの本で取り上げられている槍ヶ岳・穂高コールドロンから噴出したものだった。あの当時は給源については全然判らなかったのだが、このように大規模なものであったとは・・・

ps2 上高地図幅でみると、上宝火砕流や丹生川火砕流は、槍・穂高コールドロンより新しく、前者の給源は平湯近くの貝塩給源火道とされている。

ps3 金沢大では、1980年頃、上宝火砕流について升田健藏さんが調査された。