上質な論文を咀嚼して得られる満足感は、上質の料理を食べた後体が暖まって得られる満足感のように幸せなものだ。この論文は昨年出された時にDLして印刷していながら読む機会がないままだったのだが、最近著者から別刷りを送って頂いて読んでみて、詳細な記載が説得的なモデルで説明され読後の満足感は大きい。

Tomiya, A., Miyagi, I., Saito, G., Geshi, N. (2013) Short time scales of magma-mixing processes prior to the 2011 eruption of Shinmoedake volcano, Kirishima volcanic group, Japan. Bulletin Volcanology, 75, 750. *2

主なデータは磁鉄鉱斑晶のMg, Ti, Alの累帯構造で、それらがマグマ混合に伴う元素拡散によるものであること、そのタイムスケールが比較的短いもので、噴火直前の地球物理学的観測と照らしてみてマグマ溜りの膨張や地震活動とは対応せず、噴火直前のマグマ溜りのOverturnに対応している可能性を示唆している。

実際には磁鉄鉱斑晶は、組成累帯構造から,A0, A1, A1', B, B', X?に分類され、夫々マグマ混合の異なる段階に対応していることが示される。A0が低温端成分マグマに対応し、Xは高温マグマに対応する。チタン鉄鉱はその化学組成から、A0, A1に対応するものが認められ、B、Xでは不安定であったと考えられている。温度はA0で875℃、A1斑晶縁で950℃と見積もられている。

磁鉄鉱の累帯構造はMgとTi, Alでは異なるプロファイルであり、結晶成長によるものではなく、元素拡散によって生じたことが示される。拡散係数は意外とMgについては良い実測値がないことが指摘されているが、Fe2+の拡散プロファイルと対応していることから推定されている。マグマ混合は2つのステージに分けられ、混合1ではA1+B+Xが生じるものでタイムスケールとしては0.4-3days, 混合2はA0が加わるものでタイムスケールは10時間以内。後者は火道でのマグマ混合を示すと解釈されていて、前者がマグマ溜りのoverturnに伴うマグマ混合を示すと考えられている。
 
この論文のFigure 12,モデル図
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当方、成層マグマ溜りのoverturnについて勉強していなかったが、Ruprechht et al.(2008) G-cube, Woods & Cowen (2009) EPSL, Burgisser & Bergantz (2011) Natureなどて議論されているとのことで、噴火トリガーとも関連して重要なようだ。

この論文では準プリニー式噴出物を扱ったものだが、後から出た火口溶岩でどうなっているか(Mtの累帯構造)興味が持たれる*1。今は膨張気味なので火口に行くのは難しいだろうが、半年前に観測で火口縁に入った人達は火口溶岩をサンプリングされていないものだろうか?またolivineの累帯構造については触れられているが、輝石や斜長石の累帯構造についてどのような解釈が可能なものか、当方も斜長石については学会発表まではしているのだがその整合性を検討してみたい。

*1 著者に問い合わせた処、噴火予知連会報に既に発表されているとのことで、火口溶岩では比較的短期間に焼き鈍しが生じていることが示されている。 http://www.seisvol.kishou.go.jp/tokyo/STOCK/kaisetsu/CCPVE/Report/110/kaiho_110_33.pdf

*2 Springerでhtmlの本文が公開されていた. http://link.springer.com/article/10.1007/s00445-013-0750-1/fulltext.html