昨日は静岡県地震防災センターで行われた、自然災害科学中部地区研究集会と、ふじのくに防災フェロー養成講座シンポジウム「第一期から第二期に向けて」に参加した。
それぞれの内容はビデオ撮影されており,いずれUploadされるかと思うのでここでは簡単な印象等を記す。
最初の研究集会は自然災害研究協議会中部地区部会と静岡大学防災総合センターが共催して行われたものだが、以前継続され中断されていたものが久しぶりに実施されたとの紹介が部会長の名大中野先生の挨拶で述べられた。一人15分で17件の発表が行われた。約半分の9件はふじのくに防災フェローの修了研修生の発表だった。
修了研修はそれぞれ勤務を持った厳しい条件の中で課題に取り組み身につけた成果を発表され、防災の基礎を身につけるという意味で成果が十分に上がっている印象を受けた。

桑原雅典氏は昨年の東北沖巨大地震の前10年間のM>6の余震系列の解析を行うことにより、巨大地震の震源域の余震減衰が遅いことを地図に示しており面白い結果を得ていた。
増澤武弘先生達は、海辺の松原を考える、として従来の人口的な純松林だけよりも、自然に生える混交林を生かした海岸の方が津波に強い可能性を示唆された。
北野利一さんは高潮の過去のデータの生かし方について、「過去は未来の鍵と言えるのか?」という意味のことを「物事には賞味期限がある可能性」として議論されたのが面白かった。
今回聞いた中で一番印象的だったのは中日本航空の千田良道さんのDSMによる斜面崩壊前の土塊移動の抽出に関する話で、崩壊前に斜面がずり落ちはじめる前兆を捉える可能性があるようだ。
諸橋良さんの話はやはり崩壊が予想される斜面の地形解析が話されたのだが、どの程度の危険性なのか(10年以内に50%以上なのか、1000年以内に10%程度なのか)の評価がほしいように思った。
遠山忠昭さんは静岡県の気象災害について気象資料からその特徴を議論していたが、意外だったのは低気圧の大雨に特徴的な時間帯がある、とのことで、静岡県では夜中に最大降雨が出る確率が高いとのこと。多分温帯低気圧の発生機構に関係しているのだろうが,素人としては不思議な感じである。
牛山素行・横幕早季の東日本大震災に伴う犠牲者の特徴、2万人近い犠牲があった一方、あれだけの津波に襲われながら90%の人は逃げおおせたことはある程度防災の効果があった可能性があることは過去の災害との比較でうなずけるものだった。
午後の7件は防災教育・防災計画に関するものだった。
鈴木富男さんの土肥付近の津波史跡のまとめはこれまであまり注目されなかった記録を取りまとめたもので観光資源になることが期待されそうだ。
上西智紀さんは伊豆総合高校でのジオパーク教育の紹介だったが、結構生徒達への関心を深めると言う点でジレンマがあるとのこと。思ったのはやはり伊豆中央部では火山・地震といっても災害の切実感が乏しいのだろうということで、むしろ狩野川台風のような過去の水害等を取り上げた方が切実感では高まるように思った。
横幕早季・大森康智・牛山素行・増田俊明さんたちは、ふじのくに防災フェロー養成講座の構築について、で、印象的だったのは横幕さんのプレゼンの上手さだった。聴衆の目を見て余裕をもって紹介されるとなかなか説得的だった。
15時40分からはないふるホールで、ふじのくに防災フェロー養成講座シンポジウムがひらかれた。1年目の総括と2年目にどのように取り組むか。
基調講演は野津憲治先生が「東日本大震災が起きて見えてきたこと:3:11の悲劇を明日に生かす」というタイトルで話された。1.M9を発想できなかった理学の責任、2.安全神話の中で事故対応できなかった工学の責任、3.これらの責を負う固体地球科学と原子力工学の共通項、について話され、国家100年の計は教育にあり、という話だった。1万人以上が犠牲になる災害は日本では100年に1度の頻度で生じているとのこと。

引き続くパネルデイスカッションは牛山素行先生の司会の下、野津・増田・望月政俊・上西・小林正人・諸橋の6名が1年を経過した時点での感想・問題点等を提案された。

最後に増田俊明防災総合センター長から、センター長自身が受講して大変ヘビーな内容だった講座を切り抜けた受講生へねぎらいの言葉があり,また,この防災フェロー養成講座には多大の労力と税金が投入されているので、今後,修了生・関係者が一丸になって県民に防災研修の内容を還元するべく努力するよう、との檄が述べられた。

1年間,この講座に関係させてもらった印象としては,
(1)受講生は夫々の職場で問題意識を持って防災にも熱心に取り組んでおられ私は授業での質問でたじたじとなることが多かった.
(2)静岡県は防災士が既に1250名もおられるとのことで,この面で先進的でありこの講座がもう一段高いレベルの防災フェローで自ら先端のデータを扱って状況判断ができるように,という趣旨は極めて有用だろうと思った.
(3)一方で,防災というのは負の側面があるため,切実感があれば有効だがそれが時間と共に薄れた場合どのように維持するのか,その点で片田先生の釜石での取り組みは極めて参考になった.
ともかく熱心な受講生や多彩な先生方と接することができ又有能な事務方の支援等を受け印象深い1年でした.多謝.