今日午後、名古屋大学環境学研究科地震火山・防災研究センター主催で「2011年3月11日東北地方太平洋沖地震緊急検討会」が開かれた。環境総合館レクチャーホール(100名程度)が立ち見がでる盛況だった。
 
まず、山岡センター長の提案で参加者全員起立して犠牲者への黙禱を行った。
 
全体としての印象は、地震学、地形・地質、測地など、今回の地震現象のScienceについて専門の垣根なく概要から最先端まで総合的な検討が行われ、討論も時間不足でカットせざるを得ないほどであった。背景に名古屋大のセンターの日頃からの取り組みが伺えた。
 
usa_hakaseさんが名大のURLサイトを紹介されていました。http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/INFO/tohoku20110311/index.html 今日の講演内容はこのサイトを見れば良い。以下は個人的覚書です。
 
最初にセンター長の簡単な挨拶があり、今回の地震に伴う多様な災害の実態があるが、ここでは地震のScienceについて判る範囲で取りまとめ議論する勉強会であることが述べられた。参加者は研究者だけでなく行政やマスコミ関係者もおられ’NSLルール’で行いたい、とのことだった。
 
NSLルール?と思ったが、その場で紹介されたように「勉強会で聞いた話題はそのまま記事や放送には用い
ない。用いる場合には改めて取材を申し込む。」というNagoya Saving Livesルールだそうだ。名古屋大防災センターでは2000年頃からマスコミや行政と研究者が意思疎通を図る勉強会を開かれており、今回の検討会もその延長にあることを知った。
 
最初の講演は山岡さんの「地震の概要と各機関の観測解析結果」。これまで公開されているデータの取りまとめと断って、震度分布、マグニチュードの時間変化、津波警報、余震、前震、地殻変動、断層モデル、余効変動、津波逆伝播解析、震源解析、地震前固着モデル、強震動解析、長周期震動、誘発地震、国の地震長期評価、貞観地震について、等網羅的に各研究機関の結果の紹介があった。
 
沢山の議論が行われたが、私は地震学者の顔が判らないのが残念。Mが大きくなった原因の連動の確率について山岡さんは、単なる連動だけでなくカスケードモデル、隣りが外れたらさらに中心部が大きくずれて、中心部で最大40mを超えるすべりが生じたことが今回の場合可能性があることを指摘された。
 
専門の方から、今回の予測に失敗したことについての意見を求められ、山岡さんは、現在の観測レベルではすべり摩擦や応力状態は判らないので困難であることを述べられた。古本さんは今回の断層面積から考えると20m以上のすべりは十分ありうることが指摘された。
 
2番目の講演は、「貞観地震と東北日本の地形学的特徴」として二名の研究員の方の話。
 
まず松多信尚さんの地形学的な検討について、海岸段丘の分布からは下北半島等で隆起が継続しているはず(例えば、小池ほか、2001)で、一方GPSでの測地で継続的な沈降があり、今回の地震でも沈降しており、この後の回復(余効)で隆起する可能性が指摘された。
 
杉戸信彦さんは、主に津波堆積物からみた東北地方太平洋岸の地震活動について述べた。1933年、1896年、1793年、1677年、1611年等があるが、今回の地震に匹敵するのは貞観、869年のみでえあること、貞観地震のM=8.4 は最小見積もりであることについて説明があった。この時の津波堆積物の検討(宍倉ほか2007)では東北日本東海岸は必ずしも津波堆積物が残りやすくはなく貞観の分布範囲は200㎞×100㎞×7mとしてM=8.4とされているがそれより広がっていた可能性があるとのこと。北海道でのNanayama et al.(2003),日向灘~東海(Furumura, 2011)等の調査が紹介された。
 
3番目は鷺谷さんの「地震活動、GPSでみた変動」。
 
東北日本の震源分布を時系列でみると、3月9日の震源と同じ部分で2月中旬以降地震が起きていたことが指摘された。1月から通してみると、1月にもM4台のものがあり、2月中旬でM5台、3月9日でM7.3とMが増加。但し、3月9日以降GPSでみて特に変動が加速することはなかったとのこと。東海地震で可能性が考えられている、直前の地殻変動は今回の地震では特に明瞭ではなかったようだ。
 
GPSでは本震の後のゆっくりした変動(余効変動)が面的に捉えられており、地域性が認められた。これと関連してプレート境界のすべり収支(Kawasaki, 2001)について触れられた。30%が本震で解放され、余効すべりでどの程度解放されているかが判っていないようだった(Yamanaka & Kikuchi, 2004)(専門外できちんと理解できず)。
 
4番目の講演も二名によるものでタイトルは「地震時のプレート境界のすべりと地震の誘発可能性」。
 
まず、伊藤武男さんが、プレート境界のすべりモデルについて、最大すべり量はUSGSは35m、Caltechは40m、名大は38m。名大の改善されたモデルでは東側の浅い部分に集中して、200×100㎞が大きく動くモデルとなっている。過去のアスペリテイと重複させて見せたが、北側の東に寄った分布と南側の西に寄った分布の間の宮城沖の部分をまたいでいる。地震発生後8時間のすべり量は南側が大きくなっている。
 
田所敬一さんは、誘発可能性について。応力分布変化の計算結果から、各活断層の評価を話された。養老・桑名断層は-、阿寺断層は+、東海地震、東南海地震は+だが、クーロン破壊強度の0.1-0.2%程度で殆ど影響がないとのこと。
 
誘発地震(定義はないとのことだが、余震以外の活動)については、NNE-SSWに並ぶ傾向があること、時間とともに並びの方向に発展(例えば箱根⇒丹那、飛騨)、EW引っ張りの正断層、火山地域との対応。地震発生層の厚さ分布(伊藤2008防災研年報)の薄い部分で誘発地震が発生している傾向があるとのこと。
 
ここまでで、16時15分になり、私は新幹線で富士へ行ってレンタカー(19時まで)に間に合うために退出。
 
後の講演のタイトル、聴けず残念!
5. 杉戸信彦・松多信尚「長野県・新潟県境付近の地震に伴う地表変状(速報)
6. 橋本千尋「GPSから推定したプレート境界のすべり・固着状態」
 
今回の各専門家の話を聞き、勉強になると同時にさらに多くの疑問がわき上がってきた。
 
例えば、
1.断層変位モデルでは仙台沖の200×100㎞の中心で40m近いすべりがあるなど集中して大きなすべりが生じているが、M=9のエネルギーのどの程度があの部分に集中したのか。
2.余震分布は正確に従来のプレート境界断層と一致しているのか?二枚断層はないのか(←素人考え)
3.3.月9日M=7.3,3月10日M=6.8が前震とされるが、地殻変動では前兆があまりなかった理由
などなど。質問したかったが、次から次に質問がありとても手をあげる気にならず。
4.太平洋プレートの沈み込み速度(10㎝/年)を考えると、40mの変動でも高々400年で蓄積可能で、今回のすべり量(平均10-20m程度)は100-200年で調達できる。なぜ200年おきに巨大地震にならないか?1000年間での収支決算は?