地質学会の奨励賞を獲られたIkuo Katayamaさんの受賞挨拶を読むと,唐戸(2000)「レオロジーと地球科学」の精密科学としての地球科学に刺激されたことが書かれており,今更であるが最初から読んでみた.以前は途中でいやになってやめたのだが,世の中変わってしまったらしい.

古い人間には上部マントル低速度層は部分溶融によるLow Q,Vp,Vsで説明されるというのが常識だった.Karato(1986Nature)で部分溶融するとOlivine中の水がメルト中に吸われてOlivineが硬くなる話や,Hirth&Kohlstedt(1996EPSL)までは面白がってついていけていた.その後,この過程で部分溶融層では粘性が上りQ,Vp,Vsも大きくなってリソスフェアが生じる(つまり部分溶融の開始がアセノスフェアの下底ではなくリソスフェアの下底に対応)話は眉唾のような感じがしてしょうがなかったが,物性測定等で裏付けられてきているようだ(Stixrude,2005jgrなど).それにしても,mm以下のオーダーの鉱物物理で100km以上のオーダーのマントルを議論するのにまだ抵抗感は残る.野外で見られるm〜kmオーダーの様々な不均質性や組織・構造がどのように影響するかはすっ飛ばした議論のように見えるのだが.

しかしマントル岩石学者は鉱物物理の議論に関してどのように考えているのだろうか.上記のKatayamaさんはその方向での研究も進めているようだがOlivine中に数100ppm以上の水が入っているとかんらん岩中の含水鉱物の安定性や,部分溶融の条件がそれで大きな影響を受けるのでこれまでの高圧実験や天然の岩石の記載の見直しが必要になるような気がするのだが.Mohole計画が次のIODPでいよいよ本格的なTargetになりつつあるが,鉱物物理の議論に対応できるようになっているだろうか.

最新のJour.Petrol.はマントルかんらん岩の特集号で,Griffin et al.(2009)らはSubContinental Lithospheric Mantleは地物観測から考えてDunite-Harzburgiteが基本で従来考えられていたDepleted LherzoliteはCraton marginで局所的にMetasomaticに作られたということを述べている.この分野でも地球物理学と岩石学がじっくり合体する(精密科学として検討される)ことで従来の考えが逆転してきているのに驚く.