平成30年司法試験再現答案 選択科目(倒産法)第1問 | 司法試験受験記録

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平成31年司法試験受験予定(3回目)。ロー卒。

設問1小問1

1 ⅮはA社に対して有する敷金返還請求権を自働債権として、毎月の賃料債務と相殺することができるか。

(1)敷金とは賃貸借契約終了後目的物明渡しまでの一切の賃借人の債務を担保する趣旨で差し入れられるものであるから、敷金返還請求権は賃貸借契約終了後目的物明渡し時にそれまでに生じた被担保債権を控除し、なお残額があることを条件に発生する。この意味で同請求権は停止条件付債権であるといえる。

 そうだとすれば、上記の条件が成就(民法127条1項参照)しない限り、具体的な敷金返還請求権は発生せず、これを自働債権として相殺を行うことはできない。

(2)本件についてみると、A社の破産手続開始後も、本件賃貸借契約は継続され、Ⅾはそのまま甲ビルを使用しているのであるから、上記の条件が成就したとはいえず、具体的な敷金返還請求権は未だ発生していない。

(3)したがって、ⅮはA社に対して有する敷金返還請求権を自働債権として、毎月の賃料債務と相殺することはできない。

2 では、相殺をすることができないⅮは、敷金返還請求権の保全のためにどのような法的手段を採ることができるか。

(1)敷金返還請求権のような停止条件付債権を有する者であっても、条件成就後における相殺に対する一定の期待があり、この期待は保護すべきである。

そこで、法は、停止条件付債権を有する者は、破産者に対する債務を弁済する場合には、後に相殺するため、その債権額の限度において弁済額の寄託を請求することができる(破産法(以下法令名略)70条前段)とした。

さらに、法は、賃借人保護の図る趣旨を明確に打ち出すため、敷金返還請求権を有する者が破産者に対する賃料債務を弁済する場合も、前段と同様とする(同後段)と改めて確認した。

そうだとすれば、敷金返還請求権を有する者が破産者に賃料債務を弁済するときは、その債権額の限度において弁済額の寄託を請求することができる。

(2)本件でも、Ⅾは敷金1000万円の限度において賃料債務の弁済額(月額100万円)の寄託を請求することができる。

(3)したがって、Ⅾは、敷金返還請求権の保全のため1000万円の限度において賃料債務の弁済額(月額100万円)の寄託を請求することができる。

設問1小問2

1 本問のような場合でも、設問1小問1で論じた敷金返還請求権の保全のための法的手段を採ることができるか。

(1)本件不動産は、平成20年夏頃Ⅽ銀行により抵当権が設定されており、その旨は登記により公示されている。

 一方、Ⅾが甲ビルを貸し渡されたのは平成23年4月1日である。

 そうだとすれば、Ⅾは抵当権者たるⅭ銀行に後れてもやむを得ず、Ⅾの相殺に対する期待は保護に値しない。

 したがって、この場合、Ⅾは、後の相殺のための寄託の請求をすることはできない。

設問2小問1

1 破産管財人Ⅹが採る必要のある手続について

(1)破産財団に属する財産の管理処分権は、破産管財人に属する(78条1項)。

 そして、破産管財人が、破産財団に属する財産を破産財団から放棄するためには、裁判所の許可を要する(同2項12号、なお同3項1号、破産規則25条も参照)。

(2)本件についてみると、本件不動産は破産財団を構成している。そうだとすれば、Ⅹがこれを破産財団から放棄するためには裁判所の許可を要する。

(3)したがって、Ⅹは上記の裁判所の許可を受ける必要がある。

2 本件不動産の帰属について

 破産財団から放棄された本件不動産は自由財産となり、破産者たるA社に帰属する。

設問2小問2

1 E信用金庫が採るべき手続について

(1)抵当権者たるE信用金庫は、破産手続開始後別除権者(2条10項、65条)となる。

そして、別除権者は、別除権行使によって弁済を受けることができない債権の額について、破産債権者として権利行使することができる(不足額責任主義、108条1項本文)。

ただし、別除権者が別除権を放棄するなどしたことにより、被担保債権の全部又は一部が担保されなくなった場合には、その債権の全部又は一部の額につき、破産債権者としてその権利を行使することができる(同但書)。

(2)本件の場合において、E信用金庫がA社の破産手続に参加して配当を受けるためには、本件不動産の別除権を放棄し、貸金債権4000万円の全部が担保されなくなったとして、198条3項所定の証明をする必要があると考える。

(3)したがって、E信用金庫は上記の手続を採るべきである。

2 手続の相手方

 上述のように本件不動産はA社に帰属しているところ、この場合、Eは誰に別除権の放棄をすべきか。

 取締役は少なくとも財産の管理処分に関わる部分については、会社との委任関係は終了している(民法653条2号参照)。また、必ずしも清算人になるとは限らない(会社法478条1項1号参照)。

 したがって、取締役に対して放棄するのは妥当ではなく、現実に清算人になった者に別除権の放棄をすべきである。

                                           以上(1987文字)

 
 

 

【雑感】

・設問1(1)多分差がつかない。

 

・設問1(2)いろいろ頭をよぎったが、結局よくわからなかったから、「なんも書いてないよりましか」程度の記述。

 

・設問2(1)本件不動産が100万円以下のわけがない(実際2億円)から、78条3項1号、規則25条は余事記載な気がする。

 

・設問2(2)別除権者ではあるものの、いわゆる準別除権者(65条2項、なお108条2項)である旨の指摘をしていない。最決H16.10.1(百選59事件かな?)の問題意識と結論だけは押さえていたが、理由付けは記憶の彼方だったので必死に会社法の条文めくってでっち上げた。毎年のように最近の判例が聞かれているから、最近の判例はチェックしていたけど、まさかこれが出るとはな…

 

・全体的にあれも書いてない、ここはミスしてる…なんて思うけど、初日の一問目でこけるわけにはいかないと思ってがちがちに緊張してた割にはまだましなのかな…

 

 

 

 
 

 

 

※本記事(平成30年司法試験再現答案 選択科目(倒産法)第1問)について

…問題文と答案構成用紙のみを参照し、ミス等も含めて本番で書いた答案をできるだけ忠実に再現したものであり、内容の正確性は一切担保できません。