近年、社会問題として深刻化している「偽情報(フェイクニュース)」の拡散。その影響の大きさを示す衝撃的な調査結果が明らかになった。東洋大学が衆院選に関連して行った調査によると、有権者の約8割が偽情報を事実だと誤認識した経験があるという。さらに注目すべきは、情報源として最も多く挙げられたのが「テレビ」だった点だ。


これまでテレビは、新聞と並び信頼性の高いメディアとして認識されてきた。インターネット上の情報と比べ「専門家のチェックを経ている」「公平性が保たれている」といった安心感があったからだ。しかし今回の結果は、その前提が必ずしも揺るぎないものではない可能性を示している。


なぜ多くの人が偽情報を信じてしまうのだろうか。第一に挙げられるのは「情報の受け取り方の変化」だ。現代はSNSや動画配信など、膨大な情報が瞬時に流れ込む時代である。人々は情報の真偽をじっくり検証する余裕がなく、「見慣れたメディア」や「分かりやすい内容」を優先して信じてしまう傾向がある。テレビの映像や専門家風の解説は説得力が強く、誤った情報であっても疑いにくい。


第二に、政治や選挙といったテーマの特性も影響している。選挙期間中はさまざまな意見や主張が飛び交い、情報が意図的に編集・強調されることも少なくない。視聴者が断片的な情報だけを受け取ることで、誤った認識を形成してしまう可能性がある。


第三に、私たち自身の「思い込み」も無視できない要因だ。人は自分の価値観や信念に合致する情報を受け入れやすい「確証バイアス」を持っている。テレビで報じられた内容が自分の考えと一致していれば、真偽を確認せずに受け入れてしまうことも多い。


この問題の背景には、メディア側だけでなく、情報を受け取る側の姿勢も問われている。情報社会において必要なのは「メディア・リテラシー」、つまり情報を批判的に読み解く力だ。複数の情報源を比較する、一次情報を確認する、極端な表現に注意するなど、基本的な姿勢が誤認識を防ぐ鍵となる。


また、テレビをはじめとするメディアにも責任がある。速報性や視聴率を優先するあまり、検証が不十分な情報が広まれば、社会への影響は極めて大きい。より厳格な事実確認と、誤報があった場合の透明性の高い訂正が求められている。


今回の東洋大の調査結果は、単なるメディア批判ではなく、現代社会の情報環境全体への警鐘といえるだろう。誰もが情報の発信者にも受信者にもなり得る時代だからこそ、「テレビだから正しい」「ネットだから怪しい」といった単純な判断は通用しない。


私たちは今、「何を信じるか」ではなく、「どのように確かめるか」が問われている。民主主義の基盤である選挙の公正性を守るためにも、一人ひとりが情報と向き合う姿勢を見直す必要があるだろう。